Vol.26

UNIQUE

19 APR 2019

〔目黒にズームイン!〕 MUNSELLーたまに花を売らない花屋

春は川沿いで花見、秋はさんま祭りと、東京の風物詩を楽しめる、中目黒・目黒エリア。街には人気の書店や料理店が軒を連ね、最近では有名コーヒーチェーンの新型店舗がオープンしたことも記憶に新しく、感度の高い人々が集まる土地だ。そんな中目黒と目黒のほぼ中間に、2018年10月 “たまに花を売らない花屋”「MUNSELL(マンセル)」がオープン。どうやらただの花屋とは違い、色鮮やかな花々とユニークなサービスがあるらしいと聞きつけて、早速店を訪ねた。

中目黒と目黒の間に登場。MUNSELLとは?

MUNSELL内観
バス停を降りてすぐの場所にあるMUNSELL。ガラス張りの入り口から店内に入ると、花々の鮮やかな色彩が目に飛び込む。白を基調とする広々とした空間と、タイルやステンレスの什器が花それぞれの個性を引き立たせてくれているようだ。

インパクトの強いカタカナの看板が目印。
MUNSELLという店名は、美術やデザイン分野を学んだことのある人ならすでにピンと来ているだろう。そう、アメリカの画家・美術教育者であるアルバート・マンセルが生み出した、「マンセル表色系」からとっている。
マンセル表色系では、色を体系化するための色相環というものが使われる。色相環はぐるりと輪を描くようにチャートが並び、その姿がどこか花のイメージとリンクしていることから、MUNSELLと名付けられたという。

店主・梅澤氏が考える花の魅力

「赤は赤でも明るい赤もあればくすんだ赤もあって、いろんな色がある。そういう微妙な違いを大切に、花を買う人、贈る人にあった花を提供したいという思いから、店を立ち上げました」と語るのは、店主の梅澤 秀(うめざわ・しゅう)さん。
梅澤さんは、都内の美術大学に進学し、大学2年生の頃から華道を習い始めたという。さらに卒業後も華道の家元のアシスタントを務め、その後もフラワーアーティストに師事。そのほかに街の花屋、フリーでブライダルの会場装飾など、様々な経験を積んだのちにMUNSELLを立ち上げた。
梅澤さんが最初から花好きだったかというと、そうではない。美術大学を受験する時、実技試験の課題に花や植物がモチーフで出されることが多く、うまく描けないために苦手意識があったという。それでもなんとか上達したいと向き合っていくうちに、いつしか花の魅力に惹かれていったそうだ。
そもそも人と接することが好きという梅澤さんにとって、花の魅力は「人に近い感覚になれるところ」だという。
「花は同じ種類でも、ひとつとして同じ個体はありません。ちゃんと手をかければ長く美しさを保てるし、ちょっと目を離しているとすぐにしぼんでしまう。ささいな変化で“生”を感じるところが好きだし、人の暮らしに寄り添ってくれる存在でもあります。そして、何よりも圧倒的に美しい」と梅澤さん。
そんな彼が作る花束は、普通の花屋とは異なる花束の組み立て方をするということで、花やアートに関心が高い人々の間で密かに話題になっている。

「何色がいいか聞かない」MUNSELLの花束

例えば花屋に花束を頼むとき、どんな色味の花を使いたいか聞かれ、私たちは色味のイメージを答えることが多いのではないだろうか。しかし梅澤さんは、そういった花束の組み立て方に異を唱える。
「僕が大切だと思うのは、その人に花を贈りたいという気持ち。色に思いや気持ちを当てはめるのではなく、気持ちに花の色や形を当てはめなきゃ、贈る意味がないしつまらない。だからうちの店では、何色系がいいですか?という聞き方はしないです。贈る相手がどういう人柄か、贈る人の気持ちがどういうものかをヒアリングして、いちからお花を組み立てています」
店内にそろう花はビビットなものが多いかと思えば、極端に淡い色もあり、ユニークな形状の品種も多い。そして、花束の雰囲気を出しやすい葉っぱ類はあえて少なく。花のラインアップにも、MUNSELLならではの個性が表れている。
初めて訪れた方は、花を自分で選ぶのではなく、まずは相談して選んでもらうことをオススメしたい。
梅澤さんは、ひとつひとつの花をただ束ねていくのではなく、立体物として花に落ちる陰影まで計算しながら美しく花束を作っていく。この立体的な構成力は、華道をやっていた時の経験が生かされているという。今までに見たことのないような、この世にまたひとつとない花束に出会えるだろう。
「生花は手入れができない」「花を長く楽しみたい」という方は、ドライフラワーもオススメだ。こちらはすでに花束になった状態で、気軽に手に入れることができる。

“たまに花を売らない”ワークショップやイベントも開催

ところで気になるのが、「たまに花を売らない花屋」という店のコンセプト。一体どういう意味なのだろうか?
「花を贈ることがどういうことかと突き詰めて考えた時、最終的に人にたどり着きました。花も好きだけれど、僕はそれ以上に人が好き。“好きな人たちが喜ぶものを贈る”ということを大切にすると、花だけでは足りないのかもしれないと思いました。だから、花そのものにとらわれずに、別のところからも花や植物を感じて欲しい。そこで、この空間で100%花屋をやるのではなく、10〜20%の時間をワークショップの開催や花を感じられる服やアクセサリーなどの展示販売にあてることにしました。そういう意味で、“たまに花を売らない花屋”なんです」と梅澤さん。
ワークショップは月に1〜2回開催され、季節ごとに花に関連するプロダクトやアートなどの展示販売も行っている。今後も服の販売や、オリジナルブレンドのハーブティーの販売など、花に絡めた多角的な要素を取り入れながら、MUNSELLでしか買えない物が置かれる、レアなイベントを打ち立てていくという。
その人のための花束を作るだけでなく、ワークショップや花を感じる異分野とのコラボイベントを通して、人と人とのふれあいの場と時間を提供するユニークなフラワーショップ、MUNSELL。今後の活動からも目が離せない。

MUNSELL(マンセル)

住所:東京都目黒区目黒2-13-28
アクセス:バス・田道小学校入口下車 徒歩1分
電車・中目黒駅から 徒歩16分、目黒駅から 徒歩12分
電話:03-6712-2345
営業時間:10:00~19:00 (木曜日 13:00open)
定休日:火曜日
公式サイト:https://www.munsell.tokyo/
Instagram:https://www.instagram.com/munsell.flower/