私の自慢の花器
詳しくは後述するがフィンランド生まれの花器で、北欧デザインらしい優しい丸みと、澄んだ空気のようなガラスの表情が魅力的だ。間口が広く、写真のようにバサッと花を生けるのにも向いている。簡単なのにサマになるのが嬉しい。
花器の名品として、雑誌等で目にしたことがある方も少なくないだろう。実際私も、アアルトベースを初めて見たのは、確か何かの雑誌だった。インテリアやファッションに興味を持ち出した少女の頃、名前も知らないような洒落た花が無造作に生けられ、独特の曲線に首をもたげる様子に、私はあっという間に引き寄せられてしまった。
以来「理想の暮らし」のイメージの一端にその花器はあったのだが、約3万円という学生には高価な価格帯と、実家暮らしを言い訳にすること数年。憧れの花器は、親友たちからの、とびきり気の利いた結婚祝いとして、私のもとにやってきてくれた。自分のための特別な花器を手にしたのは、これが初めてだった。
実は私は、アアルトベースとの暮らしの中で、あえて花を飾らない楽しみを見つけてしまった。実際、我が家のアアルトベースに、花はしばらく生けられていない。折角の良い花器なのにと思う方もいるかもしれないが、私はこの楽しみを見つけたことで、暮らしを味わう余裕がうんと広がった。
「花を生ける」を、おまけにする。そんな花器によって得られた豊かさについての話に、この先お付き合いいただきたい。
約80年前フィンランドで生まれた、時を超えるデザイン
およそ80年前にデザインされたという事実に、あらためて驚く。今もなお新しく見えるその普遍的な美しさは、一体どこからくるのだろうか。
アアルトベースの時を超えた美しさのヒントは、このモチーフにあると、私は考える。
私たちは、その流れるような有機的なデザインに、自然の美しさを見出すことができる。湖や白樺の断面に限る話ではない。枝葉が太陽へと向かうしなやかな曲線や、蕾のやさしい丸み、波のうねり、雨上がりの水たまりのかたちなど、どんな些細なものでも。
そしてそれら自然の美しさは、この花器が生まれた1936年も、現在も、そして未来においても、きっと私たちを癒し続けるのだ。自然の美しさは、廃れることはない。この地球において、昔も今も変わらない、最もすぐれたものの一つではないだろうか。
私がアアルトベースに、あえて花を飾らない楽しみを見いだすことが出来たのは、花器自体が、花に通ずる美しさを持っているからかもしれない。
こうして私は、「花を生ける」をおまけにした
そして私は、花を生けないことに後ろめたさを感じつつも、しばらく空の花器を棚に飾り、時折磨いていたのだが、あるとき気が付いた。それだけで美しい花器なのだから、「花を生ける」ことを目的としなくてもよいのではないかと。自分次第で、もっと色々な楽しみ方ができるのではないだろうか。
晴れの日、水だけ入れて、陽のあたるところに置いてみた。キラキラと揺れるカーブが美しく、それだけでじゅうぶん視覚を楽しませてくれた。
見たり、眺めたり、磨いたり、生けたり。それらは忙しい毎日のなかで、ちょっと足を止めて、静かに考え事をするきっかけになる。そんな時間の中で「ああ、今日の私はこんなことを考えていたんだ」なんてことに、ふと気付けたりする。それがちょっと落ち込むことでも、物の美しさに、気持ちがすこし救われる。
よい話し相手というには大げさかもしれないけれど、そんな懐の深さを、私はこの花器に感じている。花器という概念にとらわれて、「花を生ける」ためだけにアアルトベースを使っていたら、私はこんな時間を持てなかったかもしれない。
アアルトベースが持つ、花と対等の魅力
やや逆説的かもしれないが、私はこれらの楽しみを、花器が「花を生ける」ということを完璧にこなすからこそ持てる楽しみだと考えている。
私が思うに、アアルトベースは自然に通ずる美しさを持っているが故に、花とどこまでも対等だ。ふつう花器とは、控えめで、花を引き立てるような存在なのではないだろうか。
それに対してアアルトベースには、自立した美しさがある。花に媚びない余裕があるからこそ、花を生けた時に、互いを最大限引き立て合うことができるのだ。
そこに花を生けるとき、波状の淵に沿って広がった花々はまるで踊っているかのように、より愛らしく見える。花の魅力を助長させるような力が、この花器にはある。
「花を生ける」ことも含め、私はこれからも、アアルトベースを様々な角度から楽しみたいと思う。
アアルトベースは私にとって、自慢の「花器」なのだから。
新しい考え方をくれるアアルトベースを、あなたの生活に
道具としてではなく、暮らしを味わうための嗜好品としての花器を、選んでみよう。「花を生ける」をおまけにしてしまうような、すぐれた花器。日常に取り入れることで、あなたらしい毎日を、より一層愛せるようになるかもしれない。
アルヴァ・アアルトコレクション ベース 160mm レイン
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