そのルーツは戦国時代に。味噌玉とは?
実は味噌玉の原型となるものが戦国時代にあったという。戦の途中や移動時に食べられる兵糧食や携帯食として考案されたもので、当時は味噌を干したり焼いたりした後に丸め、米などの他の食料と一緒に竹の皮や手ぬぐいに包み、腰に下げて戦場に持って行ったと言われている。
みそソムリエが考案。安心で美味しい「ドットミソ」の味噌玉
安岡さんが味噌玉作りをするきっかけとなったのが、現役時代に減量やトレーニング後の栄養補給に味噌汁が役立ったという実感。その後、みそソムリエの資格を取得し、全国の味噌蔵と交流を重ね、製造の現場や作り手と出会ったことで、味噌の魅力を発信していきたいと思うように。そこで思いついたのがこだわりの味噌と安心安全な具材を組み合わせた「味噌玉」を造り、味噌汁の楽しみ方を提案することだった。子どもの頃から母親の手作りの味噌汁を毎朝飲んでいたという安岡さんの記憶にある食卓の原風景。母になったからこそ、その大切さを伝えていきたいという思いがその根底にある。
例えば長野県・萬年屋のコク深い米味噌を使った味噌玉には、搾菜や干し芋、きのこのほか、豆板醤やニンニクも加えて。辛みが効いたチゲ風の味噌汁が出来上がる。島根県・やさかみその白味噌を使った味噌玉には、鮭やコーン、わかめ、玉葱などの具を合わせて。北海道の石狩鍋を彷彿とさせ、春雨を加えてラーメン風にして食べてもよさそうだ。
みそソムリエに習う、味噌玉の作り方1 味噌と出汁選び
では自宅で味噌玉作りをしようと思い立ったとき、どんな味噌や出汁を選べばよいのだろうか。基本となる考え方についてうかがってみた。
「まずは商品の食品表示を確認してください。材料名に、米味噌の場合は「大豆、米、食塩」、麦味噌の場合は「大豆、大麦、食塩」、豆みその場合は「大豆、食塩」のみの表記となっているものを選びましょう。特に、材料名に「酒精」の表記があるかは要チェックです。酒精はみその発酵を止めて品質を一定に保つ役割がありますが、酵母がもつ発酵の力を止めてしまったり、みその風味が落ちてしまうことがあります。調味料、アミノ酸などが記載されていないものを選んでみてください」とのこと。
次は出汁について。どんな出汁が味噌玉に合うのだろう。
「ベーシックに鰹節はどの味噌にもあうのでおすすめです。意外なところだと、乾燥の桜海老、さきイカもおすすめ。粉にしてもいいですし、具材としていれてもいい味がでます」。食感も楽しいので食べ応えも出そうだ。昆布や干し椎茸も、もちろんいい出汁となるし、鰹節と組み合わせて、合わせ出汁にするとうまみがさらに膨らむ。
市販の顆粒だしではなく、天然素材を粉にするというひと手間で、素材を感じる、体に優しい味噌汁となる。
みそソムリエに習う、味噌玉の作り方2 季節の味や洋風も。シーン別おすすめレシピ
味噌玉に使う味噌の量の目安は1つにつき20g。2種類の味噌をあわせる場合も、トータル20gに。混ぜる出汁は小さじ1/2~3/4程度。これを混ぜ合わせ最後に具材を合わせるのが基本の作り方だ。おにぎりの具を包むように中にいれて、みその周りに具材をくっつけるイメージで合わせる。気を付けるのは味噌に具材を練り込みすぎないこと。具材に味噌が染み込み過ぎてしまい、味がしょっぱくなり溶けにくくなってしまうからだ。
まずは食欲がないとき、胃腸を元気にしたいというときに、と安岡さんが教えてくれたのは梅を使った味噌玉。梅やとろろ昆布が味覚をじんわりと刺激してくれる一杯だ。
「とろろ梅玉」
味噌...20g
鰹節粉末...約0.4g 小さじ2/3程度
