暮らしの中で欠かせない必需品や、毎日のように使う品々。それらは消耗品として扱われることが多く、コストパフォーマンスの良いものを選びがちだ。だが自分の手に直接触れる布製品は、好みの質感のものを選びたい。BAN INOUEの布製品は古くから日本で使われてきた蚊帳、あるいは麻の生地を使い、四季折々を感じさせる柔らかな色彩と、素材の個性を実感できる手触りで、長く使い続けたくなるものばかり。暮らしにささやかな贅沢と潤いを与えてくれるだろう。
毎日使うものだから、心地良く愛すべきものを
キッチンやテーブル周りは何かと布素材のアイテムを多く使うエリアだ。例えばふきんや台拭き、コースターにランチョンマット。毎日調理をする度、食事をする都度使うものだから、実用性に富み価格もリーズナブルなものを選びがちだ。
だがキッチン周りの布は直接手が触れるものであり、ランチョンマットやコースターは料理や飲み物の印象を各段に上げてくれるため、実用性ばかり重視するのは少し悲しい。
毎日使っても飽きることなく、長く愛でることができるもの。柔らかな質感、心惹かれる色彩、上質な素材。毎日繰り返し使うものだからこそ、その良さを本当に実感できるものを選びたい。
そんな希望を叶えてくれるのが、BAN INOUEの布製品だ。日本で長く愛され続けてきた麻を素材にしたテーブル周りの小物、蚊帳生地を使った優しい感触のふきんや鍋つかみ。初めて購入した際に感じたときめきは決して色褪せることなく、使う度に愛着が増していくに違いない。
日本に伝わる美を現代に。BAN INOUE
BAN INOUEはカメラマンの井上博道氏と奈良晒と茶道具卸を生業とする家庭に育った夫人により、1987年に設立された。苧麻(ちょま・ラミー)と亜麻(リネン)の麻織物、奈良の地場産業である虫よけ用の粗く織られた生地、蚊帳の素材を使った魅力的な布製品を数多く取り揃えている。
室町時代に生まれ、安土桃山時代に花開いた生け花や茶の湯、庭や床の間などの住文化、更に食文化も含め現代にも続く日本の伝統文化である『華』と『侘び』の美の世界がBAN INOUEのインスピレーションルーツとなっているという。
BAN INOUEのプロダクトの特徴はその素材はもちろん、心を落ち着かせる繊細な色彩だ。四季を想起させるネーミングを多く用いて、華やかさと穏やかさを兼ね備えた、五感に響く美しい色合いを多く展開している。
テーブルウェアやキッチン周りの品々だけでなく、他にも蚊帳を使った日常着、バッグやバブーシュ、クッション、タピストリーなど暮らしを豊かにしてくれる様々なプロダクトがあり、どれも眺めているだけでも楽しく、どれにしようかと選ぶ時間も心弾むものとなるに違いない。
柔らかな感触が手を包む。蚊帳を使ったふきんと鍋つかみ
BAN INOUEのプロダクトの素材のひとつ、蚊帳生地。寝室の天井や長押から吊るし、寝床を覆い虫除けとして使う蚊帳は、かつては日本の夏の住居に欠かせないものだったが、現代では見たことがないという人も多いかもしれない。
BAN INOUEの蚊帳生地はすべて綿100%で、蚊帳生地の特徴として糸と糸の間を広くとって織り上げているため、しっかりと水分を吸い取ってくれる仕組みとなっている。
更に通気性に富んだ構造は乾きやすく、キッチン周りではふきんや台拭き、お手拭きなど多くのプロダクトが大活躍してくれるはず。今回は悩みに悩んだ末、「蚊帳棉ふきん」の『水』のカラーを選んでみた。
この蚊帳棉ふきんは皿を拭くだけでなく、蒸し料理や濾すのにも使え、お弁当を包む際にも活用できる。ガーゼのような優しい手触りで洗うほどに馴染んでくるので、長く使い続けていくことができるだろう。
また同じく蚊帳生地を使った鍋つかみも購入してみた。鋳物の鍋ではフタのつまみやハンドルが熱くて触れないことがあるが、こちらがあればもう安心。素朴な形状と住まいに馴染む色彩で、家事が楽しくなること間違いなしのアイテムだ。
コースターやランチョンマットで、テーブルを華やかに彩って
蚊帳生地に続き、気になっていたのがBAN INOUEの麻を使ったプロダクトだ。こちらも熟考の末、苧麻の素材で作られた色合いが絶妙な「先染めランチョンマット」を選んでみた。
こちらは手紡ぎ手織りで作られているそうで、カジュアルなパターンでありながら麻のきりりとした質感を備えている。格子柄に合うのは洋風の料理と思われがちだが、麻の凛とした風合いが和食にも似合うことを物語っている。
そして麻100%を使用したコースターも、2種類選んでみた。やはり手織りで作られている『江戸好みコースター』から素朴な風合いが活きている”豆絞り赤”を。自然から連想されたモチーフを施した『新ビオコースター』からは”キノミ”を選択した。
暮らしに欠かせないものこそ、愛せるものを
日々の生活に欠かせないものは繰り返し使うことで、やがて買ったばかりの状態から古びて使えなくなることがある。それらを消耗品と考え、いずれ使用できなくなるのならと、質よりも量を重視することがある。
だが暮らしを彩るもの、たとえばキッチンやテーブル周りの品々は、食への興味や好奇心、愛着を増してくれる。皿を拭く、鍋を持つといった日常的に行う作業でも、お気に入りとともにこなすのであれば、キッチンに立つことそのものが楽しいものに感じられる。
心を動かすデザインのランチョンマットやコースターは、この料理にはどんな食器を使おうか、このグラスに似合う飲み物は何だろうと考える喜びをもたらしてくれる。日本が古くから保つ美意識を反映したBAN INOUEの布たちが、愛すべきものを使うことで、日常と心をより豊かにすることを教えてくれるだろう。
BAN INOUE
CURATION BY
1992年渡英、2011年よりスコットランドで田舎暮らし中。小さな「好き」に囲まれた生活を求めていたら、夏が短く冬が長い、寒い国にたどり着きました。