Vol.593

MONO

22 OCT 2024

マッチで香りを灯すひととき。hibi 10MINUTES AROMA

最後にマッチを擦ったのはいつだろう。もう思い出せないほど昔のことだ。マッチ棒をシュッと擦る瞬間はどことなく楽しく、炎を見つめる儚い時間は非日常的だ。hibi 10MINUTES AROMA はマッチ棒の形をしたお香。マッチの頭を箱の側面に当てて擦り、先端に灯るオレンジ色の揺らめく炎を見守る。やがて一本の細い煙が立ち昇り、ご褒美のように甘く爽やかな匂いが鼻を抜ける。忙しい日々の中でほんの10分、香りが彩る自分だけの時間を楽しんでほしい。

揺らめく炎の魔法~「誰でもない」自分に戻る時間

マッチ売りの少女は火が灯るほんの数分、美しい夢を見た。幼いころ寝しなに聞いた懐かしい童話だ。子どもの頃はときどきマッチを擦る機会があった。花火、バースデーケーキのキャンドル、お父さんの煙草、停電時に灯したろうそく。どこの家庭にもあったマッチはいつの間にか姿を消した。必需品ではなくなり、忘れられてしまった昭和の文化。若者世代はマッチを使った経験もないかもしれない。

箱の個性的な絵柄・高いデザイン性から、日本のマッチは海外で人気を博した
hibi 10MINUTES AROMA(以下、hibi)のマッチ棒を箱にあてがい火を起こす。パステルカラーの先端にポッと光が灯ると、見つめる瞳に炎が宿る。五感がきゅうっと引き締まった後、ゆっくりと意識がゆるんでいく。それは社会や家庭での役割を脱ぎ捨てて、‟なにものでもない私”に戻る瞬間だ。

「マッチで火を灯す文化を未来の世代へ」という願いが込められたhibi 10MINUTES AROMA

マッチに灯る炎が自分時間へといざなう

気軽に楽しみ、お香を身近な存在に

hibi 10MINUTES AROMAの使い方を改めてお伝えしたい。マッチ棒に火をつけて、小さな炎が絶えるまで数秒待つ。火が消えて細い煙が立ったら、軸木のお香が薫り出すサインだ。不燃性の専用マットにそのまま静かに横たえたら、10分間のアロマタイムが始まる。たゆたう香りが凝り固まった気持ちをや疲れをほぐしてくれるだろう。お香が燃え尽きてもしばらくの間、残香が部屋を漂う。

hibiの特徴はいつでも気軽に香りを楽しめることだ。ライターや香具が要らず、hibiのお香と専用マットを購入すれば、すぐに使えるのがうれしい。不燃性のマットは繰り返し使用できるため、次はお香のみを買えば良い。

パッケージは素朴な手触りや質感にこだわって作られている
なお、黒い不燃マットは遮熱性がある耐火トレイの箱に入っている。Hibiを不燃マットの上に寝かせる際は、必ず耐火トレイの上において使用しよう。不燃マットだけでは下に熱が伝わり、テーブルなどが焦げてしまう恐れがある。公式ショップでは、おしゃれな瀬戸焼や丹波焼のマットトレイを販売しているので、インテリアとしても楽しみたい方にお勧めだ。

耐火トレイと不燃マット。必ずセットでの使用を守ろう

趣のある器をhibiのマットトレイ専用にして、お香を焚くのも素敵だ
hibiのもう一つの特徴は、燃焼時間が短いことだ。通常のお香は20~30分続くものが多い。長く香りを楽しめる反面、その間、眼を離すことができず煙も部屋に充満する。hibiはほんの10分のお香なので、就寝前や読書に集中したいとき、少しだけ部屋に香りを足せるのがうれしい。来客前の忙しいときにも安心して使用できる。心地よい香りで大切なお客さまをお迎えしよう。

鮮やかなイエローは可憐なミモザの香り
2015年に誕生したhibiは香りのラインアップを広げ、現在は「和の香り」「hibi deep.」「hibi garden.」といった4つのシリーズ、計16種類を揃える。たとえばゼラニウム、イランイラン、ティーツリー、オスマンサス、ひのき、ゆず。リフレッシュしたいときはレモングラスを、深みのある香りで自分の内面を見つめたいときは白檀を聴こう。手元に異なる香りの hibi を置いて、その日の気分に合わせてチョイスしたい。

