Vol.453

KOTO

20 JUN 2023

ライフスタイルホテル「OF HOTEL(オブホテル )」で忙しい毎日にひといきを

「ライフスタイルホテル」はデザイン性の高い空間と、宿泊以外の付加価値を持ったホテルのこと。 旅としての利用はもちろんのこと、いつもと違う空間で夜を過ごしたい方にも、私はこのOF HOTELをおすすめしたい。宮城県仙台市にある「OF HOTEL(オブホテル )」は、築47年のホテルをリノベーション。古いものをそのまま残したデザインや小上がりの床は従来のビジネスホテルでは見られない光景だ。普段の生活では味わえない体験を通じて、心身ともにリフレッシュしてみてはいかがだろうか。

いつもと違う空間で思考を巡らせる ホテルという場所

無骨な雰囲気のレセプションには、秋田杉の一枚板のカウンターが贅沢にあつらえられている
かつて三島由紀夫氏や池波正太郎氏などの文筆家は東京にある山の上ホテルにこもり、思索にふけっていたという。日々の暮らしを少し非日常に変えることは癒し、刺激、学び、発想につながり、自分の価値観を見つめる時間が生まれるのかもしれない。

OF HOTELは一般的なビジネスホテルとは異なる雰囲気のホテルステイを楽しめる。特に、東北の素材や伝統技術を至るところで感じることができる。アートギャラリーやカフェ、バー、バーなどが併設されているので、ホテルの中でちょっとした旅体験ができてしまう。観光の時間までは取れない出張者にもおすすめしたい。

アートに囲まれ、日常から解放されて非日常へ

WOWによるインスタレーション作品「TEIEN」
玄関の階段を登った先にあるエントランスホールには、床の丸石に新緑や桜、雪をイメージした映像が映し出され、色鮮やかなデジタルアートの庭園が広がっている。

東京、仙台、ロンドン、サンフランシスコに拠点を構えるビジュアルデザインスタジオ・WOW(ワウ)がOF HOTELのために制作したオリジナルの演出だ。

全身でアートを感じることができる
そっと手を伸ばして映像を体感してみる。日常とは異なる空間に身を置き、作品に込められたメッセージに思いを巡らせるだけで異世界を旅する気分が味わえる。

2階 カフェ /ラウンジ
昼間はカフェ、夜間はラウンジとして利用できる2階のスペースでは、東北に縁のある作家のアート作品を鑑賞できる。宿泊者だけでなく、アートとコーヒーが好きな地域住民にも愛用されているコミュニティスペースだ。展示は1〜2ヶ月で入れ替わるため、何度も足を運びたくなる。

家具も東北にゆかりのあるものが多く、特に目を引くのは「青森ねぶた祭」のねぶたに使われる技法を取り入れた迫力のある天井照明だ。

実際の祭りで使われるねぶたは歴史上の人物をモチーフにしたデザインで彩られるが、OF HOTELの照明は白を基調としたシンプルなもの。一見、ねぶただとは気づかない。灯籠のように辺りを照らしてくれる。

骨組みに奉書紙(和紙)を貼る伝統的な、ねぶたの技法を見ることができる
木の温もりが感じられるヴィンテージ家具は山形の天童木工が制作。同社は日本を代表する工業デザイナー柳 宗理氏がデザインしたバタフライスツールを製造していることでも知られる。東北各地の伝統技術に囲まれながら、ゆったりとした贅沢な時間を過ごすことができる。

天童木工のヴィンテージ家具

宮城を拠点に活躍する村上裕之氏の展示会が開催されていた

創作意欲をかき立てるリラックス空間

客室/Workers Double(ワーカーズダブル)
私のお気に入りの部屋は「ワーカーズダブル」。住宅のように靴を脱いで寛ぐことができる小上がり式の床は、ホテルでは珍しい。床は岩手産栗材の無垢材を使用したフローリングになっており、美しい木目から温もりが伝わる。掘りごたつのようなデスクに向かいながら作業をすると、あっという間に時間が過ぎる。

