捨てられた海洋プラスチックごみを材料とし、捨てられないアイテムに生まれ変わらせるブランドbuøy (ブイ)。クラウドファンディングを実施し、継続的に海岸沿いに住んでいない人でも海洋ゴミ問題に関われる仕組みづくりを目指し、人々の心を動かすプロダクトを次々と生み出している。一目見たら心奪われるマーブル模様が魅力的なbuøyのプロダクトを紹介したい。
buøyの開発秘話
海洋プラスチックごみとして漂着しているプラスチックは、どのように美しい製品に生まれ変わるのだろうか。開発エピソードや海洋プラスチックごみについて、buøyの開発者である田所沙弓氏にお話を伺った。
「buøy (ブイ)を展開する株式会社テクノラボの本業は、IoTデバイスや通信機器の筐体を扱うプラスチックメーカーです。これまで培ってきたプラスチックへの知識を活かし、昨今話題となっている海洋プラスチックごみ問題に対しなにかアプローチが見いだせないかと技術研究を行い、クラウドファンディングを経て製品化となりました。日々産業機器等の開発に携わる中、プラスチックが環境に悪さをしているニュースを聞き、プラスチックの知識が豊富な私たちにできることはなんだろうという思いから生まれたのがbuøyです」
buøyは製品を通して日本の海が抱えるプラスチックゴミの問題を実感してもらうことを目的に活動を行っているが、啓発活動としてだけでなく、実際に使ってもらうことも重要と考えているという。捨てられていたゴミを生まれ変わらせても、すぐに捨てられてしまうような製品では意味がないためだ。より多くの人に手に取ってもらい、海の今を気づいてもらうためにも、新製品の開発や海洋プラスチックごみの使い道の模索にbuøyは日々取り組んでいる。
一つひとつ模様も産地も異なる
すべて異なる色と模様で、どの色もどの模様も目を奪われるbuøyのプロダクト。美しいマーブル模様と軽やかな石のようなテクスチャーからは全くゴミとは思えず、どこにゴミの要素があるのかを探すのが困難なほど。製品をコーティングしているフィルム以外、混ぜ物などせず海洋ごみでできており、材料はすべて着色など行わずに成形され、偶然生まれる色と模様は、回収されたそれぞれの漂着ごみそのものによって決まる。
今回紹介する「トレイM」はアクセサリーや文具、鍵などを入れる小物入れとしても使いやすいサイズ感。「トレイS」は直径9cmほどの小さな小物入れで、ピアスを入れたり、クリップを入れたりするのにちょうどいいサイズだ。「コースター」はマグカップにも最適な直径10㎝で、コップから垂れた水滴がコースターに溜まり、机を濡らしにくい設計だ。プレゼントにもおすすめのギフト箱セットも。
文房具の収納やデスク回りにピッタリのサイズでデザインされたツールトレイ、クリップトレイ、ペントレイの「leaf シリーズ」は、デスク回りにピッタリな葉っぱモチーフで、普通のプラスチック製品だと色が派手過ぎて浮いてしまうけど、なにか明るい色味が使いたい...そんなときにぴったりのアイテムだ。クリップトレイはペントレイ、ツールトレイそれぞれに重ねて使うことも可能だ。
一般的にプラスチックは、発色が良いために安っぽくみえてしまったり、インテリアに馴染まないとされてきたと話す田所氏。「しかしbuøyはたとえば『黄色』と呼んでいる商品でも偶然集まった何種類もの黄色が交じり合ってできています。そうすることで、色が濁り発色が抑えられ、木材や石などの自然物とも馴染みやすい色味になっています。また、buøyのプロダクトは色と模様の魅力が活きるようなデザインを心がけています」と話す。
また、buøyの特徴の一つとして、製品にすべて材料の漂着地が明記されている。日本各地のビーチクリーンボランティアや企業の方からもゴミが集められ、これらの材料は時期と地域を分けて管理され、製品にはすべて材料産地のシールを貼り販売している。
また、回収される地域によってゴミの内容は異なると田所氏は話している。「アジアに近い地域ですと海外製の製品が多く流れ着きます。プラスチックは販売される地域で好まれる色にデザイン/着色されるため、日本の製品とは異なった雰囲気のbuøyに仕上がります。また同じ日本内でも地域ごとに特色があらわれることもあります。例えば広島の呉ではカキの養殖に使われる道具がたくさん回収されるため特徴的な色や模様にしあがります。そういった背景を想像しながら色や模様を見てもらえると、漠然としていた海洋プラスチックごみ問題がすこしずつ現実味を帯びて感じられるかなと思います」と話している。
buøyのプロダクトを眺めながらこのゴミはどこから来ているのだろうと考えると、むやみやたらに「捨てるのはやめよう」といった気持ちに。心惹きつけられる色模様には、さまざまな側面があることを教えてくれた。
