Vol.580

MONO

06 SEP 2024

伝統と革新の技術で魅せ、形の自由さを楽しむ錫のうつわ 能作「KAGO」

DIYや手芸をすることはあっても、自由に曲げたり伸ばしたりと粘土遊びのように何かを形作ることは少ないと思う。それをまさかの金属で叶え、懐かしくも新しい不思議な感覚で楽しませてくれる美しい日本の器がある。自在に形を変えることで、装飾としても器としても楽しむことができ、新たな使い道・形を探す楽しさを得られる能作「KAGO」を紹介したい。

400余年の歴史を持つ鋳物の一大産地 富山・高岡で生まれた錫製品「KAGO」

「KAGO」は富山県北西部に位置する高岡市の伝統産業である「鋳物」の技術を活用したプロダクトだ。高岡市は加賀前田家2代当主 前田利長が高岡城を築き城下町として栄え、産業発展のために鋳物師を招いたことから「高岡銅器」の歴史が始まった。

地元の銅器製造技術の粋を集めて完成した高岡大仏。奈良・鎌倉につぐ日本3大仏に数えられ、総高約16mにおよぶ高岡市のシンボルでもある。(画像提供:高岡市)
当初は鍋や釜などの日用品や農具が中心だったが、時代の流れとともに釣鐘や灯籠、仏具、花瓶などの生産もはじまり、銅器をはじめとする鋳物の一大産地として400年以上の歴史を誇る。

高岡鋳物発祥の地でもある金屋町。現在は多くの工場が移転してしまったが、美しい千本格子の家並みが保存されている。(画像提供:高岡市)
能作は1916年(大正5年)に高岡市で創業し、100年以上もの間、高岡銅器の魅力を伝え続けている企業だ。創業当初は仏具や茶道具、花器などを製造していたが、4代目となる能作克治氏の代表取締役就任をきっかけに、自社ブランド製品の開発を開始した。

最初は3mm厚ほどの板状になっている。曲げて使ったあとも平らに戻せるので、収納性も高い
通常は強度を持たせるため他の金属を合わせて加工する錫製品だが、「だれもしたことのないことをしたい」という想いから、能作では錫100%の加工に挑戦。錫の特性であるやわらかさに着目し、曲げて使える食器をつくろうと生まれたのが「KAGO」シリーズを中心とする錫製品だ。

金属でありながら自由自在に形を変えられる

錫100%のもつやわらかさを生かした「KAGO」は、金属でありながら縦横に曲げることが可能で、形を変形させることでかご状にすることができる。錫のやわらかい特性は機械作業に向かないこともあり、職人による手作業で仕上げられているため一つずつ異なる表情を楽しめる。

落ち着いた上品なきらめきと質感が美しい。まるで蜘蛛の巣のような網目の一つひとつを曲げられる
ワイヤーを編み上げたような繊細な見た目だが、れっきとした錫製品で技術の粋を集めた工芸品だ。持ってみると金属らしいしっかりとした質感と重みが感じられる。

縦横に引っ張ったり曲げたりすることで変形するため、好きな形にアレンジして使用できる。製品名のとおりかごとして使用するだけでなく、アーティスティックに花や食品、小物を彩ることも可能。1点に過剰な力を加えない限りちぎれるようなことはなく、何度でも曲げることができるため、様々なシーンで活躍し用途を限定しない。

金属でありながら柔軟性をもつ錫の特性を生かし、自由に形を変えられるのが「KAGO」の特徴だ

空き容器と組み合わせれば、どんな器もあっという間に花瓶に。「KAGO」の網目のお陰で、花の向きも細かに調整できる
陶磁器やガラスの器と組み合わせて使用することで用途の幅が広がるだけでなく新しい美しさを見ることもできる。

今回使用している四角形だけでなく花や泡を模したような形、ワインボトルホルダーにもなる大きなサイズまで揃う豊富なラインナップで、それぞれの風合いを生かしながら多彩な使い方が楽しめる。

