Vol.719

KOTO

06 JAN 2026

自然と人工の調和 TOSHIO SHIBATA写真集とONTAKEウイスキーを楽しむ

インフラ施設をオブジェと捉えて撮影する柴田敏夫氏の写真は、自然と人の調和の中で生まれる作品である。ウイスキーも同じく様々な自然の力を利用して一本のウイスキーが生産される。偶然性と必然性が重なり、唯一無二の味わいが生まれる。日本ならではの自然の魅力を利用した両作品を合わせて、ゆっくりと鑑賞すれば、様々な想いが巡り優雅な時を過ごすことが出来るだろう。

誰もが見たことある風景がアートに変わる

山や川、自然の中に佇むインフラ施設。現代人には欠かせない便利な生活を支えてくれている施設。自然の中に現れるコンクリートは土砂を防いだり、ダムを利用して電力を生んだりと、全国どこにでも見かける景色であろう。

自然の彫刻と人工の彫刻との融和。柴田敏夫氏の写真集JAPAN

人の生活の営みが現代社会を表す。柴田敏夫氏の写真集Concrete Abstraction
写真家柴田敏夫氏が長年にわたり撮影してきた被写体は、自然の中に人が介入している形跡、ダムやコンクリート構造物が撮影されている。誰もが見かけたことがある、インフラ施設が柴田敏夫氏の手にかかれば、彫刻として現れ、現代美術の一片となる。

24時間人々を支える社会インフラ

夜から昼へ時間が移行する写真集 DAY FOR NIGHT
柴田敏夫氏が1980年代に撮影されたDAY FOR NIGHT。夜から昼へ移行していく構成になっている。どの写真にも人は写っていないランドスケープだが、そこからは人の営みが想像できる。24時間日本のどこかで、人々の便利な生活を維持するために働き続ける労働者の姿が思い浮かぶ。

目に見えない物語を想像させる作品集は、トンネルの写真を通して街中から郊外へ、そして夜から昼へ移行していく。作品を観るものが何を感じ、何を思うか。それぞれの経験や思想により、体感が変わる。思考する行為を楽しみながら、ウイスキーを口に含めば、大人の時間が過ごすことが出来るだろう。

国内よりヨーロッパで知名度が高い理由

柴田氏の写真は特に海外からの評価が高く、とても人気がある写真家である。もちろん理由の一つとしては見慣れた風景より異国の風景への関心が高いという理由やファインアートの市場の大きさもあるかもしれないが、単純にそれだけではないだろう。

光と影。モノクロで構成されている写真集 DAY FORNIGHT
自然の中に現れるコンクリートはオブジェのように美しく、力強く、見ていて惹かれるが、やはり違和感もあるはずである。便利な生活を求めるが故に自然環境を犠牲にせざるを得ないというジレンマと環境保全や自然エネルギーへの関心がヨーロッパの人々の方がより強い傾向にあるという事も関係しているのではないだろうか。ただ美しいだけではなく、問題提起がある事により、柴田氏の作品の奥行きがそこにあるのではないだろうか。

鹿児島市内、桜島を展望できる場所で蒸留されたウイスキー

芋焼酎造りが盛んな鹿児島のなか、富ノ宝山、天使の誘惑など人気の高い焼酎をリリースしてきた西酒造がウイスキー造りに挑戦を始めたのは2019年からだ。ジャパニーズウイスキーが世界的に注目され、日本国内でウイスキー蒸留所の建設ラッシュが起こった。

木箱に入った2025年ボトル

正真正銘のシングルモルトジャパニーズウイスキー
鹿児島県内でも4箇所以上の蒸留所が製造を行っている。その中でも御岳のこだわりはシェリー古樽と風通しの良い高台にて熟成させることで、奥深いコクを持つ特徴のあるウイスキーが生まれている。

2025年に開催された「ワールドウイスキーマスターズ」で金賞を受賞

国際的なウイスキーコンペディション「ワールド・ウイスキー・マスターズ」にて2025年に金賞を受賞した御岳2025。特に樽へのこだわりが強く、シェリー酒を熟成させた古樽を使用している。5年という短い熟成でもしっかりとした味わいを感じる。

シェリー古樽で熟成された濃いアンバー色のウイスキー
シェリーらしい甘いフルーティーさと共にビターな味わいもあり、芋焼酎メーカーが造ったという先入観かもしれないが芋のような味わいも感じた。夕暮れの深い蒼色の空に桜島のシルエットが浮かぶ。ウイスキーを口に含むと、そのような風景が脳裏に浮かんでくる。

世界が評価する日本のウイスキーの躍進が止まらない。御岳が目指すスローガン

「世界を狙う、じゃない。世界が狙う、ウイスキーになる。」とあるが、まさに世界が欲しがるウイスキーになったと言える。熟成が進んだ10年、20年先が楽しみである。


ロックスタイルはスムースな味わい

ウッディーな風味がリラックスをさせる

ウイスキーを飲みながらアートに触れる時間

柴田氏の写真集を読みながら、ウイスキーを口にする。誰にも邪魔されず一人の時間をゆっくりと過ごし、思考を凝らす贅沢で至福の時間。

現在のインフラはこれから何十年も人々の生活を支えて、生活が楽になり便利になる。山や川の力を借り、私達の今の生活が成り立っている。その一方で、必ず失われていくものもある。その絶妙なバランスを保ちながら、我々は自然と共存し、未来へ繋いでいく責任があるだろう。

御岳のロックと柴田敏夫写真集JAPAN
ウイスキー造りも同じく、人の手によって蒸留された液体に、自然の力を借りて、ゆっくりと熟成させられる。風、湿度、樽材。それぞれの力を借りて、数年先の未来へ繋いでいく。未来を想像し、デジタルから少し距離をとった時間を楽しみたいと思う時がある。

写真家の端くれである筆者が中国に旅をした時、中国の途方もなく膨大な自然のなか、土砂崩れの形跡が残る長い一本道をバスに乗って進んだ先に、巨大な都市が現れるという体験に感動を覚えたことがある。自然の中にコンクリートの造りものが出現する光景に、どこか惹かれるのは、人の営みを感じて安心するのだと思う。

そのような自然に囲まれ落ち着いた場所でゆっくりとウイスキーを楽しんでもらいたい。

中国の自然とインフラをテーマにした筆者作品