夜中に廊下を歩くとき、玄関に一歩足を踏み入れたとき。屋内センサーライトは、私たちの暮らしの中であると便利な存在である一方、いざ選ぼうとすると「しっくりくるものがない」と感じたことはないだろうか。そんなセンサーライトの在り方を見直し、徹底的なユーザー目線で生まれたのが「かげあかり」である。光を主役にするというコンセプトの狙いや、和室・洋室を問わず、賃貸でも使いやすい理由を、開発をリードした株式会社ムサシ常務執行役員の野田光信さんにお話を伺った。
住まいのインテリアや空間の邪魔をしないデザイン
こだわった内装やインテリアの中に、できるだけ余計なものは置きたくない。壁に傷もつけたくない。そうした悩みを解決してくれるのが、ムサシが開発した「かげあかり」である。
照明は、明るさを確保するための道具であると同時に、空間の印象を大きく左右する存在でもある。特に屋内用のセンサーライトは、夜間には便利である一方、日中は使われることがなく、常に壁に取り付けられたままだ。デザインによっては違和感を生み、悪目立ちしてしまうことも少なくない。
「かげあかり」は、これまで業界ではあまり目を向けられてこなかった課題に向き合い、徹底したユーザー目線でつくられた製品である。目指したのは、夜は「光が主役、器具は消える」こと。そして日中は、「家の空間を邪魔しないデザイン」であることだ。
サイズや光量は使われるシーンを想定して綿密に設計され、カラーバリエーションも豊富にあり、設置場所や壁の色に合わせて選ぶことができる。洋室はもちろん、和室にも自然になじむ。
石膏ピンで簡単に取り付けられ、充電式でコンセントが不要な点も魅力だ。従来の屋内センサーライトは、マグネット、床置き、ビス固定といった設置方法が主流だったが、「かげあかり」では、着脱式のマグネットプレートをピンで固定する仕組みを採用した。賃貸住宅に住む人でも、ためらうことなく使えるよう配慮されている。
ありそうでなかった、インテリアになる屋内センサーライト。「かげあかり」は、暮らしの雰囲気を損なわず、空間をより心地よいものにしてくれる明かりだ。
暮らしのシーンから設計された、ちょうどいい機能
「かげあかり」は場所や用途に応じて選べる6モデルを展開している。5色展開のモデルと2色展開のモデルがあり、すべて合わせると24種類ものラインアップが揃う。
横長でスリムな「かげあかり01」と「かげあかり02」は、廊下や階段での使用を想定したモデルだ。人の横方向の動きを感知し、進行方向の足元を照らす。
正方形の「かげあかり03」は、玄関やリビングといった少し広さのある空間向けに設計されている。全方位を照らす仕様で、家族が寝静まった夜遅くの帰宅時でも、ドアを開けると明かりが灯り、温かく迎えてくれる。そんなシーンを思い描いて開発されたという。
さらに小型の「かげあかり04」は、「ほんの少しだけ明かりが欲しい」というニーズに応える。ゴミ箱の上やトイレットペーパーの下など、周辺をほんのり照らすため、設置場所を選ばずマルチに使いやすい。
ここまでのモデルが間接光なのに対し、「かげあかり05」と「かげあかり06」は直接光のタイプだ。物体を照らす力が強く、収納や物置など、中にあるものをしっかり判別したい場所での使用が適している。
点灯時間は10秒と50秒の切り替え式。廊下のように通り過ぎるだけの場所では短く、玄関やトイレなど少し滞在する場所では長めに設定できる。
必要なときに素早く照らしてくれるのも「かげあかり」の特徴だ。「かげあかり01〜03」までは、実際に使うシーンを想定した結果、業界でも珍しいダブルセンサーを採用している。
横長モデルでは左右にセンサーを配置し、どちら側から近づいても手前で感知する仕組みだ。通り過ぎた後も、しばらく点灯が続くよう設計されている。また、正方形モデルでは中央に2つのセンサーを配置することで、感知スピードを高めた。玄関に一歩足を踏み入れた瞬間に明かりが灯る感度の良さである。
一方で、「かげあかり」には常時点灯の機能は搭載されていない。非常時に懐中電灯として使える機能ではあるが、従来製品では使用頻度が高くなかったためだ。あくまで屋内センサーライトとしての役割に絞り、「必要なときに、必要なだけ照らす」ことを徹底している。
「便利さ」と「情緒」を両立させたい、その思いから
