Vol.629

MONO

25 FEB 2025

野に咲く花を住まいの中に。暮らしを彩る小さなフラワーベースたち

室内に花を飾ると聞くと、フラワーショップで花を選んで花束に…というシーンが頭に浮かぶ。だが野に咲く小さな花を飾るだけでも、暮らしと心に潤いを与えてくれる。大仰なブーケや大ぶりな花器ではなく、手のひらにすっぽりと収まるほどの小さなフラワーベースに、道の片隅で息づく花を飾ってみよう。住まいの中で瑞々しく咲く花の存在が、記憶に残らない風景や、忘れ去られていく出来事の大切さを教えてくれるに違いない。

見過ごしている日常の風景に目を向けて

慌ただしく過ぎていく日常の中では、風景も通り過ぎて行くだけで記憶に残らない
見ているようで覚えていない、そのような出来事は案外多いのかもしれず、日常的に目にする周りの風景や、季節ごとに野に咲く花もそのひとつかもしれない。ブーケをプレゼントとしてもらったり、レストランに飾られた花は印象に残るものの、記憶に留まらないのが野や街角の片隅に咲く花たちだ。

注意深く見渡さないと、街のあちこちに咲く花の存在に気付かない
誰からも注意を払われないようにひっそりと咲く小さな花たちも、室内に飾ってみればその存在感は大きくなり、住まいと心を潤してくれる。そして小さな花を飾るのなら、その姿がもっと輝くように、似合うサイズの花器を捜してみよう。密やかな花の輝きが増すような小さなフラワーベースを幾つか置けば、住まいに息づく植物の息吹を感じることが出来るだろう。

慎ましやかに咲く小さな花は、その趣きを惹き立てるフラワーベースに合わせて

小さなフラワーベースの特徴を活かして

これまでに色々な種類のフラワーベースを所有してきたが、小さいサイズはあるといってもスリムなタイプや一輪挿しのもので、それらの花器は活用法も広く、花を飾る楽しさを改めて教えてくれた。
今回ご紹介する花器のサイズはもう少し小さめで、どれも小ぶりながら印象的なフォルムとカラー。そしてどれも置く場所を選ばないところが特徴となっている。

小さな花器はほんの僅かなスペースでも活用でき、印象的なシーンを作り出す
小さめの花器の利点は他にもあり、例えば大きな花束を飾った際に、徐々に枯れ出したあと最後に残った花をどうすべきかと悩んだことはないだろうか。ミニサイズのフラワーベースがあれば、切り花の先端をカットし、短くしたものでも活けることが出来る。ブーケとして飾られていた時とは違う、新たなディスプレイとして異なる風景を描き出すのを実感できるはず。

切り花を生き生きと飾れる期間は2週間ほど。その後は先端をカットして小さな花器に活け、最後まで美しくディスプレイしてあげたい
大きな花束を飾ればインパクトは抜群で、室内全体が華やかな雰囲気となる。だが小さいサイズのフラワーベースは置き場所を選ばないため、これまで花を飾っていた場所、リビングやダイニングなどとはまた違ったエリアにも置くことが出来る。見る度に心を癒してくれる小さな花の、その存在感の大きさにきっと気付くことだろう。

+d ミチクサ

『アッシュコンセプト』が運営するデザインギフトショップ『KONCENT コンセント 』では数多くの魅力的なプロダクトが展開しているが、今回ご紹介するのはアッシュコンセプトのオリジナルブランド、『 + d』(プラスディー) が生み出したフラワーベース、『ミチクサ』だ。

『ミチクサ』は直径6.7㎝、高さ3.7㎝の小さなサイズ。僅かなスペースに花を飾るにはぴったり

小さめのフラワーベースとしては珍しい剣山付き。小さな花を活けやすいのが嬉しい
『ミチクサ』はご覧のようにガラスのフラワーベースと剣山がセットとなっており、剣山のカラーは8色が展開中だ。デザイナーはドイツiF賞など受賞多数している河野史明氏。『ミチクサ』という名は「道ばたの花」「野の花」「道草をする」の意味の「みちくさ」だそうで、「忙しい毎日、机の上にほんの少しのブレイクを」と願い、この花器をデザインしたという。