パソコンとタブレットを広げても狭さを感じない
デスクでの作業に疲れたら、そのまま床に寝転がり、天井を見上げる。温かみのある床とは対照的に、頭上に広がる打ち放しのコンクリートは心をクールダウンさせてくれる。この気分転換の最中に、新しいアイデアがふと浮かんでくることもしばしば。その度にリラックスできる環境の必要性を再認識する。

インテリアへのこだわりは、岩手の伝統的なテキスタイル「裂き織り」でつくられたクッションや宮城の白石和紙が使われたデスク照明にも表れている。

天井はひんやりとした雰囲気、温かみのある床とのコントラストがおもしろい

岩手県の「裂き織り」によるクッションカバー

宮城県産の白石和紙を使ったデスク照明

1日の終わりに、東北の酒と食を存分に楽しむ 

地下1階 SAKE/BAR:水と酒 三花(ミケ)
仕事を終えたら、そのまま地下1階の「水と酒 三花」で東北の食を楽しむ。カウンター席もあるので、女性一人でも入りやすい雰囲気が嬉しい。

節句の盛り合わせ八寸(12品の盛り合わせ)
用意されているアルコールは季節の食材に合わせてセレクトされた、東北各地の日本酒やナチュールワインだ。この日、セレクトしてもらったお酒は福島県「haccoba -Craft Sake Brewery-」の「サニーデイ・レモネード」と、宮城県「Fattoria AL FIORE」のスパークリングワイン「sola」。どちらも爽やかな口当たりで、夏の食材と相性が抜群。

三花は野菜にもこだわり、全て自然農園のものを使用している。シャキシャキとした食感や野菜本来の甘さが感じられて、とても美味しい。和風料理に見えるが、干しにらとチーズのチヂミ風ケークサレや、オレンジとクリームチーズの肉パテなど、工夫を凝らした創作料理も数多く、日本酒だけでなくワインにも合う。

新鮮な東北の刺身や創作料理が丁寧に盛り付けられる

東北の素材を生かした料理は、少しずついろんな種類を味わうことができる

1日の始まりはカフェから、贅沢な朝食時間

2階 CAFE:DARESTORE COFFEE ROASTERY(デアストア コーヒーロースタリー )
朝食は2階のカフェDARESTORE COFFEE ROASTERYでいただく。メインディッシュはバナナブレッド、クロワッサン、グラノーラから選べるようになっている。自家製のバナナブレッドはDARESTOREの人気スイーツ。ほんのり甘いバナナブレッドと酸味のあるバルサミコ酢のサラダの組み合わせが、朝の気分を盛り上げてくれる。

吹き抜けの窓を眺めながら朝食をとるのは、特別な時間

サラダ・バナナブレッド・スープのセット
ホテル内にコーヒーの焙煎機があり、定期的に焙煎を行っているので、カフェはコーヒーの香りに満ちている。混雑時で無ければ、バリスタが客や料理に合わせたコーヒーを提案してくれるとのこと。コーヒー好きにとっては至福の朝食時間になりそうだ。私は大好きなアイスカフェラテを注文。これで今日も一日がんばれる。

アイスカフェラテ

ホテルの中に焙煎機があるのは珍しい

旅は自分を見つめ直す時間なのかもしれない

この数年で普及したリモートワーク。オフィスで勤務する以外にも働く選択肢が増えたことで、仕事とプライベートの境目がなくなっているように感じる。だからこそ、単に寝泊りするだけでは得られない体験ができる「ライフスタイルホテル」の利用をおすすめしたい。

アートに囲まれながら、ほんの少しの間でも自分を見つめ直す時間を取れたならば、明日からまた晴れやかな気持ちで生活をリスタートできるだろう。

OF HOTEL|オブホテル

宮城県仙台市青葉区花京院1丁目4-14
JR仙台駅より徒歩6分
TEL:022-748-5772

https://of-hotel.com/