Vol.721

13 JAN 2026

〔ZOOM in 神宮前〕感性を研ぎ澄ます「サウナ」がある日常。 明治公園内「TOTOPA」起点の“ととのう”暮らし

サウナは今やブームを超え、暮らしのインフラになりつつある。心身をリセットする“ととのう”感覚は、日常に取り入れてこそ真価を発揮する。今回は『サウナシュラン』に2年連続選出された「TOTOPA 都立明治公園店」と、キーマカレーの名店「MOKUBAZA」へ。名サウナと絶品“サ飯(サウナ後のごはん)”が近所にある、最高の日常を追体験してほしい。

ここ2年で様変わり。QOLがアップした神宮前エリア

サウナの紹介をする前に、神宮前のここ2年の進化を知っていただきたい。「TOTOPA 都立明治公園店」は、この進化と密接な関係がある。

原宿・表参道の華やかさと、奥に入れば広がる閑静な住宅街が広がる神宮前エリア。そんな二つの顔を満喫できる街に2024年1月、都立明治公園が全面開園し、エリアの熱気が加速している。

商店街には、飲食店の行列店や古着屋など、さまざまなお店でにぎわっている

神宮前の商店街には、路上アートスペース「Jinny Street Gallery」がある。街灯の展示ケースをアートインスタレーションとして活用しているストリートギャラリーだ

ほかにも、ふと路地裏を見るとストリートアートが

明治公園の目の前には国立競技場がある
「都市の文化拠点」を掲げる公園内には、人気ベーカリー「Parklet Bakery」やサステナブルな食材を使うレストラン「natuRe tokyo」、キャンプ用品レンタルやキッズ向けワークショップを行う「PLAY EARTH PARK WONDER STORE」、スターバックスといった施設が充実。芝生スペースなどでは、毎日のようにイベントが行われている。

ランニングをしている人、コーヒーを飲みながら会話を楽しむ人、犬の散歩をしている人、遊具で遊んでいる子どもたちなど、平日でもにぎやかで平和な光景が広がる、心地いい空間だ。

五感をリセットする、今注目のサウナの一つ「TOTOPA」

今回紹介する「TOTOPA 都立明治公園店(以下、TOTOPA)」は、明治公園の目玉とも言えるスポット。「おふろの王様」を手掛ける東京建物グループが、培ってきたノウハウを活かしながら新しいコンセプトで2024年3月にオープンした都市型ウェルネススパだ。 サウナ界の権威あるアワード「サウナシュラン」で2年連続受賞を果たした、今最も注目されるサウナ施設の一つでもある。


開発担当の黒田敏さんは「公園で一日滞在する新しいライフスタイルが生まれています。朝カフェで仕事をし、夕方にランニングとサウナ、最後に食事をする。そんなルーティンを楽しむ方が増えています」と語る。 周辺には飲食店も多く、「飲み会前の0次会」として複数人でサウナを利用する人も多いようだ。

「サウナは”裸の付き合い”ですから、単に食事よりもコミュニケーションがとりやすいんですよね」という言葉には納得だ。

平日、しかも寒い日でも多くの人が訪れていた

ルーティンの追及で、シンプルにして究極の”ととのい”を目指す

TOTOPAは、クリエイティブサウナ集団TTNEとの共同開発という点も話題を呼んだ。

何よりもこだわっているのが、「奇をてらわず、サウナ本来のルーティン(サウナ→水風呂→休憩)をいかに美しく回せるか」ということ。

写真中央の建物が「TOTOPA」
「長く愛される施設は、奇をてらった企画よりも、サウナ→水風呂→休憩のフローをいかにスムーズに回すか、を徹底している。また、サウナの好みは食事と同じで、人それぞれ。だからこそターゲットを絞りすぎず、バリエーションを重視しました。一部の人に向けた120点ではなく、どんな人が来ても80点を取れる施設。特殊な立地だからこそ、多くの人に受け入れられることを大切にしています」

