ソバーキュリアスという言葉はご存知だろうか?お酒を飲めるけれどあえて飲まないという選択をするライフスタイル。ただし断酒してしまうと社交の場にも行き辛くなるし、ストイックな時間を過ごさざるを得なくなる。断酒をしてもお酒を飲むように楽しめる飲み物や場所があってもいいのではないか。そんな希望を叶えてくれるお店を見つけた。週に一度だけ下北沢にオープンするLow Alchoholic Bistro "MARUKU"。MARUKUで体験できる、ノンアルコールで過ごす心地のよい時間に招待しよう。
ソバーキュリアス、新しいライフスタイルの提案
ソバーキュリアスとは、「Sober(しらふ)」と「Curious(好奇心旺盛)」を組み合わせた造語である。お酒を飲めるのにあえて飲まないという節酒方法の一つだ。最近欧米の若者を中心にブームとなり、日本でもじわじわと浸透し始めている。
ソバーキュリアスは、単純に断酒という忍耐力を必要とする決め事ではなく、お酒を飲まない時間を楽しむという選択である。
お酒を飲む人間にとって仕事終わりや夕食時の一杯は、公私を区切る儀式のようなもの。この大切な儀式を手放してしまうと、どこで自分を解放したらいいのかがわからなくなってしまう不安がある。ただ、夜のプライベートな時間を漠然と酔って過ごすことをもったいなく感じることもある。
夜をしらふで過ごすと明晰な思考で過ごせるので、やりたかったことや先延ばしにしていたことに着手できるようになる。かといって断酒をしてしまうと社交の場から遠のくことになる。バーや居酒屋に足を運ぶ機会は減っていき、それまでの交友関係にも変化が表れてくる。
ソバーキュリアスというスタイルを自分の生活に取り入れてみるのはいかがだろうか。節酒することで、酔っている時間としらふの時間、それぞれの過ごし方や楽しみ方、日々の幸せを自分で選択できるようになる。
MARUKU主宰 桜井鈴茂氏に伺うノンアルコール生活
そんなソバーキュリアスを楽しめる場所がある。水曜日だけ下北沢にオープンするLow Alchoholic Bistro "MARUKU"だ。ここは、日本初ノンアルコール飲料専門ECサイトMARUKUが運営するお店で、ノンアルコールの魅力を伝えるためのフラッグシップストアのような場所だ。お酒のように楽しめるノンアルコール飲料がずらりと揃っている。
MARUKUの主宰者であり小説家で、自らお酒を飲まない生活をする桜井鈴茂氏に、MARUKUについて話を伺った。
桜井氏にノンアルコール生活を始めたきっかけについて尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。
「かつては飲酒が楽しさや喜びをもたらしてくれましたが、今年の1月末に、ここ数年の飲酒が楽しさや喜びではなく、後悔や苦々しさや不愉快をもたらしていることに気づいたからです」
桜井氏の言葉で身につまされる思いがした。お酒は嗜好品であり、飲酒は娯楽である。お酒によって、自分を解放することもできる。その解放感は私たちを愉快な気持ちにし、時には恍惚感も得られる。反対に、解放感からつい気が大きくなって、余計なことまで言ってしまう、誰かを傷つけてしまうことだってある。翌朝は最悪だ。目覚めから後悔というやっかいな感情に支配され、失態を晒した情景が目の前に何度も浮かんでくる。
飲酒によって喜びではなく後悔や苦々しさがもたらされるというのは、私自身も何度も経験していることだ。お酒を飲まなくなってからの生活に変化はあったのか、さらに質問を重ねてみた。
「飲みに行っても、ノンアルビールを飲むから酩酊することはなく、朝まで深酒コース、ということはなくなりました。二日酔いの憂鬱で一日を潰す、ということもなくなりました。簡単にいうと、自分の意思で有意義に使える時間が増えたということです」酩酊による後悔と引き換えに有意義な時間が手に入るというのは魅力的である。
最後に桜井氏に、MARUKUを始めたきっかけを話していただいた。
「いろんな種類の、特に輸入もののノンアルコールビールやノンアルコールワインを飲める店が、自分の行動圏内にはただの一軒もなかったからです。あとは『ノンアルでもけっこう楽しめるよ』ということは伝えたいという思いがありました。『ノンアルでも楽しめる場』を作りたかった、ということでしょうか」
