Vol.48

MINIMAL

05 JUL 2019

最小限の要素から生まれる多様性。「Minimal」で知るカカオの新世界

コーヒーやワインのように、チョコレートを嗜好品として味わう。そんなチョコレートの楽しみ方に“新しい彩り”を提供してくれるブランド、「Minimal -Bean to Bar Chocolate-(ミニマル)」をご存知だろうか。カカオのセレクトから、板チョコレートができるまでの全工程を自社工房で一貫して行う、日本初の“Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)”専門店だ。
聞くところによると、「Minimal」という店名にはチョコレートの最小限の要素=カカオへの強い思いが込められているのだそうだ。使われる素材も、カカオと砂糖のみというミニマルな構成。

一体どのようなこだわりを持ってチョコレートを作っているのだろうか。今回は、東京都渋谷区・富ヶ谷の「Minimal」本店を訪問し、ブランドマネージャーである田淵 康佑(たぶち こうすけ)さんに話を伺った。

富ヶ谷本店の内観。カウンターを設け、店内ではチョコレートドリンク(テイクアウト可)やスイーツなども提供。

日本でムーブメントを牽引するBean to Bar専門店

「Minimal」が販売する板チョコレート。左から「SAVORY」「FRUITY」「NUTTY」 各1,404円(税込)
Bean to Barはアメリカで始まり、2010年以降、日本にも広がったチョコレートの新たな生産スタイルのこと。

従来のチョコレート作りは、製菓用のクーベルチュール・チョコレートを仕入れ、それに生クリームやカカオバター、香料といった素材を加えることで味を生み出す“足し算”の製法が一般的だった。しかし、Bean to Barは、その工程を一から見直し、原料であるカカオの果実感やスパイス感といった個性にフォーカス。単に甘い、苦いだけではない、チョコレートの多様なテイストを味わえることで知られている。

また、カカオの品種や産地の違い、作り手のこだわりといった観点からチョコレートを楽しめる点も大きな魅力。コーヒーやワイン、ウィスキーのように、チョコレートは新たな嗜好品として捉えられ始めている。

「Minimal」は、そうしたBean to Barチョコレートの流行を一時的なブームではなく、食文化の1つとして根付かせることに挑戦しているブランドだ。「Minimal」がチョコレート作りで使用するのは、カカオと砂糖のみ。同店ではこれを“引き算”の製法と呼び、添加物を加えず、カカオの味を最大限に際立たせることに力を注ぐ。2014年の創業以来、ムダのないシンプルなパッケージや洗練された板チョコレートのデザイン、カカオにこだわった豊かなテイストで注目され続けてきた。その名前に憶えがある方もいらっしゃるだろう。

チョコレートはカカオの多様性を伝える手段

「Minimal」ブランドマネージャー 田淵康佑さん
「Minimal」がスタートしたのは、ブランドの代表・山下貴嗣さんが、カカオ豆から手づくりされた一片のチョコレートと出会ったのがきっかけ。食べてみると、見た目は普通のチョコレートでも、味はまったくの別物。今まで食べたことのないフルーティな味わいに驚かされると同時に、そのカカオ豆本来の味を活かした美味しさに、強く心を動かされたという。

田淵さんは、「Minimal」のチョコレート作りについて、「私たちは、甘くて口溶けのいい、いわゆる“チョコレートらしい美味しさ”を追い求めているわけではありません。引き算の製法で作るチョコレートを通じて、カカオが持つさまざまな風味、多様性を打ち出していきたいという気持ちが強いですね。チョコレートは、カカオの面白さを伝えるための“手段”とさえ言っていいかもしれません」と語る。

店頭では試食も可能。味を比べてお気に入りの1枚を選べる。
店頭では、ローストナッツのような味わいの「NUTTY」、ミックスベリーのような風味を楽しめる「FRUITY」、ドライミント系のスーッとした清涼感がある「SAVORY」といった板チョコレートを常時7〜8種類ほど展開。使用しているカカオの産地や品種は異なり、各フレーバーの特徴が商品名になっている。

いくつか試食させていただいた中で、特に印象的だったのがオレンジ地に白文字のラベルの「FRUITY」。チョコレートらしい甘みはかなり控えめで、カカオのコクを強く感じる。そして、それ以上に存在感を発揮しているのが、後味に残るミックスベリーのようなスッキリとした酸味。噛むたびに芳醇な香りが立ち上がり、「本当にカカオと砂糖だけの味?」と驚くほどだ。

