ニューノーマルなライフスタイルが確立しつつある今、静かなルーティン化した生活が続き「ワクワク」「うきうき」といった心踊るような気持ちが減ってしまった方もいるのではないだろうか。そんな日常にささやかな高揚感をもたらしてくれる「イロドリチョコレート」を紹介したい。
こだわりぬいた色・味・香り
イロドリチョコレートはその名が示す通り、彩り豊かなチョコレート。二つの味が一枚で楽しめる板チョコで、味もカラーもグラデーションになっている。
イロドリチョコレートの原料であるカカオは、インドネシアのスラウェシ島にある農家で栽培されており、そこで調達したカカオから独自配合のホワイトチョコレートを作り、フルーツやお茶、塩などといったすべて自然由来のもので色・味・香りを表現。
「萌黄(もえぎ)」「紫陽花(あじさい)」「蒼海(そうかい)」「紅葉(こうよう)」「夜風(よかぜ)」などといった日本の季節を感じる事象や自然物を表した色彩豊かな色で、全部で12種類のラインナップ。
スパイシーさが特徴の月桃とコクのある天然塩をミックスした「蒼海」は、着色料を使わずに、深く広がる夏の蒼い海を表している。海に飛び込みたくなるような暑くてじめじめした今の時期にぴったりの、爽やかな色味のチョコレート。
「紅葉」はその名の通り、黄から赤に美しく染まっていく芸術的な秋の木々が表現されている。栄養価が高いと言われる真っ赤な野菜のビーツと、ほんのり甘い栗の味、ラム酒の香りのハーモニーが楽しめる。
刺激的な辛味とほのかな木の香りがする黒胡椒と、胡椒の辛味に負けない酸味と風味を持つ柚子を組み合わせた「夜風」。甘さと塩辛さが織りなす絶妙なバランスが癖になる。凛とした空気が漂う真冬の深夜から明け方にかけてを表現しているような、黒とグレーのグラデーションが美しい。
他にも、新茶×マンゴーの味の「萌黄(もえぎ)」は、春に萌え出る草の芽をあらわす色をチョコレートで再現。今の時期に咲く「紫陽花(あじさい)」はラベンダー×ブルーベリー味で、梅雨の雫で輝く紫陽花の華やかな色を表している。このように様々な珍しい色味と豊かな味わいを楽しめる。
パッケージもチョコレートと同じグラデーションのデザインになっている。漢字の読み仮名をそのまま平仮名で表記し、それぞれの名前が印象的に表現されている。
リトルマザーハウスが提案する、ワクワクを形にしたチョコレート
イロドリチョコレートを販売している株式会社マザーハウスは、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもと、途上国にある素材や技術、人々の可能性に光をあてバッグやジュエリー、アパレルなどを制作している。イロドリチョコレートの魅力について広報担当の小田氏と會田氏からお話を伺った。
「コロナ禍の自粛生活において、バッグや服、ジュエリーなどを身に着ける機会が減ってしまっても、日々を豊かにするようなアイテムをつくる」という想いを込めて、ファッションの企業だからこそできる工夫を凝らし、自宅にいても目で見て楽しめるカラフルなチョコレートが出来上がったという。
マザーハウス社は、2006年にバングラデシュの伝統的な素材であるジュート(麻)でバックを作ることからスタートした。持続可能な生産体制を確立するために、現地に自社工場・工房を設け、生産からユーザーへ届けるまで全て自社で行っているという。天然素材を用いて作ったストールや洋服をはじめとするアパレル商品をネパールやインドで、伝統技術を用いたジュエリーをインドネシアやスリランカ、ミャンマーにてものづくりを行っている。
今年初めには、食にフォーカスしたブランドとして、イロドリチョコレートを販売するリトルマザーハウスが誕生した。それぞれの国や地域ごとにある魅力的な素材の可能性に光をあて、それぞれの地域の文化や生活様式に合わせた生産方式を取り入れている。
生産から販売までの透明性の確立
