問屋街として栄えてきた東日本橋・馬喰町エリア。この街に近年、感度の高いショップや飲食店が増えている。元々の落ち着いた雰囲気をそのままに、心地よいライフスタイルを彩る環境が整いつつあるという情報をキャッチし、肩の力が抜けた大人たちが足を運んでいるようだ。そんな東日本橋・馬喰町エリアに新しく誕生したコンセプチュアルな飲食店が「+O+O+O Sauna And Kitchen」。コワーキングオフィス×サウナといった次世代のワークスタイルを後押しするビルの飲食階として「新しいサウナ飯」の提供をテーマに誕生したこの店だが、単体の飲食店としても通いたい空間となっている。食べ応え抜群の上質な食体験を、ぜひ味わってほしい。
江戸時代から続く問屋街に巻き起こる新風
東日本橋・馬喰町周辺は、江戸時代から続く問屋街として、形を変えながら引き継がれてきた街。
そのため平日にはビジネスパーソンも多く、交通アクセスの面では馬喰横山、東日本橋、小伝馬町の駅が徒歩圏内にある。
そもそもこのエリアには、江戸時代に馬場(馬の調教などをする場所)があり、馬の仲買人である博労(ばくろう)が多く住んでいた背景から、馬喰町という名前になったそう。
そんな場所に、近年では問屋だけでなく、店主のこだわりを感じるスタイリッシュなベーカリーやバーガーショップ、オープンな雰囲気のコーヒースタンド、オルタナティブなアートスペースなどが誕生しつつあるのをご存じだろうか。
そこに集うのは、いわゆる東京の繁華街とは雰囲気の異なる、いい意味でどこか肩の力の抜けた大人たちだ。
休日にはファミリーやカップルの姿も目にするが、それほど人通りの多くない場所だからこそ、窮屈さを感じないリラックスムードが漂い、穴場スポットが集まるといった印象。
そんな日本橋馬喰町エリアにオープンしたのが、「現代人のサウナ文化をリスタイルする食体験の空間」と銘打った「「+O+O+O(トトト) Sauna And Kitchen」だ。
日本橋馬喰町エリアに4月オープン「+O+O+O Sauna And Kitchen」
「+O+O+O Sauna And Kitchen」は、東日本橋駅から徒歩1分の好立地にオープンしたコワーキングオフィス「THEATER WWW(ウー)」の施設内にある。
ライフスタイル型オフィスとして、暮らすように働くことをコンセプトとしているこの場所の特徴は、コミュニケーションサウナ(完全予約制でグループ利用できるサウナ)を併設している点だ。
「新型コロナウイルスのパンデミックを唯一ポジティブに捉えるとするなら、多くの人にとって働き方や暮らし方を見つめ直すきっかけになったことだと思っています。オフィス以外でも働けることが分かってしまったし、現代人からすれば、自身の健康についてほぼ初めてと言っていいくらい、みんなが同時に見つめ直す大きな事件だったんじゃないかと。だから、日々の暮らしの中で自らの働き方や暮らし方をチューニングしていくことの重要性を感じていました。だけど、なぜか世の中の飲食サービスはそうなっていない。だったら、ワークスペースもサウナも併設するような場所にウェルビーイングな店舗をつくるのが一番手っ取り早いんではないかと考えました。『暮らす』と『働く』、そして『整える』。それらの関係性をつくりなおしたイメージです」
そう語るのは、「+O+O+O Sauna And Kitchen」を運営する株式会社バチスカーフの飯田拓哉さん。同社では、空間からグラフィック、イベントまであらゆるデザインを手掛けるほか、自社オフィスでもある築90年超えの長屋で飲食店の経営も行っている。
▼長屋での活動についてはこちらをcheck
食体験をリスタイルするメニュー展開を独自開発
"手触り感のあるユニークな価値"を大事にしているバチスカーフ。飲食事業では「リニューフード」を意識し、一筋縄ではいかないメニュー展開の楽しさがウリだ。
「多様性と声高に言われるようになってきているけど、生活者視点でまちを眺めても実感がない、この社会はまだまだ誰かの『あたりまえ』に支配されているように感じています。僕らは、現代に生きる一人一人が自分の『好き』に気づけて、それをちゃんと誇って、自分らしいユニークな道を歩めるような社会、自己実現にあふれた世界が本来のあるべき姿だと考えており、自発的なプロジェクトを通してその価値観を表現していきたいんです」(飯田さん)