黒田さんの言う通り、サウナーにとって大事な要素が”ルーティン”だ。

”ととのい”とは、サウナ→水風呂→外気浴の温冷交代浴を繰り返す行為で生まれるリフレッシュ状態のこと。このルーティンを2~3セット繰り返すことで、より深い”ととのい”を得ることができる。

広々とした会話OKの休憩スペースも(写真は2F女性フロア)

ハーブティーやノンアルコールビールなどが飲み放題で、水分補給や団らんを楽しめる(写真は2F女性エリア)
サウナ室(サウナの浴室)だけがよければいいというわけではなく、サウナ室での体験(温度・湿度・演出など)、水風呂の温度や水質、外気浴の環境など、ひとつひとつのクオリティ、そしてそれらを回す動線が非常に大事であり、どれか一つ欠ければ台無しになってしまう。

いま、多種多様なサウナが増えているが、結局はこのルーティンを突き詰めることこそが、シンプルでありながら究極の名サウナの条件なのだ。

人によって、心地よいと感じる時間やタイミング、温度、湿度は違う。だからこそ、”万人にとっての80点”に挑むことが、いかに難しいことかお分かりいただけると思う。TOTOPAでは、例えば、男性フロアにサウナ3種と水風呂2種、3つの休憩エリアとそれぞれに複数の空間を用意し、”18通りのととのい”(3(サウナ)× 2(水風呂)× 3(休憩場所))を体験できるようにしているなど、人それぞれの趣向にあわせた心配りが感じられる。

ストーブで熱したサウナストーンにアロマ水をかけて蒸気を浴びる「ロウリュ」もサウナの醍醐味の一つ

男性浴室には、会話OKのサ室&没入の「黙浴」サ室が共存

男性、女性がそれぞれサウナに求める心地よさも考慮し、前述のとおり、男女でまったく異なるアプローチをしているのも面白い。男性フロアにはサウナ3種と水風呂2種、3つの休憩エリアがあり、女性フロアにはサウナ1種、水風呂1種、薬草スチームの蒸し湯、充実の休憩ラウンジなどがそろう。

まず、男性浴室から見て行こう。

3つのサウナ室「左室」「右室」「ナ室」(「左右ナ(サウナ)」)は、それぞれ異なる趣向が凝らされている。

男性浴室。音楽の演出はTTNEのDJ伍堂英太氏が監修。空間や四季に合わせて選曲を変えることで、聴覚からもリラックスできる「飽きさせない工夫」を凝らした

それぞれのサウナ室の入口には、「左室」「右室」「ナ室」がわかりやすいようにライトが点灯している
その中でも特にユニークなのが、会話が許可されている「ナ室」だ。

「1人でも複数人でも楽しめるのがTOTOPAの強みですが、グループの方にはぜひ、真ん中のサウナ室『ナ室』を使っていただきたいですね。黙浴が推奨される都心において、ここはあえて会話を楽しむコンセプトで作った場所。遠慮せず、どんどん話して盛り上がってほしいと思っています」

”なごみ”をテーマにした会話が楽しめる「ナ室」。室温は80℃~90℃ほど、自分でロウリュ(熱したアロマストーンに自分でアロマ水をかけ、蒸気を発生させる)できるので好みで調整可。ドリンクも持ち込みOK
もちろん、会話を楽しみたいグループと、静かに集中したいソロサウナー。その両方が共存できるよう、試行錯誤も続けられている。

「一人で集中してサウナを楽しみたい時は『左室』と『右室』があります。こちらは黙浴とし、照明も暗くして没入感を高めました」

「左室」は98度前後と温度高め&湿度高め。ガッツリ汗をかきたい人におすすめ。直線的なデザインと寒色照明で、左脳を刺激するサウナを目指した

「右室」は85℃と、比較的じっくりと楽しめる温度設定。あぐらをかき、座禅を組むようなスタイルで楽しむ右脳を刺激するサウナ
「ただ、『会話OK』と『黙浴』を同じ空間で共存させるのは、実は非常に難しいんです。そこで現在、実験的に遮音用のヘッドホンを導入しています。周囲の音が聞こえにくくなるもので、会話を楽しみたい人も、静寂を求める人も、双方が心地よく共存できる空間をどう作るか。そのためのトライアルですね」