こんなにもカカオ豆の風味に個性があるのならば、コーヒーやワイン好きの方が、産地や年代、銘柄にこだわるように、カカオにこだわってチョコレートを選ぶ…そんな嗜み方も十分ありだろう。

筆者自身、「カカオといえばガーナ」くらいのイメージしかなかったのだが、カカオは世界60ヶ国以上もの赤道直下の国々で生育しており、もちろん産地によって味は全く異なる。「Minimal」はキャラの立った個性的な味を求めて、アフリカ、アジア、中南米といった世界中のカカオ農園を定期的に訪問し、出来る限り自社でカカオの買い付けまでを行っているのだという。

カカオを料理する

店頭に展示されていた、カカオ豆とカカオの実(カカオポッド)
さまざまな風味を持つカカオ。では、それを際立たせるために、「Minimal」はどのような工夫をしているのだろうか。田淵さんの話の中で印象的だったのは、「チョコレート作りは、カカオを料理している感覚に近い」という話だった。

何かの食材を使って料理をする場合、生で提供したり、焼いたり、炙ったり、熟成させたりと、素材の状態によってベストな調理方法を考える。それと同じように、「Minimal」ではカカオが持つ個性を見極めて、豆の挽き方/焙煎する温度/砂糖の割合を調整している。

例えば、果実感が強い豆は、酸味が揮発しないように低い温度でじっくりロースト。後味に広がるコクが特徴的な豆は、あえて高温で酸を飛ばして香ばしさを際立たせるといった具合だ。品種や産地が同じカカオでもシーズンや仕入れる麻袋によって風味に微妙な違いがあるため、例に挙げたようにレシピを臨機応変に変えているのだという。

じっくり風味を味わえるように細かく割れるグリッド入り
「Minimal」のチョコレートは全般的にザクザクとした食感が特徴的だが、これもすべてはカカオの風味を活かすため。風味が摩擦熱と酸化で弱まることを避けて、カカオをペースト状にすりつぶす作業時間をかなり短くしている。

このほかにも、風味を感じやすいように板チョコレートを細かく割れるデザインにしたり、開封後も香りを維持するためジッパー式のパッケージを採用したり...。細かな工夫を挙げればキリがない。

データでチョコレートを深く知る

パッケージ表面のレシピカード
チョコレートを嗜好品として愛する方々を増やすため、板チョコレートのパッケージにもある仕掛けが施されている。それが、フレーバーやカカオの産地が書かれたカードだ。

田淵さんは、「カードに書かれた情報が、自分好みの製法を知ったり、チョコレートを深掘りしたりする1つの入り口になれば嬉しいですね」と話す。

確かにカードを読めば、豆の産地やカカオ濃度、豆の挽き方、ローストした時間・温度といった情報を確認でき、別のチョコレートとの風味の比較もしやすい。

店内に置かれたイベント告知ボード
富ヶ谷本店をはじめとする各店舗では、ワークショップや体験イベントをほぼ毎週のペースでやっている。参加者は男性も女性も、1人で参加する方もいればグループで参加する方もいるそうだ。お菓子作りの経験がない方からパティシエの方まで、スキルを問わず楽しめる。

例えば、人気の『カカオ豆からの手作りチョコレートワークショップ』は、参加者からも「自分で作ったできたてのチョコレートは、とてもフレッシュでより一層おいしく感じる」と好評だそうだ。体験イベントのテーマも様々で、過去には『カカオとチョコレートがある朝食』という、ヨーグルトをベースにグラノーラやフルーツを参加者が自由にトッピングできるイベントや、『チョコレートを日本酒と楽しむ』というテイスティングイベントも開催された。

「Minimal」のチョコレートの魅⼒を知らない⽅はもちろんのこと、すでにご存知の⽅も、これらの体験を通して、新しいチョコレートの世界を知ることができるだろう。

Minimal - 富ヶ谷本店

住所:東京都渋谷区富ヶ谷2-1-9
電話:03-6322-9998
営業時間:11:30-19:00
定休日:なし
公式サイト:https://mini-mal.tokyo/
Twitter:https://twitter.com/Minimal_tokyo
Instagram:https://www.instagram.com/minimal_beantobarchocolate/