模型にディテールを与え、造形の可能性を探っているブランド「テラダモケイ」。プラモデルのようだが全て紙で作られており、簡単に模型を組み立てていくことができるユニークなプロダクトだ。今回90種類以上のバリエーションがある「1/100建築模型用添景セット」から2つのシチュエーションをセレクト。実際に組み立てながら、1/100の世界の魅力を見つけていこう。
1/100で俯瞰する。建築模型の世界
模型とはそもそも、何かしらの実物に似せて作られたものだ。地球儀のように巨大なものを小さく、DNA構造の模型のように極小のものを大きくした模型もあり、人体模型のような原寸大の模型もある。これらの学術的な研究や教育目的で使われる模型以外にも、鉄道模型のように制作やコレクションを楽しむ模型もある。そして建築模型の場合は、まだない建物や街並みの完成イメージを共有するといった目的で作られている。
建築模型は一般的に1/50や1/100のスケールで作られることが多い。特に1/100は、建物全体やシチュエーションを俯瞰しやすいサイズまで小さくし、デフォルメしながらも、人や動物、ものの違いが判別できる適度のディテールを残せるスケールだ。さらに全体とディテールのバランスを考えながら、「添景」と呼ばれる人々や周辺の風景を作り込んでいくことで、模型の世界に臨場感を生み出すことができる。
このように、本物の要素を詰め込んだ建築模型を見つめていると、その中で生まれる暮らしや人々のコミュニケーションの想像が膨らんでいく。そこが建築模型のおもしろさである。
模型を作り、想像を楽しむ。テラダモケイのプロダクト
そんな模型の魅力を手軽に楽しめるアイテムが、テラダモケイの「1/100建築模型用添景セット」だ。このプラモデルのように加工された紙からパーツを切り取り組み立て、さまざまなシチュエーションの模型をつくり上げていくことができる。このアイテムをデザインしたのが、テラダデザイン一級建築士事務所 主幹の寺田尚樹氏だ。彼は建築家として毎日のように建築模型を作るなかで、建築模型を魅力的に見せるために添景の存在が非常に重要であると気づいたそうだ。そんな添景をより効率的に作るため、プラモデルのような組み立てキットアイテムを作り始め、今や90種類以上にも及ぶ人気シリーズとなった。
そのバリエーションは豊富で、スタンダードな「住宅編」や「公園編」以外にも、「東京編」や「ニューヨーク編」などの都市をテーマにしたもの、「お花見編」や「クリスマス編」などのイベントをテーマにしたものなど、多岐にわたる。ぜひ「この光景をつくって、見てみたい」とワクワクするセットを選んでみよう。
今回筆者が選んだのは、「1/100建築模型用添景セット」シリーズの、「No.34 バンコク編」と「No.75 スポーツクライミング編」の2種類。バンコク編は、なかなか海外に遊びに行くことができない今だからこそ、少しでも海外旅行気分を味わいたくて選んだ。
スポーツクライミング編は、カラフルなパーツがかわいらしかったので選択。もちろん、このまま眺めているだけでも十分かわいらしい。しばらくは作らずに飾って楽しむというのもいいだろう。
パーツを切り出し、組み立てる
それではさっそく模型をつくりはじめよう。道具は定規、カッター、ピンセット、ボンドのほか、カッターマットやボンドをつけるための爪楊枝などを用意しておこう。
作り方も非常に簡単だ。パーツは基本的にシンプルな構造なので、公式サイトの完成形画像を参考にすれば簡単に組み立てることができる。複雑なパーツについては、パッケージの裏に作り方が記載されているので安心。切って、折り目に切れ込みを入れ、折り、ボンドでとめて、組み立てる…。細かい作業を繰り返していくうちに、いつの間にか制作に没頭していた。
慣れてくると、作業が効率的になってくる。パーツに対しても徐々に愛着が湧き、気に入ったパーツをどのように配置するか考えることも楽しい。いつの間にか大量のパーツが出来上がっていた。
パーツを配置し、風景を楽しむ
ひと通りパーツを作り上げたら、配置を試行錯誤して風景をつくっていこう。まずはスポーツクライミング編だ。セットの内容は基本的に人物やホールド、タイマーなどのパーツのみ。背景となるウォールは、テラダモケイの公式ホームページで「クライミングジム」「リード」「ボルダリング」「スピード」から選び、型紙をダウンロードして作ることができる。今回はボルダリングを選んだ。
このように、パーツを置くための土台や背景、配置やライティングなどを工夫することで、風景の中に物語が生まれ、模型の魅力がさらに引き立つ。カメラをマクロモードにして撮影すれば、小さな模型の世界に臨場感を持たせることができるだろう。
続いてバンコク編では、バンコクで行ってみたいスポット・カオサン通りをイメージした風景を作るため、厚紙で道路を作り、そこにパーツを配置していった。
パーツづくりで特に力を注いだのが、トゥクトゥクだ。これに関しては組み立て方法が複雑だったが、その分ディテールが絶妙に表現されている。
トゥクトゥクに人を入れるときも、「この人は運転手で、後部座席に乗せるのは観光で訪れている中年夫婦。屋台を楽しんでホテルに帰ろうとしていることにしよう」と妙に細かい設定を考えている自分がいた。
モノを置き、人物に動作をつけて配置していくと、1/100の世界の物語が一気に動き出す。「きっとこんな会話をしているのだろうか…」「タイのラーメン屋台はこんな感じだろう」「屋台のおばちゃんは呼び込みがすごい設定にしよう」と想像を膨らませながら、模型の人々の間で生まれるコミュニケーションを想像し、想像の中で旅を楽しむことができた。
想像の余地を作り、楽しむことで自分のワクワクを見つけよう
実際に作ってみると、1/100スケールの模型にはたくさんの「想像の余地」があることに気が付く。想像を膨らませながら作業に没頭する時間はあっという間で心地がよく、仕上げたときは充実感と達成感で満たされる。いつか行ってみたい場所、懐かしい光景、クスッと笑えるシチュエーションなど、「1/100建築模型用添景セット」で想像を広げられる方向はさまざま。作業を通して、自分の中に隠されていた好奇心や幸せのかたちを再発見してみよう。
今回紹介したアイテム
テラダモケイ「1/100建築模型用添景セット No.34 バンコク編」
テラダモケイ「1/100建築模型用添景セット No.75 スポーツクライミング編」
各¥ 1,500 (+tax)
https://www.teradamokei.jp/catalog/
CURATION BY
フリーライター・エディター。専門はコミュニケーションデザインとサウンドアート。ものづくりとその周辺で起こる出来事に興味あり。ピンときたらまずは体験。そのための旅が好き。