ペットボトルをマイボトルに代えて、街に繰り出す
「とても綺麗なビーチが、大量のゴミ、主にペットボトルで汚染されていたのです。いま世界的に注目されているプラスチック問題は遠い話ではなく、日本も直面しているものだと実感しました」。
世界のプラスチックの年間生産量は過去50年間で20倍にも拡大しており、その年間生産量は約4億トン。日本は、1人あたりのプラスチックごみの量が世界で2番目に多い国(UNEP)というから、ますます他人事にはできない。プラスチックごみは、海の美しい景観や魚たちの命だけでなく、魚介類を口にする私たちの健康も奪ってしまう可能性がある。
「マイボトルを持っていれば、使い捨てのペットボトルに入った水を買う必要がないはず。しかし、給水できる場所がなかなか見つからないことに気がつき、mymizuを考案しました」とマクティアさん。
「世界が直面している環境危機という大きな問題。問題のスケールが大きすぎて、希望を失う方々も少なくないと思います。でも、一人一人がアクションを取ることで、世界は変わると信じています」。
とはいえ、ただペットボトルからマイボトルに変えるだけでは、なかなか持続させることは難しい。その点、mymizuでは削減したプラスチック量や給水した量を記録し、他のユーザーとも共有できるので、ゲーム感覚で楽しめる。効果を可視化できると、モチベーションにつながるのは大きい。また、暮らしている街や、外出先で、今まで行ったことがないお店に行くきっかけにもなりそうだ。
六本木、麻布エリアはどんなところ?
実証すべく足を運んだのは、都内でも特にmymizuの登録スポット数が多いエリアの一つである六本木エリアと麻布エリア。
六本木エリアは、オフィスや高級マンション、六本木ヒルズや東京ミッドタウンなどの商業施設などが立ち並び、バーやクラブなども多い華やかなイメージがある一方で、美術館やアートギャラリー、緑豊かな公園などの憩いのスポットも多い。
パンのロスも”アップサイクル”でおいしく。「bricolage bread & co.」
「”おいしい”を通じて、日常にある何気ないものの大切さや価値に気付いてもらえたら」と同店マネージャーの森下偉雄さん。それは、パンや料理に使っている材料、お店のデザイン、家具、設備、植物、音響など、お店を構成する一つ一つの要素を大切にしていることからも感じられる。
「どのパン屋さんも抱えている問題ですが、パンの余りや端材の廃棄はどうしても出てしまうもの。『Bricolage bread & co.』では、それらをラスクやまかないなどにして活用したり、和歌山の農家さんに送って肥料にしていただいたりしたのですが、それでも余ってしまっていたんです。そこで、長野のクラフトビール醸造所『AJBブルワリー』と協力して、シグネチャーである『ブリコラージュブレッド』の端材を使ったビールをつくることにしました。
いまでは『ブリコラージュブレッド』に関してはロスがゼロになりました。このビールの売り上げの1%は、“ゴミを出さない経済循環”を提案するコミュニティ『530week』の活動費にあてられています」
ほかにも、お店で使っている食材の産地を記した全国マップが店内に置いてあったり、ストローはプラスチック製ではなくステンレス製のものを使っていたり、購入資金が何に使われたかをトラキングコードで追うことができるシアトル生まれのブランド「MiiR(ミアー)」のボトルとのコラボグッズを販売していたり。ポイントを挙げればきりがないほど。mymizuに参加しているのも、そんな想いの一環からだ。
朝食に、スライスしたブリコラージュブレッドにたっぷりのコンビーフやアボカド、とろりと黄身がこぼれる目玉焼きがのった「コンビーフエッグベネディクト」とコーヒーをゆっくりと楽しむ。
”ごみゼロ運動”を体現する「RISE & WIN Brewing Co. KAMIKATZ TAPROOM」
このお店は、徳島県上勝町にあるマイクロ・ブリュワリー「RISE & WIN Brewing Co.」の直営店。上勝町は山間部にあり、過疎化、高齢化が深刻化している一方で、ごみゼロを目指す「ゼロ・ウェイスト宣言」をしていることでも知られている。「RISE & WIN Brewing Co.」も、そのごみゼロ運動を体現している。しかし、本店は徳島市内から車で45分かかり、発信力が課題。フィロソフィーの発信拠点として2016年に誕生したのが、東麻布の直営店だ。
「クラフトビールや料理には、徳島ゆかりの食材を使っていますが、ここも”ごみゼロ”を心がけています。例えば、上勝町の特産品である柑橘『柚香(ゆこう)』を使った『KAMIKAZ LEUVEN WHITE(上勝ルーヴェン・ホワイト)』。柚香はポン酢の原材料として果汁だけが使われていて皮は廃棄されてしまうのですが、それを農家さんから仕入れて香り付けとして利用しています。『ポータースタウト』は規格外というだけで食べられるのに捨てられてしまっていた鳴門金時を使用しています。料理にも、規格外の野菜を使ったり、捨てられてしまうような肉の部位もダシをとるために使ったりしていますよ」。
「ビールは専用ボトル(グロウラー)に詰めて持ち帰ることもできます。社長がポートランド(アメリカ)に通っていた時に、好きなビールを好きな分だけ量り売りしてもらえるこのスタイルのことを知り、上勝の”ごみゼロ運動”に通じるものを感じて取り入れました。
いまでは日本でも随分浸透してきましたが、お店をオープンした当時はまだ珍しいものでした。上勝の本店には車でないと行くことが難しいので、お客さんの4、5割は1Lボトルを持ってテイクアウトしています。東麻布のこちらのお店ではボトルが手荷物になることもあって、まだ利用者は少ないんですけれどね」。
給水をきっかけに、”サステナブル”なお店に出合えた
ほかのスポットも、それぞれの想いとストーリーが少なからずあるのではないだろうか。東京、特に六本木や麻布エリアは飲食店や商業施設の激戦区。どこに行こうか迷いがちだが、「mymizu」の登録スポットというフィルターをかけてみると、いつもと違った思いがけない出合いが待っているかもしれない。
mymizu
bricolage bread & co.
電話番号:03-6804-3350
営業時間:火曜〜木曜7:00-19:00、金曜7:00-20:00、土・日曜8:00-20:00
月曜定休
公式サイト:https://bricolagebread.com/
RISE & WIN Brewing Co. KAMIKATZ TAPROOM
電話番号:03-6441-3800
営業時間:12:00~15:00、17:00~23:00 土・日・祝12:00~23:00
無休
公式サイト:https://www.kamikatz.jp/ja/taproom