Vol.81

UNIQUE

19 NOV 2019

アートと地域と人が交差する。アーツ千代田 3331が創る文化

ビジネスパーソンに向けた、アート関連本が目に付く今日この頃。美的教養を身につけるためにも、日頃からアートに触れたいものだ。今回は美術館やギャラリーとは一線を画す、日常とアートがシームレスに繋がる場、アーツ千代田 3331(3331 Arts Chiyoda)を紹介しよう。

アートに触れる日常から始まる、文化的な豊かさ

「文化的な教養があり美的感性が豊かであること、自分なりの価値観があることが、これからのビジネスパーソンにとって重要である」

書籍に限らず、さまざまなメディアを通して、そういった主張に触れることが多くなってきている。たしかに日常を振り返ってみても、アートに興味がなさそうな人のSNSにも話題の現代アートの展覧会風景がアップされ、美術館へ行けば、平日の夕方から長蛇の列。なんとか入場して観てまわり、試しに異業種交流会で展覧会についての話題を出すと、なかなかどうして会話が弾む。

作品そのものの良さ、作家の思考、作品が制作された当時の時代背景、解説から得た情報から考察したこと、なぜあんなに展覧会が流行ったのか・・・会話は広がり、相手の考え方も見えてくる。

これが思いのほか面白く、もっと日常的にアートに触れてみたいと思える。そんな時に知人から勧められたアートスポットが、御徒町や秋葉原からほど近い場所にある、アーツ千代田 3331である。

ちなみに3331とは、江戸時代から続く手締めの文化「江戸一本締め」のリズムを表しているそうだ。そう、あの「イヨーオ シャン・シャン・シャン、シャン・シャン・シャン、シャン・シャン・シャン、シャン」である。今でもよく祝いの席や祭りの締めに行われるが、そこには苦(三+三+三=九)を最後の一拍で払い落とし、「九」に一画加えて「丸」になるという意味が込められているそうだ。下町の文化が残るこのエリアで今も受け継がれている文化の存在、コミュニティのあり方を改めて意識させてくれる。

アーツ千代田3331 建物前
銀座線末広町駅から歩いて約1分。建物の前に到着した。

広々としたウッドデッキが、目の前にある公園と建物を緩やかに繋いでいて、開放感あふれる雰囲気だ。そして早々に、不自然な場所に円盤が置いてあるのを見つけた。

このマークは足の形か・・・いや、耳の形か?

どうやらこれはサウンドアーティスト・鈴木昭男氏の作品らしい。このマークの上に足を乗せて耳を澄ませ、その時、その場でしか聴くことができない音を聴く「点音(おとだて)」という作品である。
上に乗ってみて、周囲の音に耳を傾けてみる。最初は自分の服の衣擦れの音が気になったが、次第に目の前の公園でくつろいでいる人たちの声や、葉っぱの擦れる音が聴こえてきた。

建物前・公園
さらにじっと耳を澄ませていると、次第に見えないところで走る車の音、遠くで鳴く鳥のさえずりまで聴こえてくる。なるほど、ここがアーツ千代田 3331でしか聴けない音か。到着早々面白い体験をさせてもらったところで、中に入ってみよう。

アート関連のギャラリーやオフィスが集まる、都心の文化施設

左:ショップ、右:インフォメーションカウンター
アーツ千代田 3331は文化的活動の拠点として2010年に誕生したアートセンターだ。2005年に閉校された練成中学校校舎を改修し、B1〜3階の4フロアと屋上すべてを活用。アーティストで東京藝術大学の教授も務める中村政人氏が統括ディレクターを務め、運営されている。

階段前にはフロアガイドが。水道が残され、学校らしい雰囲気を感じる。
1階はメインフロアとして、カフェやショップ、メインギャラリー、コミュニティスペースなどが設けられている。他にも、B1階と2階には主にアートギャラリーが入居。3階にはクリエイティブ関連事業を行う会社や団体のオフィスが入居している。さらに屋上は、菜園として地域の人々に貸し出しているユニークな施設である。

1階 3331 CUBE shop&gallery

1階 コミュニティスペース
入り口すぐのコミュニティスペースは、もともと職員室だった場所だという。利用予約が入っていない時間帯は解放され、平日は近くで働くビジネスパーソンが休憩しに来たり、近隣に住む親子が利用したりしているそうだ。

