姿かたち、用途は違えど “いいもの”は私たちの感性を育ててくれる。日常で使うミニマルな要素を持ったアイテムは、いつの時代も変わらず魅力的だ。今回フォーカスを当てるのはMD PAPER PRODUCTSの「MDノート」。70年近くの歴史を持つ日本の文房具メーカーである株式会社デザインフィルが擁するブランド「ミドリ」が、書き心地にこだわり独自に開発した筆記用紙「MD用紙」を使用。余計な要素をそぎ落とし、最大限書くことを愉しめるノートである。そんなミニマルなアイテムが持つ、奥深い世界をのぞいてみよう。
本棚に並ぶ姿から感じる、さりげない存在感
ディテールを見れば見るほど、こだわりが見えてくる白いノート
「MDノート」、またの名を「ミドリノート」という。ノートの外側には薄くてパリッとした質感のパラフィン紙がカバーとして巻かれ、昔の文庫本を思い出させる。
パラフィン紙を取ると、クリームがかった色のノートの本体が出てくる。表紙の紙は厚く、背は角ばっていて、手に取ってもしなることはほとんどない。
よく見れば、ノートの小口(切り口)側にロゴマークが空押しで刻印されていることがわかる。一見するとシンプルな白いノートだが、そのディテールには様々なこだわりが見えてくるノートなのだ。
機能性とデザイン性。双方の力を発揮する製本方法
ノートの背には、寒冷紗(かんれいしゃ)という網状のテープが巻かれていることに気がつく。寒冷紗は「糸かがり製本」といって、4枚の紙を半分に折り16ページにした紙束の背を、糸でかがって本にする時に使われるものだ。
この製本方法を用いることで、どのページで開いてもフラットに開くことができ、手で押さえたり、しっかり折り目をつけたりしなくても、スムーズに書くことができる。さらに丈夫さも兼ね備えた機能性の高いノートだ。
糸かがり製本が施された角背の本の寒冷紗は、通常表紙で覆い隠されるものだ。しかし 「MDノート」は寒冷紗がむき出しになっている。表紙をつけないことでノートの背部分の可動域を広げ、書き心地をさらに良くすると共に、デザインのポイントとしても成立している。寒冷紗特有のザラザラとした触感もたまらない。
1ページ目のしっかりとした質感の厚手の紙をめくると、次のページには印刷が施されている。中央に配置された枠線の中には、タイトルが書き込めるようになっている。
中紙には、ミドリが1960年代からオリジナルで作り、現在も品質改良を重ねている「MD用紙」が使われている。MDノートの中紙の種類は、無罫・横罫・方眼罫の3種類。なかでも無地のノートは、思いついたアイデアを書き記したり、2ページに渡って自由に絵を描いたりしたい時にもおすすめだ。
触ってみると、普段使うノートよりも少し厚みがある印象。この「MD用紙」は、元々ダイアリー用紙として作られたもので、書く音も美しく聞こえるほどの書き心地の良さだ。にじみや裏抜けもしにくいのも大きなポイントである。
またノートは完全に白で統一されているわけではなく、しおり紐に色を取り入れて、デザインに遊び心を持たせている。
本棚に並ぶ姿から感じる、さりげない存在感
「MDノート」を本棚に置いてみる。すると特に文字が書かれているわけでもないのに、寒冷紗とカラーのしおり紐の影響で、さりげなくも個性的な表情を持っていることがわかる。書斎でふと目を上げた時、手にとって何かを書き記したくなる。そんな存在として「MDノート」は機能してくれるはずだ。
一方パラフィン紙を巻くことで、寒冷紗とカラーのしおり紐の存在感をうっすらと隠すこともできる。お好みでパラフィン紙を取るか、巻くか。使い方は人それぞれだが、汚れが気になるという方はパラフィン紙を巻いたまま使うのもいいだろう。
「MDノート」は2008年に登場してからというもの、その使い勝手の良さから10年以上に渡って多くの人々から支持を得てきた。
最初のページから最後のページまで、描き心地の良さは変わらない。そして描き終わった後も読み直せる思い出の一冊として、本棚に保管しておくこともできる。用紙の良さを伝えるために余計なものをそぎ落とし、ミニマルを追求した結果、ノートとしての可能性がさらに広がることに繋がっている。
使用シーンは日々の日記、旅先でのスケッチ、仕事でのアイデア出しなど様々。「MDノート」は日常のあらゆる場面で使うことができるだろう。
このミニマルで美しいアイテムを、これからの生活に取り入れてみてはいかがだろうか。
今回紹介したアイテム
MD PAPER PRODUCTS「MDノート」
A5 無掛
¥800(+tax)
文庫 無掛
¥600(+tax)
CURATION BY
フリーライター・エディター。専門はコミュニケーションデザインとサウンドアート。ものづくりとその周辺で起こる出来事に興味あり。ピンときたらまずは体験。そのための旅が好き。