Vol.30

MINIMAL

29 APR 2019

使いつづけるからこそ美しさがわかる。柳宗理「ステンレスカトラリー」

姿かたち、用途は違えど “いいもの”は私たちの感性を育ててくれる。日常で使うミニマルな要素を持ったアイテムは、いつの時代も変わらず魅力的だ。今回フォーカスを当てるのは柳宗理「ステンレスカトラリー」。日本を代表するインダストリアル・デザイナー、柳宗理(やなぎ・そうり 1915~2011)が40年以上も前にデザインしたミニマルな佇まいのカトラリーは、世代を超えて今もなお愛され続けている。そんなミニマルなアイテムが持つ、奥深い世界を覗いてみよう。

日本を代表するインダストリアル・デザイナー、柳宗理

食卓に並べるカトラリーは、使い勝手がよく、安全・丈夫、なおかつどんな食器にも馴染んでくれるミニマルなデザインがいい。

柳宗理「ステンレスカトラリー」コーヒースプーン ¥430(+tax)
そう考えてカトラリーを厳選したとき、最終的に候補に残ったのが、柳宗理のステンレスカトラリーだった。

柳宗理「ステンレスカトラリー」テーブルスプーン ¥750(+tax)、ケーキフォーク¥450(+tax)、コーヒースプーン¥430(+tax)
「柳宗理」といえば、インダストリアル製品でありながら蝶が羽を広げたような有機的な表情を持ち、洋の空間にも和の空間にも馴染んでくれる椅子「バタフライ・スツール」が代表作。また、ステンレスボウルや鍋などのキッチンツールが数多くそろう、メイド・イン・ジャパンのブランドというイメージが強い。結婚のお祝いや引出物として選ばれることも多く、老若男女問わず高い人気を誇る。
柳宗理は1950 年にデザイン事務所YANAGI DESIGN OFFICEを設立し、そこで彼がデザインしてきたものは、キッチン周りのツールだけではなかった。食器や家具などの日用品をはじめ、橋や建造物といった巨大な構造物のデザインなど、人々の暮らしを快適で豊かにするための様々なデザインを手がけていった。

スプーンの柄の裏側には、YANAGI DESIGN OFFICEのロゴマークが刻まれている。
YANAGI DESIGN OFFICEは、日々の暮らしを豊かにしながら長く使い続けられるようにと、使い手の立場に立ってデザインすることで、数々の名品を生み出してきたという。デザインを考える時は、紙にスケッチすることもしなければ、コンピューターで形作ることもしない。模型を作り改良しながら徐々に精度を高めていき、イメージする形状になった段階で初めて図面に起こすそうだ。
模型を作りながらデザインを考えていく手法のメリットは、デザイナー自身がその使用感を確かめられるところにある。また、実際に空間に置かれた時の形の印象や、手に持った時のバランスも確かめることが可能だ。時間はかかるが、丁寧なプロセスを経て確かな製品に仕上がるのだ。

使うからこそ美しい。用の美が息づくデザイン

ミニマルな佇まいでありながら、「用の美」を感じる柳宗理のデザイン。それもそのはず、「用の美」とは柳宗理の父親・柳宗悦(やなぎ・むねよし 1889-1961)が提唱した概念なのだ。
思想家である柳宗悦は、暮らしの中で使われるために作られた日用品から見出される美を「用の美」とし、それまで重視されていなかった日用品に価値を見出そうとする「民芸運動」を世に広めた人物だ。また、のちに柳宗理も館長を務めた、工芸品を収蔵・展示する美術館「日本民藝館」の設立者としても知られている。
柳宗理がデザインする日用品の数々は、モダンなデザインが多いが、そこからは父・柳宗悦が唱えた「用の美」を随所に感じられる。使うたびに、使うからこそわかる美しさを体感できるだろう。

世代を越えて。長く付き合えるカトラリー

1974年に発売されたステンレスカトラリーシリーズは、2019年現在で34種類。その全てが、使いやすさを細部まで考えたデザインになっている。
中でも、すくう部分の形状が個性的なスプーンは、使ってみることでその良さを感じられる名品だ。皿の料理をすくいやすく、食べる時も上唇にぴったりとフィットしてくれる。こぼすことなく無駄のない所作で食事ができるのだ。
こちらのケーキフォークも先端のフォーク部分の切れ込みが浅く、独特な形状をしている。このように切り込みが浅いことで、洗うときの汚れを落としやすくなっているのもポイントの一つだ。
ミニマルな形状の中にさまざまな機能がある柳宗理のステンレスカトラリー。丈夫なステンレスにつや消し加工を施すことで、傷も目立ちにくく、より長く使えるように工夫されている。

普遍的でミニマルなプロダクトを毎日の生活に

今となってはデザインという言葉は一般的になり、商品を買う側の意識も高まっている。しかし柳宗理が活躍した高度経済成長期の最中は安くて質の悪いものも多く、消費者の暮らしを豊かにすることまでは考えられていなかった。
そのような時勢の中でも、柳宗理は流行に左右されない、質のいいアイテムを作ることにこだわり続けた。食べることの本質に向き合ったことで発表から45年経っても、いまだに廃れることのないカトラリーデザインに仕上がっている。
このミニマルで美しいアイテムを、生活に取り入れてみてはいかがだろうか。

今回紹介したアイテム

柳宗理 「ステンレスカトラリー」

テーブルスプーン
Size / 183mm
¥ 750(+tax)

コーヒースプーン
Size / 118mm
¥ 430(+tax)

ケーキフォーク
Size / 150mm
¥ 450(+tax)