外気ラウンジでは寝転がってととのうことができる

ほかの人の話し声や音が気になる場合はヘッドフォンを。かなり音をシャットアウトでき、ととのいに集中することができる

深水風呂は160cmあるので、ドボンともぐってつま先から頭のてっぺんまで、ほてった身体を冷やすことができる

女性のための新しい温浴体験「すちこ」

一方、女性浴室の目玉は「すちこ」という独自の蒸し湯だ。こちらは、サウナに慣れていない女性でも無理なく楽しめるよう開発されたもの。

薬草スチームに包まれ、乾燥による肌や髪を抑えながらデトックスできる「すちこ」
「男性にとってサウナ体験はすでに確立され、文化から『習慣』へと定着しつつあるフェーズです。一方で、女性のサウナ文化はまだ発展途上の段階だと感じています。『おふろの王様』でもサウナ目当ての女性客は男性客よりも多くはありませんでした。

個人的にも、女性にもっとサウナの良さを知ってほしいという強い想いがあります。そこで導入したのが、寝ながら入れる蒸し湯『すちこ』です。これは言わば、サウナと岩盤浴の『合いの子』。いきなり高温のサウナはハードルが高いという女性でも無理なく親しめる、本格的なサウナへの『導入装置』としての役割を意識しました」

ロッカールームにはアメニティが充実。メイク落とし、化粧水、美容液、乳液、ヘアミストなどを完備

アメニティは女優のMEGUMIが監修。あえてブランドを統一せず、サウナ後の肌に最適なものを厳選した。美容液も複数用意し、好みに合わせて選べる

シャンプーやサウナハットもオリジナルで開発。サウナハットはかなりスタイリッシュなデザインで、タウンユースもできそうなデザインも。店頭で購入できる
それだけに、「すちこ」の開発には、並々ならぬこだわりが詰まっている。

「香りにもこだわりがあります。マットレスの下には、実際に採取した『石菖(せきしょう)』という菖蒲(しょうぶ)の一種を敷き詰めました。釜からの蒸気が薬草を通ることで、空間全体が心地よい香りに包まれる。そんな雰囲気づくりを大切にしています」

「すちこ」で採用されているマットレスや枕は、NASAが提唱する中立姿勢を再現するフロートテクノロジーを導入した「ブレインスリープ」のもの。フィット感が気持ち良すぎてヤミツキになるのだ(ずっと寝ていたくなるほど)! マットレスは網目状になっているので、部屋中に充満している薬草の蒸気だけでなく、下からもじっくり蒸されている感覚を楽しめる。

身体へのフィット感に感動すること間違いなしの「ブレインスリープ」のマットレスと枕
また、「すちこ」に入る前には、ぜひ「呼吸ルーム」を体験してほしい。照明を落としたドーム状の空間でストレッチプログラムを行い、身体をほぐすことで、「すちこ」でのリラックス度が格段にアップする。

「呼吸ルーム」。ヨガマットが敷いてあり、「すちこ」に入る前にヨガで身体をほぐして

香木の香り豊かなサウナ「かおるこ」。約83℃で、セルフロウリュができる

温かいお風呂もあるので、じっくり身体を温めて発汗しやすい状態にしてからサウナを楽しめる

公園という立地を活かした「ランニング×サウナ」

TOTOPAのもう一つの大きな魅力は、明治公園というロケーションを活かしたランニングとの組み合わせだ。

「走った後の方がサウナは圧倒的に気持ちいい。運動することで、サウナの体感値も格段に上がる。また、運動・サウナ・食事を誰かと共にすることで、仲も深まります」

ランナー向けの設備やサービスも充実させており、手ぶらで訪れても楽しめる環境が整っている。今後は多店舗展開も予定しており、目指すはサウナの利用前後を含めた「ウェルネスライフ」を提案するブランドの醸成だ。