再生が難しい海洋プラスチックを生まれ変わらせる
原料となる海洋プラスチックは海水や紫外線で劣化していることや、樹脂の種類ごとの分別が困難なためリサイクルが難しいとされており、ごみの再生が難しいと言われているが、それを逆手に捉えてbuøyは作られている。
「プラスチックとひとくくりに呼んでも、実は成分がちがうたくさんの種類があります。種類によって性質も違えば、加工条件も異なります。再生面でわかりやすく言うと、それぞれ種類ごとに融点が異なるため、再生材としてリサイクルするためには種類ごとに分別し、付着物などは除去する必要がありました。しかしながら、実際に漂着している海洋プラスチックごみは破損していたり、フジツボが付着していたりと厳密に分別することは現実的に困難です。そこで私たちはプラスチックとしての機能はいくつか失うけれど、海洋プラスチックごみを材料に生まれ変わらせることによって人々の心を動かすことも重要な機能だととらえ価値を見出し技術開発してきました」と話してくれた。
buøyの材料は海洋プラスチックごみであるが、プロダクトを手に取る方にとって「環境問題に貢献したいから買う」ではなく、商品として魅力的でなくてはならないと考え、海洋プラスチックごみという新しい素材の特徴を活かした製品づくりにこだわってきたという。
本来であればプラスチックは種類ごとに融点が異なるため毎回ゴミの配合や組み合わせにより模様の出方が異なるが、テクノラボ社が編み出した製法では、さまざまな海洋ゴミすなわち複数のプラスチックの種類が混じった状態で成形する。その面白さが感じられるようこだわって技術開発していると田所氏は話していた。
ものを大切にするということ
buøyの名前の由来はブイ、海に浮かんでいる浮きが由来だという。「海に浮かんでいるブイは浮標とも言い『しるし』の役割があります。私たちのブランドは海洋プラスチックごみが現実に流れ着いていることを多くの方に伝える役割だと自負しています。この先の未来、回収される海洋プラスチックごみがどう変化するのか、できれば減っていく軌跡をしるしとして残していきたいとの思いから名付けました」
一つ一つ模様や風合いが異なるクラフト感に心を奪われるbuøy。自然界には存在しない、プラスチックゴミならではのビビットな色合いや、混ざり合いつつ完全には混ざらない模様、プラスチック同士が混ざり合って色が濁って絶妙なカラーになっていたりと、見ていて飽きない不思議なプロダクト。この小さなbuøyにはたくさんの想いや希望が込められているのであった。軽くて強く、腐食したり錆びたりしにくいプラスチック素材のプロダクトは便利で日常生活を助けてくれるものであり、なくてはならない存在だ。しかし使っているとその先のことをつい見失いがちになる。buøyはプラスチックゴミの問題を考えるきっかけやリサイクルが難しい海洋ゴミについて考えるきっかけを与えてくれた。
「ものを大事に長く使うということはゴミを減らすことに繋がります。木の製品が好き、革の製品が好きという方はいても、今までなかなかプラスチック製品が好きという方はマレでした。昨今脱プラスチックという動きも盛んです。しかし、どんな素材であっても愛着が持てる製品を購入することがまず私たちに簡単にできる第一歩だと考えています。ぜひbuøyをきっかけに自分はどんな製品なら大切に思えるか、考えながら生活してもらえたらなと思います」と田所氏は想いを聞かせてくれた。
buøyを通してプラスチック問題と向き合う
様々な色のプラスチックが個性的に混ざり合い、一つひとつ異なったオンリーワンのbuøyは特別な工芸品だ。使いやすく、なくてはならないプラスチックの価値を正しく理解し、海洋ゴミでできたbuøyというプロダクトを大事に使い続けることで、プラスチックという資源をもう一度考直すきっかけにもなるのではないだろうか。二度と同じ模様は手に入らないため、プロダクトの出会いは一期一会だ。たくさんの想いが込められたプロダクトを是非一つを手に取ってみてはいかがだろうか。
buøy
buøyトレイ-M(Φ140mm) 税込2,420円
buøy トレイ-S(Φ90mm) 税込1,320円
コースター[波紋]1枚 税込1,100円
leafツールトレイ 税込3,300円
leafクリップトレイ 税込1,430円
leafペントレイ 税込2,420円
https://www.techno-labo.com/rebirth/
CURATION BY
東京生まれ。フリーライター・ディレクター。美しいと思ったものを創り、写真に撮り、文章にする。