自宅で過ごすリラックスタイム。花がそばにあるだけで、心がふんわり温かくなる
今回は悩んだ末、剣山には淡いブルーが美しい『雲』をチョイスしてみた。花を飾って陽に当たるときらきらと輝くその様は、水の中に植物が浮いているようにも見え、神秘的な姿を楽しめる。丸くころんとしたフォルムも可愛く、他に楕円形のオーバル型も販売中だ。

手のひらに載る小さなときめき。光に反射する剣山のカラーを楽しみたい
剣山のカラーやフラワーベースのフォルム、また選ぶ花によって多くの表情を見せてくれる+dの『ミチクサ』。道端に咲く花を活ける花器というコンセプト通り、可憐な花が良く似合う。

oodesign Floating Vase / RIPPLE

ちょっぴり風変わりなフラワーベースがこちら、デザイン事務所oodesign(オオデザイン)の Floating Vase / RIPPLEだ。Floating Vase、浮かべる花器と名がついているように、こちらは水に浮かべる一輪挿しなのだ。

ぱっと見ただけではフラワーベースとは想像できないフォルム。尖った先端に向けて茎を刺し、花を活ける仕組みとなっている
直径は5.2cmほどで、手のひらに収まるほど小さなサイズ。そのためあまり大きな浮力はないので、小さく軽い草花を飾るのがぴったりだ。好きなグラスやボウルに浮かべ、ふわふわと水を漂う草花を眺めてみよう。

好きなガラスやボウルに水を入れてセッティング。使用する器によって異なる雰囲気となる
波のような形をしているので、グラスに水を張って浮かべると、周囲の微かな風に揺られて小さなさざ波が現れたかのよう。家で過ごすブレイクタイムに眺めれば、草花と水の動きに癒されること間違いなしのフラワーベースだ。

水の上で風に吹かれて花が揺れ動く様をのんびりと眺めたい

Sghr スガハラ MINI VASE

Sghr スガハラ(菅原工芸硝子株式会社)は1932年に創業、ガラス食器の製造をスタートし、現在では千葉県九十九里浜に工房を構え、職人たちによるきめ細やかな手仕事で製造を続けている。今回購入に至ったのはMINI VASEのシリーズだ。

すべての製品は熟練の職人によるハンドメイド。見る角度によって姿を変え、陽の光りに当たると美しい輝きを放つ
Sghr スガハラでは多くの花器を取り扱っているが、MINI VASEはその中でもカラーの美しさ、小ぶりな愛らしさで人の目を奪わずにはいられない。かたちも丸形や三角、平角やサイコロ型など他とは一線を画し、絶妙なニュアンスカラーは選択肢も多く、どれを選べば良いか迷うほど。

長さ7.2㎝、高さ4.8㎝のミニサイズ。印象的なカラーとオリジナルなフォルムで、どこから見ても絵になる風情
今回は悩んだ末ワインレッドの三角形のものをチョイスしてみた。手のひらに載るころんとしたフォルムはとても愛らしい。シックなカラーは昼と夜、置く場所、飾る花によって大きく印象を変えてくれる。

夕暮れ時のドリンクタイムでは味わい深い色合いとなり、雰囲気をぐっと盛り上げてくれる
デスクに置いたり、キッチンのちょっとしたスペースに、あるいは玄関や寝室に。普段植物とあまり縁がない人でも、このミニベースがひとつあれば、花のある暮らしをきっと楽しめるに違いない。

記憶からこぼれ落ちていくものに意識を向けて

小さな花が住まいの中のあちこちに点在していると、それらが視界に入るだけで、ふっと心が軽くなる。そうすると今度は花そのものが大きな存在となっていく。これまで気にも留めなかった道端に咲く花の名前や咲く季節を知りたくなり、やがて道を歩いている時に、これまでは視界に入り込むことのなかったものに気付き出す。

忘れ去られていく儚げな存在に目を留めて。記憶に刻む風景を作ってみたい
足早に通り過ぎて行く道の端にひっそりと咲く小さな植物。ふと手に取って暮らしの中へ迎え入れてみれば、その生命の輝きが暮らしに軽やかな風を吹き込んでくれる。時にはこれまで記憶に残らなかった野に咲く花に意識を向けて、その存在を知り、飾り慈しむ楽しみを、小さなフラワーベースとともに味わってみよう。
+d ミチクサ
¥2,420(税別)
koncent.jp

Floating Vase / RIPPLE
¥1,210(税込)
oodesign.shop

Sghe MINI VASE
¥1,980(税込)
shop.sugahara.com