我々の身近な存在であるチョコレートだが、カカオ産業の背景には貧困やフェアではない取引、環境破壊などといったさまざまな社会問題があるのも現実である。そんな問題に対して、マザーハウス社は今回のイロドリチョコレートを誕生させる上で「生産から販売までの透明性を維持することは、絶対に外せないポイント」だったと話す。
「カカオ生産者と、カカオを用いた加工品の消費者は本来身近な存在でなければなりません。しかし、市場に出回る多くのカカオには、いまだに生産者の顔が見えないものもあります。『途上国の可能性を、ものづくりを通じて世界中のお客様に届ける』ことを目指している私たちは、生産から販売までの透明性にこだわりました」
インドネシアのスラウェシ島のカカオ農園と直接取引している京都のクラフトチョコレートメーカーDari K社と協力することで、その生産ラインの可視化を実現した。カカオの圧搾からココアバターの発酵、チョコレートとして加工するまでの工程を、現地農家とともに行っている。
Dari K社は「スラウェシ島からカカオを通じて世界を変える」という理念を掲げ、カカオ豆を自社で調達するだけでなく、カカオ農園に技術協力も行いながら、森林の木々の隙間の土地で農業を行うというアグロフォレストリー*を実践し、森林伐採を防いでいるという。また、カカオ以外の様々な果物の木を植え、多様な生態系を守り、また気候変動に対するリスクヘッジも行いながら、持続可能な方法として現地の人々の生活向上や、環境保全につながる活動もしているそう。
マザーハウス社はそんなDari K社とともに、カカオ生産者を守り、インドネシアのカカオの可能性を最大限引き出していきたいと考えていると話す。
*樹木を植栽し、森を管理しながら、その間の土地で家畜を飼育したり農作物を栽培したり、森を伐採しないまま農業を行うこと。
インドネシアと日本の融合
新興国には、自然の恵みをいっぱいに受けた豊かな食材、その恩恵を育む農家、そして、そこでじっくりと培われた食文化がある。しかし、そのほとんどはまだまだ日本に住む人々には知れ渡っていない。小田氏と會田氏は「イロドリチョコレートを召し上がっていただく方に新しい気付きをお届けし、いのちと想いと文化のリレーのたすきを繋いでいきたい」と話す。
インドネシアの魅力いっぱいの素材、その背景にある現地の人々の生活、自然環境の多様性が、日本の色や風景と混じり合い、形になったチョコレート。イロドリチョコレートは、日本の情緒ある四季の風景や自然物の美しさを再確認することもできれば、魅力あふれるインドネシアの可能性、そしてインドネシアを旅するような、ワクワクする発見も感じることができるかもしれない。そして、気軽に海外に行けなくなってしまったこの世の中で、現地に足を運ばなくとも、チョコレートという身近な食べ物を通して、普段意識しにくいカカオ農業の問題を含んださまざまな地球規模の課題を考えるきっかけも与えてくれるだろう。
普段の生活と社会に彩りを
世代も性別も問わず、さまざまなボーダーを超えて人々から愛されるチョコレート。さらに種類が豊富なイロドリチョコレートは、贈り物にもぴったりだ。「あの人ならこの色が似合うだろう」「あの子ならあの味が気に入るだろう」など、普段会えない今だからこそ、大切な人を想って選んでみるのもまた良い時間になるはずだ。
もちろん自分へのご褒美としても。チョコレートの主原料であるカカオに含まれるテオブロミンと呼ばれる成分は、自律神経に作用し精神をリラックスさせる効果を持つというが、なにかと日々の緊張感の増えた時代だからこそ、そんなアイテムを手元に置いておきたい。
あざやかで斬新な色使いのソーシャルグッドなチョコレートは、普段の生活そして社会に対して少しずつイロドリを加えてくれるだろう。
イロドリチョコレート
CURATION BY
東京生まれ。フリーライター・ディレクター。美しいと思ったものを創り、写真に撮り、文章にする。