Vol.273

FOOD

28 SEP 2021

健康と時短を叶える。「ドットミソの味噌玉」で美味しい味噌汁を

発酵食品である味噌の栄養を野菜と共に摂取でき、腸内環境を整えてくれることから免疫力アップも期待できるという味噌汁。そんな味噌汁を湯をかけるだけというインスタントな感覚で楽しむことができ近年注目を集めているのが味噌玉だ。そこで今回は味噌玉とは何か、どんな作り方でどんな楽しみ方ができるのかを、ネットで味噌玉を販売する「ドットミソ」の代表であり、みそソムリエの資格も持つ安岡さんにうかがった。「ドットミソ」の味噌玉は、具材から手作りし、組み合わせ方も楽しいものばかり。味噌玉の魅力を知れば、今の自分の暮らしに合った形で、こだわりの味噌汁を気軽に楽しむことができるはずだ。

そのルーツは戦国時代に。味噌玉とは?

味噌玉とは、味噌に出汁と具材を混ぜ合わせて丸めた保存食で、湯をかけるだけで味噌汁を作ることができるというもの。時短料理、作り置き料理などが人気を集める中で、数年前からさまざまなメディアで取り上げられ、見聞きしたことがある人も多いのではないだろうか。

実は味噌玉の原型となるものが戦国時代にあったという。戦の途中や移動時に食べられる兵糧食や携帯食として考案されたもので、当時は味噌を干したり焼いたりした後に丸め、米などの他の食料と一緒に竹の皮や手ぬぐいに包み、腰に下げて戦場に持って行ったと言われている。

湯をそそげば出来上がる、味噌玉。味噌そのものの味を楽しむのにも最適
現代に再現された味噌玉は、時短がかなう便利な作り置きという意味合いの料理となり、生き抜くための兵糧食だった頃とは違ったものとなったが、とにかく味噌玉を作っておけば調理法はお湯を注ぐだけ。包丁など道具が必要ない上、フリーズドライ商品やパウチ商品にはない大豆つぶの食感や味噌の風味など、家庭調理に限りなく近い味噌汁が楽しむことができる。自分で作ることでゴミを減らせて時短も叶うと、いいこと尽くしのなので、現代人にとっても忙しい日々を生き抜くのに役立つはずだ。

みそソムリエが考案。安心で美味しい「ドットミソ」の味噌玉

そんな味噌玉を自ら製造販売し、味噌汁の魅力を発信する活動を行なっているのが、「ドットミソ」代表の安岡さん。プロのキックボクサーとして活躍していたという異色の経歴を持ち、今は一児の母だ。

安岡さんが味噌玉作りをするきっかけとなったのが、現役時代に減量やトレーニング後の栄養補給に味噌汁が役立ったという実感。その後、みそソムリエの資格を取得し、全国の味噌蔵と交流を重ね、製造の現場や作り手と出会ったことで、味噌の魅力を発信していきたいと思うように。そこで思いついたのがこだわりの味噌と安心安全な具材を組み合わせた「味噌玉」を造り、味噌汁の楽しみ方を提案することだった。子どもの頃から母親の手作りの味噌汁を毎朝飲んでいたという安岡さんの記憶にある食卓の原風景。母になったからこそ、その大切さを伝えていきたいという思いがその根底にある。

キックボクサー時代は“テキサスアユミ”というリングネームで活躍していた安岡さん。EC事業のマーケティングなどにも携わった経験も持つ
通常、家で自家製することが多い味噌玉。ECサイトで販売するにあたって安岡さんがこだわったのは、味噌そのものの美味しさ。創業200年近い歴史を持つ蔵や有機農法の米や大豆で仕込む蔵など、歴史や独自の製法を持つ地域に根付いた味噌を選び抜いた。「味噌は味噌蔵の数だけ味があると言われるほど、多種多様な味があります。味噌汁は各家庭で食べてきた味も異なるので、好みが異なる食べ物。どれが一番美味しい!というものを決めるものでは無いのですが、味噌と具材の組み合わせを何度も試作・試食し、6種類の味噌玉を作り上げました」。

「ドットミソの味噌玉」(6個1,500円)。個性豊かな6種類の味噌玉を詰め合わせた
6種類の味噌玉が入った「ドットミソの味噌玉」セットには、味噌汁の新しい魅力を発見してほしいという狙いで、組み合わせとして使わない具材をあえて選んでいる。

例えば長野県・萬年屋のコク深い米味噌を使った味噌玉には、搾菜や干し芋、きのこのほか、豆板醤やニンニクも加えて。辛みが効いたチゲ風の味噌汁が出来上がる。島根県・やさかみその白味噌を使った味噌玉には、鮭やコーン、わかめ、玉葱などの具を合わせて。北海道の石狩鍋を彷彿とさせ、春雨を加えてラーメン風にして食べてもよさそうだ。