2店舗目となる「+O+O+O Sauna And Kitchen」では、東日本橋・馬喰町のアッパーミドル層も唸らせる、上質でユニーク、それでいてエネルギーチャージもできるメニューを独自開発している。「サウナのひとときを食体験でパーソナライズする」といった、新しい試みにも注目したい。
サウナと共に利用するのはもちろんだが、店単体としての利用も大歓迎とのこと。近隣が活動エリアの人にとってはなおさら通いたくなる日本橋馬喰町のニューカマーだ。
ビルの3階、本当は教えたくないとっておきの行きつけへ
隠れ家的な要素を引き立てているのは、ビルの3階ということもあるかもしれない。エレベーターで上がった先には、店内を横断する楕円形のロングテーブルがまず目を引く。
「空間デザインにおいては、お客さんもスタッフも自然とコミュニケーションが取れてしまいそうなつくりを意識しています。キッチン側とお客さん側がシームレスにつながることや、キッチン側に回り込むような座席の配置にすることで、ここにいる人全員の立場をいい意味でぼかし、コミュニケーションのハードルを下げるような工夫を施しました。友人の家のダイニングキッチンでホームパーティーをするような雰囲気を目指しています」(飯田さん)
空間と飲食の両方からのアプローチが可能なチームだからこそできる、ハード面とソフト面の融合性も魅力のひとつだ。
小上がりのテーブル席も用意されているため、複数人で訪れることももちろんOK。
また、カウンター越しの飾り棚には、各地から選りすぐったクラフトジンやリキュールのボトルが並ぶ。
コンパクトながらもまとまりのある空間は、行きつけにしたい店の第一条件とも言えそうだ。
話題性に富んだスパイシーで香り高い本格料理
日によって変わる営業形態は、ランチ・カフェ・ディナー・バーと4つに分かれている。公式Instagramでの事前確認がおすすめだ。
日中は、近隣で働く人々がランチで立ち寄りたくなるメニューが揃う。馬肉のミートパスタやキューバサンドのほか、試行錯誤の末たどりついたスープカレーも。
照明を落としたディナータイムには、メニューも変化。一人飲みからデート、複数人での来訪まで、変幻自在の使い方ができそうなラインナップだ。
もともと、サウナで汗と共に流れ出た水分と栄養分をチャージする目的でメニュー開発がされているため、どれをとっても健康志向。それでいて、「ヘルシー」という言葉から連想する「物足りなさ」のようなものがなく、まさに「エネルギーチャージ」の表現がしっくりくる。
スパイスや薬味の使い方が絶妙で、店内に漂う甘くスパイシーなアロマに食欲をそそられる。
また、サウナにちなんだキャッチーなメインディッシュも。
目で見ても楽しく、鼻腔を通る香りも、舌で味わう旨みも、全てが満たされる一品だ。
さらに、冒頭に登場したクラフトジンやリキュール、クラフトビール好きのオーナーがセレクトするこだわりのビール、オリジナルの漬け込みシロップでつくるドリンクや、ミクソロジー思考でつくられたオリジナルのサワーやモクテルなど、ドリンク類も抜かりない。
お気に入りの一杯を見つけるまでの過程でも、たくさんの出逢いがありそうだ。
愛着あるとっておきの場所として、切り札に加えたい店
蔵前や清澄白河などの近隣エリアに比べ、目的地として選ばれることはそう多くなかった東日本橋・馬喰町エリア。
だからこそ、カルチャーが醸成されつつある今「この店だから通いたい」と思える場所の魅力が際立つのかもしれない。
「+O+O+O Sauna And Kitchen」はまさにそんな存在としてこの街に馴染んでいきそうな店。一人でふらりもいいし、誰かと連れ立っても喜んでもらえるはず。いずれにせよ、とっておきの切り札としても持っておきたい。
+O+O+O Sauna And Kitchen
CURATION BY
編集者・ライター|ライフスタイル領域をメインに、冊子制作やインタビュー、PRなど。ライフワークは茶道。