ランニングロッカー1回1100円(税込)、シューズ・ウェアレンタル500円(税込)。「RUNNERS PARK TOKYO」会員になればオトクに利用できる

「TOTOPA」入口。入口左にレンタルシューズスペースがある
「基本的には『手ぶら』で来て、すぐに走れる環境ですね。将来的には、オリジナルのウェア制作にも挑戦したいと考えています。

私たちが目指しているのは、単なるスパ施設ではなく、運動の『前後体験』も含めた世界観の提供です。走って、サウナに入り、体のケアをして一日を終える。充実したウェルネスライフを応援するブランドとして、TOTOPAを育てていきたいですね」

「サ飯」は老舗キーマカレー店「MOKUBAZA」へ

次に紹介するのは、サウナ後に欠かせない”サウナ飯(サ飯)”。サウナ後に食べるごはんのことで、リラックス状態&汗で失われた水分やミネラルを身体が欲している状態で食べるため、格別においしく感じられるのだ。

そんな時に無性に食べたくなるのが、この街を代表する「サ飯」、老舗キーマカレー店MOKUBAZAの「チーズキーマ」。TOTOPAから徒歩6分ほどのところにある。

複数のスパイスによる奥深いスパイシーな味わいをモッツァレラチーズと濃厚卵がまろやかに包み込む、身体にしみわたるおいしさだ。

看板メニューの「チーズキーマカレー(卵付き)」1400円(税込)。コクのあるモッツァレラチーズでトローリ、モッチリと表面をコーティング

プロスノーボーダーを目指していた宮本さんは、かつて山小屋の経営に憧れていたことから、ロッジ風の温かみのある店舗に。設計も宮本さんが行ったとか

音楽や読書を楽しみ、人々が語らう。理想とした山小屋の空気感を、バーという形で再現した
特徴的なフォルムは、元グラフィックデザイナーの店主・宮本英哲さんが、「カレーソースとご飯をバランスよく食べられる機能美」を追求して生まれたもの。

美しいドーム状のフォルムは、SNSでも話題に
オープンから20年間、キーマカレー1本で徹底的に研究を重ねてきた。現在も、その探求は続いている。

「スパイスの配合にゴールはありません。ホール(原形)から空煎りしてパウダーにする際の火加減や、油で炒めて香りを引き出す『テンパリング』など、常に試行錯誤の連続です。スパイスの本場・インドのスパイス使いも参考にしながら研究を続け、昨日より今日と、味は少しずつ進化しているはずです。

ほかにも、お米の炊き方、玉ねぎの品質、トッピングする卵の濃さなど、細部に至るまで計算してこだわっています」

キーマカレー1皿に込められたストーリーも、ぜひ一緒においしくいただきたい。

良いサウナがある街は、良いクリエイティビティが生まれる

サウナ施設は温かいお風呂がないところもあるが
、「TOTOPA」ではお風呂も楽しめるのがうれしい
サウナは、今ある状態をありのまま受け入れて感じる「マインドフルネス」にも通じると言われている「マインドフルネス」を日常に取り入れることの大切さはZOOM LIFE読者なら周知の通りだが、であれば、サウナを日常とすることも、また良いクリエイティビティを生み出してくれるはずだ。

趣向のこらされた最先端のサウナと、進化し続ける”サ飯”は、自分らしく、クリエイティブに暮らしたい人々にとって、最高のパートナーになる。

サウナとサ飯、この2つがあれば、最高の日常を約束されたといっても過言ではない!
撮影/相馬ミナ

TOTOPA|都立明治公園店

東京都新宿区霞ヶ丘町5-7
11:00~23:00(最終受付 22:00)
年中無休(メンテナンス休館など不定休あり)
https://totopa.jp/

MOKUBAZA

東京都渋谷区神宮前2-28-12
03-3404-2606
ランチ 11:30~15:00(L.O. 14:30)
ディナー 18:00~22:00(L.O. 21:30) 
定休日:日曜日・月曜日・火曜日
http://www.mokubaza.com/

CATEGORY