サバ身とキノコが入った「sava!の味噌玉」。しっかりした味わいの味噌なので魚が入るとより食べ応えのある一品に。柚子の香りがアクセント
使用する具材は有機農法で作られている野菜を取り寄せ、きのこ類や玉葱などほとんどのものは工房でカットから乾燥まで行っている完全手作り。野菜の状態に合わせて乾燥時間を調整するなど、味噌玉に一番使いやすい状態にしている。さらに安岡さんの味噌玉をよく見るとその形はまん丸ではなく円筒状。これも味噌玉の具材をしっかり混ぜ込んで正円にすると、湯をかけたときに溶けにくかったり、みその味が必要以上に染み付いたりしてしまったりするため、試作を重ねた結果この形に。具材を上に置くことができるので見た目の華やかさも演出できる形となった。

みそソムリエに習う、味噌玉の作り方1 味噌と出汁選び

こだわりぬいた味噌と具材を、アイデア溢れる組み合わせで手作りして販売することで、個性豊かな全国各地の味噌を知るきっかけになればと考える安岡さん。「ドットミソの味噌玉」セット以外にも、具材も出汁もシンプルにし、5つの味噌蔵の味噌を味比べできる「味噌玉道中日本旅セット」を先日リリースしたばかり。さらに味噌玉を販売するだけでなく、自宅でも味噌玉を作って楽しんで欲しいと、SNSで味噌玉におすすめの具材やレシピも発信している。

では自宅で味噌玉作りをしようと思い立ったとき、どんな味噌や出汁を選べばよいのだろうか。基本となる考え方についてうかがってみた。

「まずは商品の食品表示を確認してください。材料名に、米味噌の場合は「大豆、米、食塩」、麦味噌の場合は「大豆、大麦、食塩」、豆みその場合は「大豆、食塩」のみの表記となっているものを選びましょう。特に、材料名に「酒精」の表記があるかは要チェックです。酒精はみその発酵を止めて品質を一定に保つ役割がありますが、酵母がもつ発酵の力を止めてしまったり、みその風味が落ちてしまうことがあります。調味料、アミノ酸などが記載されていないものを選んでみてください」とのこと。

筆者の地元である愛知県ではお馴染み、八丁味噌の原材料表示。スーパーなどで味噌を探すと、大豆、米、食塩だけのものは意外に少ない
どの味噌が美味しいというのは個人の好みもあるので、なるべくシンプルな材料で造られた、発酵の力が生きているものの中から自分が好きな味の味噌を選んでみるといい。美味しい味噌を選べば、出汁をいれなくても飲むことができるほど。美味しい味噌玉を作るためには、まずは美味しい味噌を選ぶことが肝心だ。

次は出汁について。どんな出汁が味噌玉に合うのだろう。

「ベーシックに鰹節はどの味噌にもあうのでおすすめです。意外なところだと、乾燥の桜海老、さきイカもおすすめ。粉にしてもいいですし、具材としていれてもいい味がでます」。食感も楽しいので食べ応えも出そうだ。昆布や干し椎茸も、もちろんいい出汁となるし、鰹節と組み合わせて、合わせ出汁にするとうまみがさらに膨らむ。

味噌玉の出汁におすすめの材料。粉末にして使うので、素材の栄養を丸ごと摂取できる
「ミキサーやミルで粉にして保存しておくと、味噌汁1杯につき小さじ半分くらいいれるだけで簡単に美味しさを感じられます。鰹節はそのまま指で細かくするだけもOK。煮干しを粉にするときは、頭とはらわたをとると苦味がでなくていいです。私は家でつくるときは面倒くさいのと煮干しの味が好きなので頭もはらわたも全部いれますが」

市販の顆粒だしではなく、天然素材を粉にするというひと手間で、素材を感じる、体に優しい味噌汁となる。

みそソムリエに習う、味噌玉の作り方2 季節の味や洋風も。シーン別おすすめレシピ

味噌や出汁について知ったところで、今度は具体的に味噌や出汁、具材の組み合わせについて、シーン別におすすめのレシピを教えてもらった。色々作っておいて、体調や食のスタイルに合わせて選べるようにしておくのもいいだろう。

味噌玉に使う味噌の量の目安は1つにつき20g。2種類の味噌をあわせる場合も、トータル20gに。混ぜる出汁は小さじ1/2~3/4程度。これを混ぜ合わせ最後に具材を合わせるのが基本の作り方だ。おにぎりの具を包むように中にいれて、みその周りに具材をくっつけるイメージで合わせる。気を付けるのは味噌に具材を練り込みすぎないこと。具材に味噌が染み込み過ぎてしまい、味がしょっぱくなり溶けにくくなってしまうからだ。

まずは食欲がないとき、胃腸を元気にしたいというときに、と安岡さんが教えてくれたのは梅を使った味噌玉。梅やとろろ昆布が味覚をじんわりと刺激してくれる一杯だ。

「とろろ梅玉」

材料(1個分)
味噌...20g
鰹節粉末...約0.4g 小さじ2/3程度
叩いた梅干し...1個分(無添加のもの)
とろろ昆布...適量
小口切りのネギ...適量

