人気エリアに囲まれながら個性あるインディペンデントな街、池尻大橋
“エリアの潜在的な魅力を可視化する”ことを目指した複合施設
「以前の池尻大橋は、どちらかというとクローズドな印象があったのですが、4、5年ほど前から周辺エリアからお店を移転する人たちが増えてきたのをターニングポイントに、外エリアからの注目度も高まっていると感じています。今、思う“池尻大橋らしさ”は、トレンドに流されず、あくまで自分たちの理想の生き方や価値観、スタイルを追求しているカッコいい人が多いということです」(大谷さん)
一方で、小池さんは、「それぞれの個人店は魅力があるけれど、街としてはまだまだ盛り上がる余地がある」と感じている。「ランドマークとなる場所があれば、もっと多くの人に池尻大橋に足を運んでもらうきっかけになると思いました。『大橋会館』をコミュニティのハブとして、街としての魅力をもっと発信して、池尻大橋の中と外をつなぐ役割を担えれば」(小池さん)
池尻大橋は、まさに“カルチャーフロンティア”と言えるエリアかもしれない。
「大橋会館」は、地元の池尻大橋で活躍するクリエイターをはじめ、商店街などの地元で暮らす人々、ワーカー、来館者などあらゆる“池尻大橋”をとりまく人々の交流を促すコミュニティハブかつ、新しい街の形を発信していく拠点として誕生した。言い換えれば、池尻大橋のカルチャーが成長し、醸成されている過程を、みんなで楽しみながらつくっていける場なのだ。
1階にはカフェ・ワインバー・レストランとストア&スペース、2〜3階にシェアオフィス、4〜5階にホテルレジデンスとプライベートサウナがあり、それぞれの空間やプロダクトそのものが、クリエイターたちの作品でもある。詳しく見ていこう。
朝から夜まで、世界的チームが提供する食カルチャーを楽しめる
店内は、むき出しの壁や石のテーブル、木の床など、さまざまな素材が使われているのがおもしろい。かつて大橋会館が営業していた当時のものを残しつつ、鉄や石、木などの素材を混ぜて使ってインダストリアル感を取り入れた新旧が溶け合わせた空間になっている。
手前のスペースでは、朝は「Overview Coffee(オーバービューコーヒー)」のコーヒーとペイストリーを提供。昼から夜はワインバーとして営業し、ロンドンのワインバー「Noble Rot(ノーブルロット)」出身のソムリエCailean McGregor(ケイリン・マグレガー)と、星付きレストランでの豊富な経験を持つカリフォルニア出身のシェフColeman Griffin(コールマン・グリフィン)がタッグを組み、ヨーロッパやアメリカの料理を日本の食材とテイストで表現したメニューを提供する。ワインセラーにはクラシックなものからナチュラルまで常時2,000本以上をそろえている。
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クリエイター達の遊び心あるイベントも
オープニングイベントでは、総勢10名のデザイナーによる「大橋会館」や「池尻大橋」をテーマにしたオリジナルTシャツの展示販売会「CEKAI DESIGN FIGHTERS」が行われた。10名のデザイナーは、NIKEなどの誰もが知るブランドを手掛けていたりする錚々たるメンバーなのだが、ユニークなのが会期中の展示はなんと“無記名”で行われたということ。会期中の売上で勝敗が決まり、会期の最終日にどのTシャツが誰の作品だったかが発表されるという仕組みだ(現在イベントは終了している)。
クリエイター達が手掛けた“作品”に泊まれる
4・5階は、1泊からの宿泊も長期滞在もできる「ホテルレジンデンス」があるのだが、計61室のうち4室には、さまざまなジャンルで活躍する4名のクリエイターが滞在し、自らの部屋をデザイン。Airbnbで宿泊もできるそうだ。
ローカルクリエイターがコラボしたサウナ
そんな中にありながら、それらとはまた違ったカラーを放つのが、5階にあるプライベートサウナ。サウナーの私としても、見過ごせないスポットだ。
「日本で流行しているサウナは“ととのう”特化型ですが、ここで目指したかったのは本場・北欧のようなコミュニケーションのきっかけになるサウナ。池尻大橋の関係人口が増える場になれば」とサウナーでもある小池さんは楽しげ。その言葉どおり、ここは入居者や宿泊者だけでなく、一般利用も可能。4名まで同時に利用が可能で、利用者同士での交流も深まりそうな、サロン的スペースになりそう。
サウナ室内に流れる音楽は三軒茶屋のCDレコードショップを手がける「Kankyo Records」が担当。得意とするアンビエントミュージックで、“ととのい”の時間を演出する。
サウナで実際に使われている香り(インセンスオイル)と音響(カセットテープ、DLコード)のセットは1階のストアで購入することもでき、ととのいの余韻をお土産で持って帰れるのも見逃せない。
施設利用者発のイベントや、独自メディアの発信も
「利用者発信のイベントが増えて、池尻大橋外からも来る人が増え、池尻大橋と外エリアをつなぐきっかけになるのが理想」と大谷さん。「あらゆることがオンライン化しているからこそ、フェイス・トゥ・フェイスの場で偶発的な出合いやアイデアが生まれる場は大切。コミュニティや関係人口を育てていきたい」と小池さんも続ける。
10年後の池尻大橋へのバトンをつなぐ、今だけの実験の場
「今も目黒川といった自然や、銭湯の文化浴泉、ユニークな個人店・ギャラリーなどの魅力的なスポットが点在していますが、大橋会館が役目を終える5~10年後には、もっとお店の数が増えて、街歩きをしたくなるエリアに育っていたらいいですね」(小池さん)
“注目の街”“住みたい街”は時代によって変わる。数年前には話題にものぼらなかった街が、急に脚光を浴びることもある。今も人気の池尻大橋だが、5~10年後には、一体どんな街になっているだろうか。「大橋会館」は、自分たちの手で街を育て、つくっていける楽しみを教えてくれそうだ。
大橋会館
https://ohkk.jp/
1階 Massif(マッシーフ)
営業時間
カフェ8時-16時、バー12時-23時
レストラン(ランチ)12時-15時(16時30分LO)(ディナー)18時-23時(21時30分LO)
※日曜はディナー休業
定休日:月曜
1階 CEKAI 大橋会館(セカイ オオハシカイカン)
営業時間:12時-19時
定休日:月・火曜※イベント等により定休日が変更になる場合あり
5階 サウナ大橋会館
営業時間:15時20分-23時30分(1回100分×4枠/日)