パステルカラーのマッチ棒に気分が華やぐ

マッチを擦るには少しコツがいる。慣れると上手に着火できるように

大切な人へのさりげないプレゼントに

hibiのロゴ入りギフトパッケージ。メッセージカードに思いをしたためて
親しい友人にも、愛しい恋人にも「ありがとう」と伝えることはどこか恥ずかしい。特別なことは何もなくても、気持ちを香りに託して普段言えない想いを届けてはどうだろう。そんなささやかな贈り物に、hibiはぴったりだ。プレゼントには3種 または 5種のお香と専用マットがセットの、ギフトボックスを勧めたい。公式ショップではラッピングサービスを行っており、メッセージカードも添えられている。

通常、お香は香皿や香炉が無ければ使えない。だからお香をプレゼントすることを、ついためらってしまう。 hibiがプレゼントに適しているのは、お香立てなどが要らず、誰でもすぐに楽しめるからだ。あなたのギフトをきっかけに、大好きな人の暮らしに香りが溶け込むかもしれない。

「ミモザ」「藤」「ピオニー」3種の香りを楽しめる「hibi garden. ギフトボックス」
男性への贈り物には「hibi deep.」 はどうだろう。温かく渋みのある「Oak moss(オークモス)」、クールな「Cedar wood(シダーウッド)」、情熱的でワイルドな甘さの「Ambergris(アンバー)」のセットは、パートナーや父の日のギフトにお勧めだ。

大切な人の門出を祝うときも、香りのプレゼントを贈ってみよう。思い出は香りとともによみがえる。筆者とhibiとの出会いも、親しい友人からもらったお餞別ギフトだった。hibi を棚から取り出し香りを聴くたびに、かの地の日々を思い出す。

お香を焚いて目を閉じれば、心はいつしか自然の中へ飛翔する

2つの伝統工芸の融合により生まれた hibi 10MINUTES AROMA

hibiは2つの伝統工芸のコラボレーションによって、2015年に誕生した。

「マッチ棒の形をしたお香」という唯一無二のアイデアを生み出したのは、「神戸マッチ株式会社」だ。1929年創業、従業員30名ほどの小さな町工場は、hibiのマッチ棒の先端部分の製造を担う。

マッチ文化の衰退に伴い、多くの町工場が閉鎖を余儀なくされる中で、神戸マッチ株式会社は約1世紀に渡り暖簾を守ってきた。そして「”マッチを擦る”という文化を日本に、世界に残したい」と願い、大胆な挑戦を始める。「hibi 10MINUTES AROMA 」の開発だ。

神戸マッチ株式会社が位置する兵庫県の播磨地方。高御位山から街並みを望む
マッチ棒の軸木になるお香を生産するのは、淡路島の「株式会社大発」。創業88年の歴史を持つお香・線香の製造会社だ。淡路島は現在、お香・線香の生産量で国内約7割のシェアを誇るが、年々減少の一途をたどっている。

見ごろを迎えた淡路島のコスモス畑
hibiは、マッチとお香という、苦境に立たされている伝統工芸が出会い、3年半に渡る施行錯誤の末に生み出された。

神戸マッチ株式会社のオリジナルブランドである 「hibi 10MINUTES AROMA」は、2016年パリ展示会に出展し、高い注目を集めた。和を表現したスタイリッシュなパッケージデザインと、ユニークなアロマ体験から国内外で人気を博すhibi。現在はフランス・米国をはじめ、海外28カ国のセレクトショップなどに並び、多くの人の手に届いている。

hibiのブランド名とロゴマークは「日々」に由来する
バタバタと忙しい毎日。1日にほんの10分立ち止まって豊かな香りを聴きながら、あなたはどう過ごすだろう。これからの日々に想いを馳せる。過ぎ去った日々を振り返る。今日の自分を慈しむ。数秒で消える炎、10分間で途切れる煙、ほのかにただよう残香。hibi 10MINUTES AROMA で心に火を灯し、自分だけの時間を彩る。そんな儚くも豊かな時間を過ごしてみてはどうだろう。

hibi

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