水に濡れてもへっちゃら。用途もインテリアも問わない万能さ

鉛を一切含まない錫100%のプロダクトだからこそ、人体には無害なので安心して使用できる。抗菌性があるため食器としても使用可能で、シンプルなデザインだからこそ和洋問わず調和する。

錫の落ち着いた質感は、和の雰囲気とも馴染みやすい。同社の箸置きと組み合わせれば、食卓もいっそう華やかに
「KAGO」に使用される錫は酸化しにくく錆びにくい金属特性を持っているため、極端な温度変化にさらされなければ洗面所や台所・お風呂など水回りでの使用も可能だ。

錆びにくくシンプルな構造なので、浴室や洗面台といった水回りでもソープトレイなどとして活躍
汚れが気になった時は食器と一緒に手洗いするだけでいいので、お手入れも楽々。金属のため多少の経年変化は生じるが、それも味として楽しめる。ペースト状にした重曹でお手入れすれば光沢を取り戻すことも可能なので、好みに合わせて長く付き合っていけるだろう。

日頃のお手入れは食器と同じく中性洗剤とスポンジでOK
「KAGO」の落ち着いた質感と輝きは、暮らしのなかにすっと馴染んでくれる。やわらかな風合いながら、光があたることでゆるやかに煌めいてくれる軽やかな流線型と穏やかな銀色は、どんなインテリアのなかにあっても、さり気なく空間を彩ってくれるだろう。

曲げたり、伸ばしたり。アイデアを模索する過程は童心に返って楽しめる

装飾としても、器としても楽しむことができ、新たな使い道・形を探す楽しさを得られるのが「KAGO」の持つ魅力のひとつだ。金属らしい質感と重さを感じながら、自分の好きな形へぐにぐにと動かすのが新しい。粘土遊びのように、または折り紙のように好みの形を試行錯誤すれば、愛着もひときわだ。

時折ミシッという音が生じるため少しドキドキしてしまうが、それでも手のなかで金属を操る不思議な感覚に夢中になってしまう
手で触れているうちに己の創造心を刺激してくれるのも魅力。職人の手によって丁寧に仕上げられた滑らかな質感も心地よい。アイデア次第でたくさんの使い道と表情をみせてくれるプロダクトだからこそ、子供のころのような無邪気さと自由な発想で向き合いたい。

お気に入りのポストカードや写真を飾る。網目を生かして壁掛けにもできそうだ

作業時にはスマホスタンドとして。華奢な見た目なのに、金属製らしい頼もしさも兼ね備えている
また、同じく高岡市の錫製の食器「すずかみ」は錫を薄く延ばした板状になっており、折り紙のように曲げて使用できる。「KAGO」の持つ特性と類似する点も多く、主として皿の用途であればこちらもおすすめしたい。

楽しく、美しく多用途に「日本の伝統美」を日常に取り入れる

「KAGO」は素材そのものの特性と美しさを生かし、それを時代に合ったデザインで形にする職人の技があってこそ生まれたプロダクト。つい工芸品やブランド品は「ここ一番のときに」と奥にしまってしまいがちだが、なんでもない今日も、二度と訪れることはないかけがえのない日だ。

使われるための道具として作られたモノとしても、出番が多いほうが生き生きとしてくるはず。何より、良いものは積極的に暮らしに取り入れたほうが日々の満足度も上がってくるはずだ。

日本の歴史と技術を感じられる銘品だからこそ、大切にたくさん使っていきたい

暮らしをちょっと素敵にする。それこそが道具を使うことの醍醐味だ
「KAGO」の持つ幅広い用途と形を変える特性を生かせば、自らの想像力・創造性の幅を広げることにも一役買ってくれる。日本らしい美しさを持つ器で、不思議で楽しい体験を生活に取り入れてみてほしい。

能作 KAGO

スクエア 
S 4,950円(税込) / M 11,000円(税込)
L 14,300円(税込) / LL 55,000円(税込)

https://www.shopnousaku.com/view/category/kago