Vol.318

MONO

04 MAR 2022

炊きたての美味しさをもう一度。かもしか道具店「陶の飯びつ」

美味しいものを美味しく食べたいと思うものの、時に難しい場合もある。例えばご飯。炊きたてに比べ、残したご飯を温め直すとその味にがっくりしてしまう。残り物も美味しく頂く、それだけで食事の充実感はぐっと増すはず。温め直せば炊きたての味をもう一度味わえる、かもしか道具店の「陶の飯びつ」で食生活をより豊かにしてみたい。

自炊のモチベーションが下がる時

毎日自炊を心掛けてはいるが、時折そのモチベーションが下がることがある。作りたいメニューが思い浮かばない、ただ単に料理する気が起きない等理由は様々だが、そのひとつに残り物を食さねばならぬ時、調理も食事もテンションが大きく下がる。

作った料理をその日のうちに食べきることはなかなか難しく、カレーなどの大鍋料理は翌日から続けて食卓に上ることもしばしばだ。最後まで美味しく食べられればいいのだが、やはり出来たてには叶わない食材がある。その筆頭に挙げられるのが、炊きたてご飯ではないだろうか。

和食の中心を担うご飯。炊きたての味は格別なもの
しっとりと水分を含み、艶やかで甘味を含んだ白米は、炊きたてと残り物では味に大差が出てしまう。残った場合はラップに包んで冷凍するが、温める度に捨てられるラップを見るのもこの時代に心苦しさを感じてしまう。

そんな時に耳にしたのが、残り物のご飯も温めれば美味しくなるという陶器製のおひつの存在だ。江戸中期に始まり、強度と耐熱性に優れている萬古焼産地として知られる三重県三重郡菰野町。ここを拠点とする山口陶器が立ち上げた産地ブランド、かもしか道具店の「陶の飯びつ」を取り寄せてみることにした。

ご飯1合分の「こぶり」は高さ11cm、直径12cmと一人暮らしにぴったりなサイズ。他に1.5合分用の「ふつう」、黒・白・茶の3色が展開中

加齢や生活習慣で衰えていく味覚を再び研ぎ澄ます

おひつを購入するにあたって、悩んだことがひとつある。ラップで包んだものとおひつに入れたご飯では、そこまで味が違うものなのか。そしてそれを判別できる味覚を自分は持っているのだろうかということだ。稀にワインやウィスキーのテイスティングの機会があると、本当に味が分かっているのかと不安に思う事もしばしばなのだ。

もっと味覚がシャープであれば良いのにと思う事も多い、蒸留所でのテイスティング
味覚とは人間に備わった五感のひとつ。舌の表面には味を感知する味蕾(みらい)があり、これが甘味や塩味、酸味や苦味、そしてうま味を感じることができる。これらの味が混じり合い、香りや食感といった情報も脳に伝達されて人は「美味しさ」を認識しているのだ。

だが乳児には約1万個ある味蕾は歳とともに減少し、70歳を超える頃には約半数になっているという。そして加齢だけではなく食生活や生活習慣も味覚に大きな影響を及ぼしている。

塩や砂糖、脂肪を多く含んだ食材や味の濃い加工食品を摂り過ぎたり、調味料の過剰使用によって味覚は鈍くなっていく。舌の感覚を麻痺させるほどの辛い料理は味覚障害を引き起こす。

味を引き立たせる調味料。だが過度の使用を続けていると味覚が衰えていく
しかし味覚は再び取り戻すことのできる感覚でもある。糖分や塩分の量を減らし、食材を活かすよう味付けは薄めに、良く噛んで食べる、亜鉛を多く摂る、舌ブラシを使って舌を清潔に保つ等、どれも今すぐ始められることばかりだ。

味覚を鋭敏にすれば繊細な味の違いも認識できるようになる。食に対する意識を変え、それらをサポートしてくれるキッチンツールを駆使してみる。味覚の向上は自分らしい暮らしを送るための大切なエッセンスとなるはずだ。

炊きたての味を再現。かもしか道具店「陶の飯びつ」

今回選んだかもしか道具店の「陶の飯びつ」は、すらりとしたスリムなフォルムが特徴的で、食卓でおひつとして出しても映え、保存容器として使う時はスペースを取らないところも嬉しい。和食にも洋食にも合わせやすいシンプルなラインで、どんぶりものや麺類を入れる器としても楽しめそうだ。

すっきりとしたラインでおひつ以外でも活用できる
陶器のおひつで保存したご飯が温めて美味しくなるのには、米が持つ水分に理由がある。炊いたご飯の水分は湯気となり蒸発していくため、水分の減ったご飯を温め直しても炊きたての味には戻らない。

その点陶器製のおひつは米から出る余分な水分を吸い取り、あるいは保湿したりと調湿が可能。美味しさをキープしたままで保存し、レンジで温めると水分が戻って美味しいご飯になる。

「陶の飯びつ」の蓋の裏側は、水分を調節できるよう素焼きとなっている
炊いたご飯をおひつに移し、残ったらそのまま保存し次の機会に温め直す。残ったご飯をラップで包み、冷凍保存し再び解凍、茶碗へ移すという方法に比べると格段に手間が省け、ラップの使用量もぐんと減るはずだ。

お米をより美味しく、食卓を美しく彩る飯びつ

早速活用してみるべく、温かいうちにおひつに入れたご飯を冷ましてから冷蔵庫で保存してみる。翌日はおひつごとレンジで温め、おかずとともに食卓へ。テーブルに置いた瞬間から「美味しそう」と思えてくる。

そして実際に食べてみて驚いた。水分はほどよい加減で、炊き立てのようにふっくらとした甘味を含んだ味。いつもの冷凍ご飯のようにパサついていたり逆に水分が多めだったりということもなく味わえる。

見た目、味、食す気分。全てが炊きたてご飯と同じように味わえる
これならば少し多めにご飯を炊いておき、次の食事はおかずを作るだけと、少し楽をするのも良いだろう。冷めても美味しいご飯なので、お弁当にも向いている。何より食す気分が全く違う。「残ってしまった昨日のご飯」というネガティブなものから「おひつに入った美味しいご飯」へ進化している。ご飯を炊くのも残すのも、これからは躊躇する事もなく、お米を更に美味しく食べられそうだ。

「残り物」から「美味しいご飯」へ。食の意識を変えていく

味覚は人生において喜びを与えてくれる大切な感覚のひとつ。しかし食事は毎日行う行為である故、おざなりになりがちでもある。面倒だから、手軽だからという理由から、巷に溢れる味の濃い加工食品を食べ続ける暮らしを送るのは実に簡単だ。

だが放っておけばどんどん退化してしまう味覚を鋭敏にするためには、自身で律していかなくてはならない。調味料や食材に気を使い、味を高めてくれるキッチンツールを利用する。美味しい食事は幸せな記憶となり、暮らしをより豊かにしてくれるはずだ。

食事の時間を充実したものに。「陶の飯びつ」がその手助けをしてくれるはず
さあ、そろそろ食事の支度を始める時間。今日のメニューは何にしようかと、おひつに入ったご飯を中心に合う食材を考える。炊き立てと変わらぬ味の美味しいお米と一緒に、ささやかな幸せを噛み締めてみよう。いただきます、と美味しさが増す言葉をひと言添えて。

かもしか道具店 | 陶の飯びつ