叩いた梅干し...1個分(無添加のもの)
とろろ昆布...適量
小口切りのネギ...適量
作り方は、味噌、鰹節粉末、叩いた梅干しを混ぜ合わせ、ネギをふんわり混ぜ合わせたあとに丸めて形を整える。ネギをみそに練り込みすぎないように。丸めたみそのまわりにとろろ昆布を貼り付ければ出来上がりだ。次は季節感を感じられる、秋におすすめの味噌玉。
「干し芋ときのこの味噌玉」
味噌...20g
鰹節粉末...約0.4g 小さじ2/3程度
きのこ類(えのき、舞茸、しめじ)...適量
細切りにした干し芋...約5g
バター、すり黒ごま...各適量
きのこ類はバターをフライパンで熱し、しんなりするぐらい炒め粗熱をとる。味噌に鰹節粉末を混ぜ合わせ、炒めたきのこと干し芋を味噌で包むようなイメージで合わせて玉にする。上からすり黒ごまをふりかけて仕上げる。
味噌を豆味噌と麹味噌にしてそれぞれ作ってみたが、麹味噌のほうが優しい甘みもありバターや甘い芋との相性がよく感じた。いろいろな味噌を使って作ってみると楽しいだろう。
「洋風クリーム味噌玉」
味噌...20g(白味噌がおすすめ)
顆粒チキンコンソメ(無添加のもの)...小さじ1/4
玉葱...1/8個
ウインナー...1/2本
コーン缶...10粒程度
豆乳...150〜200cc お好みで
玉葱はみじん切りにしてしんなりする程度に油で炒めておく。ウインナーは縦4つに切り5mmほどの輪切りにする。コーン缶はざるにあげて水気をきっておく。味噌とチキンコンソメを混ぜ合わせ、下ごしらえした具材を混ぜ合わせたら丸めて形を整えて。最後に飾り用にわけておいたコーンをのせる。食べるときに湯の代わりに温めた豆乳で割るとクリームスープのよう。米粉パンや全粒粉パンなど、穀物の甘みを感じる素朴なパンがよく合うはずだ。
みそソムリエに習う、味噌玉の作り方3 保存方法について
「なるべく空気に触れないようにラップで包むか、ラップも面倒くさい場合は氷などを作る製氷皿に分量をはかってひとつずついれても保存できます。それも面倒な場合は、小さなタッパーにまとめていれて、スプーンで大さじ一杯を目安にすくって使ってもOK。味噌は常温保存が可能ですが、具材を混ぜたあとは必ず冷蔵保存してください」
そして、みそは冷凍しても固まらないので冷凍保存もOKだという。
「ただし、冷凍したものにお湯をかけるとぬるい味噌汁になってしまうこともあるので、お湯を沸かした鍋に味噌玉を入れる、または味噌玉を使う30分ほど前に常温に戻しておくとよいでしょう。中にいれる具材にもよりますが、冷蔵の場合は1週間程度、冷凍の場合は1ヶ月以内に食べきるのがおすすめです」
自分で味噌玉を作ると、味噌や出汁、具材を自由に、簡単に組み合わせることができるので、好みの味やアレンジの可能性を発見できるだろう。ちなみに「ドットミソ」の味噌玉は2週間ほど日持ちがするように作られていて具材も製法が異なるが、ぜひ出汁や具材の組み合わせ方の参考にしてみて欲しい。
栄養食としてはもちろん、ほっと心が落ち着く味を日々の食事に
忙しい毎日に、とりわけ一人暮らしだと「一汁三菜」はハードルが高い…。しかし、生活に味噌玉を取り入れることで、「一汁一菜」なら実践できるかもしれない。
作り置きする時間もない…というときは安岡さんの味噌玉を使えばいいし、卵や豆腐などタンパク質を加えてアレンジすれば、簡単に栄養価も高まる。なにより忙しい毎日に味噌汁をすする時間は、日本人のDNAをくすぐるひとときになることは誰もが感じているはずだ。