ポルトガルのカトラリーブランド「クチポール」。さまざまなカフェやレストラン、SNS、雑誌などで見た覚えのある方は多いのではないだろうか。筆者は8年以上毎日愛用しているがほとんど劣化せず、耐久性のみならず見た目の美しさと機能性も兼ね備え、添えるだけで料理やテーブルを引き立ててくれるGOAシリーズを紹介したい。
世界のテーブルを彩るクチポール社
クチポール社は、1920年代にポルトガル西部の街ブラガという閑静な地で家族経営の小さな会社として設立された。さまざまなカトラリーのデザインから仕上げまで、すべて自社で行っており、今日まで伝統的な技術と革新的な感覚を持ち併せた職人によってていねいに製作されている。カトラリー専門メーカーとして、脈々と伝わる技術と知識、そこから生まれたイノベーションの精神を最大限に活かし、世界中で愛されるカトラリーブランドとして、幅広い世代から人気を得ている。
人間工学に基づく繊細なカーブやフォークの長い歯など、機械では作りだすことが出来ないユニークでデザインのため、自社の職人の手で一つ一つ作り上げている。今回紹介するクチポールのアイコン的存在となっているGOAシリーズは、見事な曲線美、上品な光沢、素材の使い方・質感などが良く、21世紀のカトラリー界のスタンダードを築いたと言われている。シンプルでスタイリッシュな見た目からは想像がつかない驚きの使い心地のよさと完成度の高いデザインのカトラリーで、センスのあるテーブルを演出する。
スタンダードなGOAシリーズ以外にも、より丸みのあるフォルムのMIO、カレーを美味しく食べるためのNAU、テーブルに映えるディナーサイズのDUNA、可愛らしいサイズのALICEなど、バラエティ豊かなラインナップがあり、モーニング、ランチ、ティータイム、ディナーなど全ての食事を司るカトラリーである。
受け継がれる洗練されたデザイン
北欧などの洋食器だけではなく繊細な和食器とも相性が良く、合わせる食器を選ばないGOAシリーズ。GOAシリーズは、機能性と美しい造形のバランスのよいデザインが高く評価され、2016年には公益財団法人日本デザイン振興会のグッドデザイン賞を受賞している。ステンレスと樹脂の異素材を組み合わせた特徴的なデザインとホワイト、ブラウン、ブルー、ピンクなど16種類以上のカラーバリエーションがあり、いろいろなシーンで使い分けできるのも魅力だ。
ブラックの樹脂の柄とマットシルバーの組み合わせは、シンプルながらもテーブルを美しく飾り、ミニマムで料理を選ばない。始めてクチポールを手に取る方にもおすすめしたいカラーだ。
惚れ惚れするほどの無駄を一切排除したエレガントな曲線美は他のカトラリーでは見受けられないだろう。木目のようなマットなブラックとシルバーのクールな配色の美しさ、小枝のように細い持ち手とそれとは対照的なボリュームのあるトップのデザイン。
スプーンは満月のようにやさしい丸みを帯びており、凛とした上品なフォーク、そして楕円形の繊細なカーブが美しいナイフ。先端には目を凝らさないと見えないほどの細かな鋸歯が付いており、見た目にもこだわり抜いているのが伺える。
過度な装飾が無くオーセンティックなデザインは、器や料理に左右されずにどの料理・器にも馴染み、マットなブラックはテーブル全体を引き締めまとめてくれる。Instagramのハッシュタグではcutipolは14.7万件、クチポールは19.7万件と日本語のハッシュタグのほうが件数が多く(*2023年7月現在)、日本でも人気の高いカトラリーとして地位を築いている。
クラフトマンシップとモダニティの融合
創業当時からのクラフトマンシップを受け継ぎ、時代を超えて美しさと機能性を兼ね備え、デザインから製作、完成まで全ての工程で職人が一本一本手作業でていねいに作り上げているGOAシリーズ。毎日使用して8年以上経つが、美しい佇まいだけではなく、使いやすいのも特徴だ。
デザイン性だけを追及しただけのカトラリーは飾り物になりがちかもしれないが、オリジナリティーに溢れるラインと手作業ならではの独特なカッティングが施されたGOAは、そのデザイン性だけでなく使い心地にもこだわって作られている。
クチポール社ではオリジナルのデザインを実現するために、製造機器まで自社で作ることがあるという。機器の許す範囲でデザインをするのではなく、理想のデザインを形にするために機器を作り直す。クチポール社の追求するオリジナリティの源だ。
ポルトガルやヨーロッパのカトラリーは大ぶりなデザインが多いが、このGOAシリーズは、日本のお箸のようにほっそりとした見た目のため、重すぎず、小柄な方でも使いやすい。持ち手はゆるやかな曲線を描いているため、手に取った時にすっと馴染み、使いやすい形状となっている。
料理をより美味しく感じさせるカトラリー
GOAシリーズのカトラリーが並ぶだけで、テーブルが一気にスタイリッシュに演出され、手に取った時の軽さや細さ、美しいラインを楽しみながら、食事の気分も盛り上がる。テーブル上の限られたスペースでは、料理や器に注目しがちであるが、カトラリーは脇役ではなく大きな存在だと考える。
ステンレス(刃の部分)と樹脂(柄の部分)の異素材のため、軽く持ちやすく、一見細い見た目の柄は、吸い付くように手の中におさまり、金属の絶妙な重みが心地よく、食べ物を切ったりすくったりする動作をスムーズにし、さらに使う人の所作まで美しく見せてくれる。
口から抜いた後にスプーン上に料理が残らなく、ナイフもスッと切れやすく、フォークもしっかりと料理を抑えてくれる。カトラリーによってこんなにも食事の快適度が変わるのか大きな衝撃を受けるほどである。一口の満足感が、全然違うのだ。料理と自身の体を媒介するカトラリーは、その媒介をなくし、口への入れやすさ、口当たりの良さがナチュラルであり、カトラリーが体の一部となったような感覚にさえなる。
食べ物を口に運ぶために欠かせないカトラリーを、好みに合わせて上質なものに変えるだけでも、食事をより楽しいものにすることが可能となる。お気に入りのカトラリーを揃えると、料理にもこだわりたくなり、テーブルコーディネートも楽しみたくなる。
特別な日から日常まであらゆるシーンで活躍
慣れてしまうともう他のカトラリーには戻れないと言っても過言ではないほど優れたカトラリー、クチポールGOA。見た目の美しさ、フォルム、重みなど全てがしっくりくる。機能性に優れ、器や料理を選ばず、使う人も選ばない。
カトラリーは必需品ではあるが、使えれば良い。しかしなんとなく買ってしまったカトラリーを揃え直したいと思っていた方や、美しいもの、テーブルコーディネートに映えるもの、一生使えるものをお探しの方にはクチポールGOAシリーズをおすすめしたい。
Cutipol GOA black Silver シリーズ
CURATION BY
東京生まれ。フリーライター・ディレクター。美しいと思ったものを創り、写真に撮り、文章にする。