詳しくなくてもOK。居心地の良い空間で日常的にアートに触れる

廊下側に出てみると、校舎で使われていた下駄箱が、展示のDMやチラシ置き場として活用されていた。
施設全体に懐かしい学校の雰囲気が残され、アートに感じがちな“敷居の高さ”を取り除いてくれる。

3331Gallery
さらに奥に進むと、アーツ千代田 3331が運営するギャラリーを見つけた。この時は、牛島光太郎氏の個展「モノの居場所に言葉をおいたら、知らない場所までとんでいく」が開催されていた。

牛島光太郎 「モノの居場所に言葉をおいたら、知らない場所までとんでいく」展示風景
モノに言葉が組み合わせられることで、そのモノが持つ意味や存在価値が変わっていく。ユーモアあふれる言葉選びを楽しめた。

2階フロアガイド
続いて、2階のギャラリーフロアへ行ってみよう。館内には11のギャラリースペースがあり、それぞれで展示が企画・開催されている。

2階踊り場
階段の踊り場には再び鈴木昭男氏の作品が。外とは違う施設内の点音も楽しめる。

佐々木耕成氏(1928〜2018)による作品を壁画として再現。

2階ギャラリーフロア
階段の壁には色彩と線が印象的な、迫力のあるペイントが施されている。
各ギャラリーの入り口には、大きなガラス張りの扉が設置されている。閉まっていても中が覗けるので、初めて訪れる方も入りやすい設計である。

アキバタマビ21
こちらはアキバタマビ21のギャラリー内。この時は、5名の作家による「Story teller 物語を紡ぐ」展が開催されていた。

アキバタマビ21
目的を持って訪れる展示も面白いが、このように近くに来た時にフラッとギャラリーへ立ち寄って、その時の琴線に触れる作品を見つけるのもすてきな体験になるはずだ。

作家が在廊している時は、ぜひコンセプトも聞いてみよう。

2020年の注目イベントは?

1階メインギャラリー
ひと通り施設内を見て回り、再び1階に戻ると、メインギャラリーで気になる展示が開催されていた。

「東京ビエンナーレ2020 プレイベント」
来たる2020年。東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、活気づく東京でアートの祭典「東京ビエンナーレ2020」が開催されるのだという。

この展示はプレイベントとして、都内北東エリアの5会場で同時展開される展覧会計画の全貌を紹介し、活動の一端、準備段階を見ることができる展示となっていた。来年の実施期間は2020年7月3日(金)~9月13日(日)。オリンピック期間を楽しみながら、さまざまな会場を巡ってアートを楽しんでみてはいかがだろうか。

学び、体験し、考え、買う。ファーストアートを手に入れよう

以前の記事「鑑賞の一歩先へ。小崎哲哉氏に訊く『現代アート』との関わり方」(https://zoomlife.tokyo/unique/75 )でも紹介したように、アートを購入したい場合は、アートフェアに行くのもひとつの手だ。

3331 ART FAIR 開催風景。次回開催は2020年3月18日(水)~ 3月22日(日)を予定。
アーツ千代田 3331でも2020年に9回目となる「3331 ART FAIR 2020」を開催予定。アートギャラリーで活躍するアーティストだけでなく、ギャラリーに所属しない気鋭のアーティスト、さらにコレクターが推薦するアーティストまで、様々なスタイルで活動・発表された作品を購入することができる。

開催期間中は、識者によるトークイベントやアーティストによるライブパフォーマンス、購入したいけれど、なかなか踏み出せない方に向けた、自分にとって特別なアートを見つけるツアーなど、イベントも豊富に用意されている。さまざまな角度から現代アートの理解を深められる機会になるだろう。

ビジネス利用もOK。アーツ千代田 3331で好奇心を刺激しよう

1階ラウンジ
アートと地域が繋がり、人びとと出来事が交わり、新たな文化が生み出される場となっているアーツ千代田 3331。様々な目的で利用できるため、何度も足を運びたくなる。

レンタルスペースもありグループでの利用も可能なので、コミュニティの交流活動や、ビジネス関連のイベント開催場所としても活用できる。日常とアートを境界なく繋ぐ場所になるはずだ。

アーツ千代田 3331

住所:東京都千代田区外神田6丁目11-14
施設開館時間:10:00-21:00
定休日:年中無休(年末年始・夏期休館を除く)
入館料:無料
公式サイト:https://www.3331.jp/