Vol.113

MINIMAL

17 MAR 2020

自分のからだと向き合ってる?セルフボディケアの考え方

10代や20代前半の頃には感じなかった不調が、次から次へと出てくる今日この頃。これから何十年も付き合っていく自分のからだなのに、その変化に鈍感になっていることに気づく。もしかしたら、改めて根本から自分のからだと向き合うことが大切なのかもしれない。そこで話を訊きに行ったのは、整体師の万力春乃(まんりきはるの)さん。不調に悩む現代人に共通するからだの問題や不調を未然に防ぐ基本の姿勢やからだをゆるめるセルフボディケアの方法を伺った。

あらゆる人の「幸せ」のベースに「からだ」がある

日々の生活で、運動をしたり健康器具を使ったりしてからだを労っているつもりなのに、気づいたら全身のあちこちが痛い。食事や睡眠のリズム、生活習慣を大切にしているのに、低気圧になると頭や関節が痛くからだが重い…など、不調を感じていると、どれだけ仕事やプライベートの出来事が順調でも、幸せとは程遠い気分になってしまう。

ついつい栄養ドリンク剤や風邪薬などに頼ってしまうこともあるだろう。

整体師・万力春乃さん
現在整体師として全国各地で活動し、SNSでも体の不調を和らげるための有益な情報を発信している万力さん。実はもともと翻訳家を目指すオフィスワーカーだったという。大学卒業後の就職先では、仕事に没頭し、連日パソコンと長時間向き合っていたが、ある日眼精疲労がピークに達し、パソコンをまともに見ることができなくなってしまった。そこで「デスクワークがダメならば通訳を」と、心機一転上京。テレビ番組の制作会社に入社し、日本に来ている外国人に取材する番組の通訳として活躍していた。仕事は順調で楽しみながら取り組んでいたものの、次第にクライアントと取材対象者とのあいだで、必ずしも中立的な立場でいられないことにジレンマを抱えるようになったという。

「なぜ違和感を感じるのかじっくり考えたら、自分にとって大切なのは、“自分の働きで誰もが幸せになること”だと気づいたんです。その根本に立ち返ってみると、自分がやっていた翻訳や通訳の仕事は、“できること”であって、自分が“心からやりたいこと”ではなかったんです」

一方で、長年趣味として続けていた「からだのケア」の存在が、万力さんが求める“誰もが幸せになること”につながると気づき、翻訳家から整体師に転向することを決意。座学や講習会を通して学び、小さなワークショップを開いて実践しながら、自分らしいスタイルを確立していった。

もともと言葉のプロでもある彼女は、施術中もやさしい言葉を使い、穏やかに語りかけてくれる。説明を聞いたり、会話のやりとりをしているだけでも、不思議なことにほんのりリラックスした気分になってくる。そして、凝っている部分をぐいぐい押してもみほぐすのではなく、なでたりゆらしたりしてからだをゆるめてくれるので、痛みを感じることはほとんどない。まさに「やさしい整体」である。

「整体は、あくまで民間療法です。ひとえに整体といっても色々な流派があって、施術方法もさまざま。まずは自分にあった方法を選ぶことが大切です」という万力さん。「痛いところをもんでほぐす」のではなく、「そもそも痛みの出にくいからだづくり」を目指し、原因を捉えて呼吸や姿勢のあり方、からだの使い方などの対処法を教えてくれる。

現代人が抱えるからだの問題は、浅い呼吸の改善から

20〜30代の人を中心に日々さまざまな人のからだを診ている万力さん。不調を抱えている人は共通して、「ある問題」を抱えているそうだ。

「最近はからだの力を抜けない人が多いんです。自分でも力が入っていることに気づかないくらい、常にからだが力んでいて、呼吸も浅くなっている。まずは自分の呼吸について意識してみることが大切です」