作り方は、味噌、鰹節粉末、叩いた梅干しを混ぜ合わせ、ネギをふんわり混ぜ合わせたあとに丸めて形を整える。ネギをみそに練り込みすぎないように。丸めたみそのまわりにとろろ昆布を貼り付ければ出来上がりだ。次は季節感を感じられる、秋におすすめの味噌玉。

「干し芋ときのこの味噌玉」

材料(1個分)
味噌...20g
鰹節粉末...約0.4g 小さじ2/3程度
きのこ類(えのき、舞茸、しめじ)...適量
細切りにした干し芋...約5g 
バター、すり黒ごま...各適量

きのこ類はバターをフライパンで熱し、しんなりするぐらい炒め粗熱をとる。味噌に鰹節粉末を混ぜ合わせ、炒めたきのこと干し芋を味噌で包むようなイメージで合わせて玉にする。上からすり黒ごまをふりかけて仕上げる。

味噌を豆味噌と麹味噌にしてそれぞれ作ってみたが、麹味噌のほうが優しい甘みもありバターや甘い芋との相性がよく感じた。いろいろな味噌を使って作ってみると楽しいだろう。

写真左が赤味噌で、右は米麹味噌で作ってみた「干し芋とキノコの味噌玉」
最後に教えてもらったのは、パンと一緒に食べたくなる味噌玉。出汁をコンソメにし、豆乳を湯の変わりに注ぐことで、コク深いスープが簡単にできる。

「洋風クリーム味噌玉」

材料(1個分)
味噌...20g(白味噌がおすすめ)
顆粒チキンコンソメ(無添加のもの)...小さじ1/4
玉葱...1/8個
ウインナー...1/2本
コーン缶...10粒程度
豆乳...150〜200cc お好みで

玉葱はみじん切りにしてしんなりする程度に油で炒めておく。ウインナーは縦4つに切り5mmほどの輪切りにする。コーン缶はざるにあげて水気をきっておく。味噌とチキンコンソメを混ぜ合わせ、下ごしらえした具材を混ぜ合わせたら丸めて形を整えて。最後に飾り用にわけておいたコーンをのせる。食べるときに湯の代わりに温めた豆乳で割るとクリームスープのよう。米粉パンや全粒粉パンなど、穀物の甘みを感じる素朴なパンがよく合うはずだ。

「洋風クリーム味噌玉」で作った味噌汁。仕上げにパセリをちらせば、スープのよう。白味噌の甘みが具材を包み込む、優しい味

みそソムリエに習う、味噌玉の作り方3 保存方法について

味噌玉は保存食なので、自分が使いやすい方法でしっかり保存をして、いつでも使えるようにしておくのが大切だ。

「なるべく空気に触れないようにラップで包むか、ラップも面倒くさい場合は氷などを作る製氷皿に分量をはかってひとつずついれても保存できます。それも面倒な場合は、小さなタッパーにまとめていれて、スプーンで大さじ一杯を目安にすくって使ってもOK。味噌は常温保存が可能ですが、具材を混ぜたあとは必ず冷蔵保存してください」

そして、みそは冷凍しても固まらないので冷凍保存もOKだという。

「ただし、冷凍したものにお湯をかけるとぬるい味噌汁になってしまうこともあるので、お湯を沸かした鍋に味噌玉を入れる、または味噌玉を使う30分ほど前に常温に戻しておくとよいでしょう。中にいれる具材にもよりますが、冷蔵の場合は1週間程度、冷凍の場合は1ヶ月以内に食べきるのがおすすめです」

自分で味噌玉を作ると、味噌や出汁、具材を自由に、簡単に組み合わせることができるので、好みの味やアレンジの可能性を発見できるだろう。ちなみに「ドットミソ」の味噌玉は2週間ほど日持ちがするように作られていて具材も製法が異なるが、ぜひ出汁や具材の組み合わせ方の参考にしてみて欲しい。

栄養食としてはもちろん、ほっと心が落ち着く味を日々の食事に

食生活の多様化により味噌汁を飲む機会は少なくなったが、味噌汁はいつの時代も日本人のソウルフード
よく和食は「一汁三菜」が基本と言われるが、料理研究家・土井善晴氏によると「一汁一菜」、つまり味噌汁と香の物にご飯があれば、十分だという。日本人はずっとそういう食事をしてきたと。
忙しい毎日に、とりわけ一人暮らしだと「一汁三菜」はハードルが高い…。しかし、生活に味噌玉を取り入れることで、「一汁一菜」なら実践できるかもしれない。

作り置きする時間もない…というときは安岡さんの味噌玉を使えばいいし、卵や豆腐などタンパク質を加えてアレンジすれば、簡単に栄養価も高まる。なにより忙しい毎日に味噌汁をすする時間は、日本人のDNAをくすぐるひとときになることは誰もが感じているはずだ。

ドットミソ