お酒で失敗や後悔をし、断酒を試みるも、それまでの飲酒によって得てきた解放感や楽しさ、交友関係まで手放すのには抵抗がある。お酒を我慢しソフトドリンクを飲みながら、酔った人たちに混じって楽しむというのもどこか興醒めしてしまう。
"アルコールの入っていないお酒"を飲みながら解放感を楽しみ、友人たちと笑いながら会話をする。節酒によるストイックさは欠片も感じない、それがMARUKUの提案する新しいノンアルコールの楽しみかただ。
ノンアルコールの魅力を伝えるお店"MARUKU"
MARUKUは、ノンアルコール飲料をずらりと揃えたお店だ。ノンアルコール飲料だけではなく、ビールやワインといったお酒類も取り扱っている。完全なノンアルコールバーではなく、「お酒を飲みたい方はどうぞ、遠慮なく」というスタイル。お酒を飲むか飲まないかは自分で選択できる、まさしくソバーキュリアスな場所である。
MARUKUで取り扱っているノンアルコール飲料は、見た目はもちろん、味、香りともにクオリティが高く、ノンアルコールなのにお酒を飲んだかのような満足感を得られる。お酒を愛し、楽しむ人間だからこそわかる魅力を備えた、アルコールと比べても遜色のない代物である。
MARUKU店内は、テーブルとカウンターがあり、数名のグループで訪れても、一人でも、寛げる空間になっている。ターンテーブルもあり、営業日ごとに替わるDJによってかけられるアナログの音に耳を傾けながらゆったりとした時間を過ごせる。
カウンターに座り、心地よい音楽を聴きながら、ノンアルコール飲料のグラスを傾ける時間。となりに座った初めて会う人と他愛のない会話を楽しむ。それはバーで過ごす時間と何も変わらない心地よさだ。MARUKUは、「バーはお酒を飲むところ」という既成概念を覆してくれた。
Low Alchoholic Bistro "MARUKU"のメニューを紹介
ノンアルコールビールだけでもずらりと15種類という豊富な品揃え。さらに、ノンアルコールワインやノンアルコールスパークリングワイン、ノンアルコールカクテルまで、22種類もあるのだから迷うことはあっても飲みたいものに出会えないことはない。
MARUKUが一番にすすめるドイツ産のエルディンガーというノンアルコールビールは、通常のビールテイストに加え、レモンフレーバーとグレープフルーツフレーバーがある。
毎晩お酒を飲むことを楽しみとしている私が、エルディンガー・グレープフルーツを一口飲んだ瞬間に、ほ―っとため息をついてしまった。最初の一口が全身の緊張を溶かしてくれる感覚、これはアルコールからしか得られない恍惚感だという思い込みを見事に覆してくれたのである。
色も香りも美しくおいしいスパークリングなのに、いくら飲んでも酔わないのは、アルコールが入っていないからだという当然のことにはたと気がついた。アルコールが入っていないということは、頭と体は酔わずに気持ちだけが酔うということなのだと知った。
しらふで酔ったように過ごす心地よさを味わえる場所
Low Alchoholic Bistro "MARUKU"は、まるでお酒のようなノンアルコール飲料とアナログの音の中で、しらふで酔ったような心地よさを楽しめる。お酒を飲みたくなったら飲めば良し、ソバーキュリアスにぴったりの場所だ。私自身、ここでノンアルコール飲料のおいしさに目覚めた。ノンアルコールの楽しみかたを体感したいと考えているなら、訪れてみる価値はある。
足を運ぶには遠いという方は、MARUKUで取り扱っているノンアルコール飲料はすべて、公式サイトからも購入可能である。ソバーキュリアスという新しいライフスタイルの扉を開けてみるのはいかがだろうか。
※輸入ノンアルコール飲料は、1%未満のアルコールが入っているものもあります
Low Alcoholic Bistro "MARUKU"
住所:東京都世田谷区北沢2-12-13 細沢ビル 4F
営業日時:水曜日 18:00~23:00 のみ営業
電話:03-3410-6080(水曜のみ)
https://maruku09.com/
CURATION BY
フローリスト/ボタニカルライター
寝ても覚めても植物が好き。花や蜜という屋号でフローリストをしながら、ボタニカルライターとしても活動中。
街中で突然花を配るユニット、花ゲリラ棘も行っています。