たしかに都会で生きていると緊張を強いられる場面も少なくないだろう。張り詰めた気持ちは、そのまま体に強張りを引き起こしている。

いまこの記事を読みながら、あなたはゆったりと深い呼吸をできていただろうか?呼吸が浅くなっていた方や、呼吸が止まっていたという方は、からだに力が入り続けているということだ。
「人のからだは、本来ポンプのように伸び縮みするもの。だけど、常に力が入っているとその運動が柔軟にできなくなります。硬い木の枝は、強い風が吹くと折れてしまうけれど、柳の木の枝はしなやかになびく。それと同じで、からだもしなやかさを保てば、環境の変化によるストレスにも柔軟に対応できるんです」

心地よいからだづくりに必要なのは、「強さ」ではなく「しなやかさ」。まずは自分自身の意識を変え、体の基本から見直す必要がありそうだ。
それではさっそく、呼吸に意識を向けて、こわばりがちなからだをゆるめていこう。これから行う「からだをゆるめるケア」は、とても簡単。血行もよくなるので、冷えを感じやすい人はぜひ実践してほしい。

「まずはうつ伏せに寝て、左足の付け根を30度、つらい人は無理のない角度に広げ、ひざを軽く曲げます。頭と腕は、好きな位置でOK。その体勢のまま鼻から息を深く吸って、お腹のあたりを空気で膨らませたら、いきむように、お尻に一瞬ぎゅっと力を入れます。そして口からふぅ〜っと息をはいていく」

このステップを3〜4回ほど繰り返そう。ゆるみにくい左側の骨盤底筋をゆるめると、自然と右側もゆるむため、左側だけでOK。

「深い息の吸い方が、いまいちピンとこない」という方は、首の後ろ側に息が抜けるイメージで吸ってみよう。自然とお腹にも息が入っていくのを感じるはず。次第にお腹まわりが温まる、もしくはすっきりした感覚を得られるだろう。

普段の姿勢がからだへの負担に。座り方から見直そう

続いて見直したいのは、姿勢だ。座り方、立ち方、歩き方が人体構造的に無理があると、からだがバランスを取ろうとして不自然なところに負担がかかり、痛みが生じやすくなってしまう。

「座るときは、はじめに椅子の前にまっすぐに立ち、お尻を突き出しながら腰をおろし、そのまま座りましょう。坐骨(ざこつ)部分が椅子に当たるので、その真上か、少し前に重心を置くことで、安定する位置が見つかるはず」

からだの真ん中あたりに背骨がずどんと通っていることを意識しよう
「安定したら、肋骨に手を当てて確認しながら、息を吸いながら内臓と肋骨をぐっと持ちあげてください。その状態をキープしながら、内臓を骨盤の中に収めるイメージで息をはき、下腹部の力を一気に抜く。下腹部の力が抜けたら、息を吐いて肋骨もおろします。背骨とつながっている首の骨が、耳のうしろあたりまで伸びてきていることを意識しながら頭の力を抜き、首の付け根を15度くらい上に傾けるイメージで鎖骨を上げれば、バランスのいい座姿勢が完成します」

自分のからだに根本から向き合って、痛みを未然に防ごう

セルフボディケアを終えて、からだがぽかぽかと温かくなった気がする。暖かい室内でも、意外にからだは冷えてかたくなっているのだ。
少し気持ちを落ち着けて、呼吸を整えてからだを見つめる。「しなやかさ」という視点で体と向き合うと、その方法は意外とシンプルである。不調や痛みを感じた時こそ、まずは自分の体を見つめ、慈しむことから始めてみる。それだけで十分なことも多いのだ。

微妙なからだの変化を捉えるのは、はじめは難しく感じるかもしれない。しかし、自分自身でからだをケアするセルフボディケアによって、自分という個をより深く見つめ直すことができるはずだ。

もっとからだをゆるめたい、ケアの方法を知りたいという方は、ぜひ万力さんの整体を体験してみてほしい。また、SNSでも低気圧の時の痛みを防ぐ方法など、セルフボディケア情報を発信中。今年もしなやかなからだづくりをしていこう。

万力春乃(まんりき はるの)

広島県生まれ。やさしい整体を施術するほか、セルフ整体、からだの動かし方、冷えや生理痛対策など、からだとの付き合い方もレクチャーしている。現在は会社やイベント、個人宅などで出張整体やワークショップを開催している。

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