「かげあかり」が生まれた背景には、センサーライト市場に対する長年の違和感があったという。ムサシは、センサーライトのパイオニアとして、30年近くにわたり売り場と市場の変化を見続けてきた。
20年ほど前からLEDが普及して以降、センサーライトの世界では「より明るく」「より安く」という競争が続いてきた。白色LEDを搭載し、明るさを表すルーメン値を上げることが価値とされ、似たような製品が並ぶようになった。視認性という点では優れている一方で、かつての電球色やロウソクの炎にあったような、落ち着きや情緒を感じさせる光は、次第に失われていった。
「便利さだけを追いかける照明ではなく、情緒も感じられる明かりをつくりたい」。
そうした思いが、「かげあかり」開発の出発点だった。
白色のセンサーライトばかりが並ぶ売り場では、落ち着いた空間で暮らしたい人が、自分の感覚に合うものを選ぶことが難しい。そこでムサシは、あえて市場競争の軸から一歩距離を取り、ユーザー視点でのモデル開発に踏み切った。
明るさが価値とされる売り場において、ルーメン値を抑えることにはリスクも伴う。それでもムサシは、「一番心地よい光とは何か」を改めて問い直し、思い切った挑戦に取り組むことにしたのだ。
壁面同化と簡単な着脱。その発想を形にするまで
「かげあかり」の開発において、ムサシが選んだのはデザイン先行という、これまでとは異なるアプローチだった。
従来の開発では、先に開発部が内部構造やサイズ感を決め、その枠の中で外観を整える手法をとっていた。しかし、「徹底的にデザインにこだわりたい」という思いから、まずプロダクトデザイナーに白紙の状態でデザインを委ねたという。
デザイナーに託されたお題は、「光を主役にし、器具はできるだけ存在感を消すこと」。さらに、日中に本体が見えても空間の邪魔にならず、売り場では思わず目を留めてしまうデザインであることが求められた。そうした条件のもと、デザイナーたちは知恵を絞り、「器具感からの脱却、壁面との同化」というデザインコンセプトを生み出した。
このコンセプトに沿って描かれたデザインを実現するために、開発部が最も苦労したのがセンサー部分である。感知性能を高めるため前面に配置されることが多かったセンサーを内部に収め、薄さと感度を両立させなければならなかった。素材や構造を一から見直し、これまでにない難易度の設計に向き合うことになった。
こうして生まれた「かげあかり」は、器具ではなく光をデザインの主題とした点や、点灯していないときも空間に溶け込み、どんなインテリアにも調和する点などが評価され、2025年度グッドデザイン・ベスト100に選出された。さらに、審査員の一人である建築デザイナー・寺田尚樹さんの「私の選ぶ一品」にも選ばれるという評価を得た。
それぞれの空間に溶け込む明かり
「かげあかり」は、ムサシにとって単なる新製品ではなく、これからのものづくりを象徴する存在でもある。どんな暮らしの中で、どんな気持ちで使われるのか。ユーザーのニーズをとことん掘り下げ、コンセプトづくりから丁寧に行い、最高のものをつくる。ムサシがメーカーとして大切にする姿勢だ。
その実現を支えているのが、高い技術力である。長年にわたりセンサーライトを自社で開発し、市場を観察し続けてきたムサシならではの強みだ。
現在はオンラインショップでの販売が中心だが、今後は家電量販店での取り扱いも増やし、オンラインとリアル店舗の両方で展開していく予定だ。また、開発当初から海外展開も視野に入れている。「かげあかり」というネーミングには、ユニバーサルに通用するデザインでありながらも、日本発の製品としての繊細さを大切にしたいという意図が込められている。
空間の中に溶け込む明かり。自分の暮らしに合うものを見つけてみてはいかがだろうか。
ムサシ|かげあかり
かげあかりシリーズ
公式WEB販売価格 3,980円(税込)〜
※価格は時期・販売店によって変動する場合があります。
公式サイト:
https://musashi.inc/topics/5786/
CURATION BY
料理とお菓子作り、キャンプが趣味。都会に住みながらも、時々自然の中で過ごす時間を持ち、できるだけ手作りで身体に優しい食事を取り入れている。日々の暮らしを大切に、丁寧に過ごすことがモットー。