針金を使ってさまざまな物を作る「ワイヤークラフト」。シンプルかつ線画のような繊細さを持つワイヤークラフトの魅力。それはワイヤーを曲げて切るだけで実用的な雑貨やアートに早変わりするところ。たった1本のワイヤーが、アイデア次第で花瓶や小物、オブジェにも変身する。曲げたり、ねじったり、結んだり。たった1本のシンプルな素材から、自分だけの暮らしを彩るインテリアが生まれる楽しさを、ぜひ体験して欲しい。
その魅力は、線画のような繊細さと曲げるだけで作れるカジュアルさ
出会いはたった一本のワイヤー。
手先が不器用な私はDIYやハンドメイド雑貨を自分で作ることには無縁だと思っていた。
知人の家を訪ねた時に淹れてもらったコーヒーを飲みながら、ふとコーヒーフィルターケースに目をやると、それは一本の黒いワイヤーをゆるりと曲げて作られていた。
「ペンチとワイヤーがあれば簡単にできるよ」
その言葉を聞いて早速帰り道に100円ショップに寄り、ワイヤーとペンチを一本ずつ購入し、自分だけのオリジナルワイヤークラフト作りに没頭する日々が続いた。
好きな線画をプリントし、その通りに曲げたり切ったり結んだり。最初から立体物を作るのはハードルが高いと感じたので、お気に入りのフラワーベースに挿すお花を作ってみると、世界に一つだけの、枯れないチューリップができた。
くるくると曲げるだけで作れるミモザのスワッグもお気に入り。
花びらの形、茎の曲がり具合など、微妙なニュアンスも曲げ直して、自分好みのワイヤーフラワーを生み出すことができる。
制作時間はたったの10分。必要な物は2つだけ。
ハンドメイド雑貨やアクセサリーなど、挑戦してみたくてもハードルが高い。
そう感じる人は多いだろう。そのハードルの1つが材料費の高さ。
最初から上手くできるか分からない物にお金をかけるのは…と躊躇われるその壁も、ひょいと飛び越えられるのがこのワイヤークラフトなのだ。
私が最初に作り始めた時の道具は100円ショップのワイヤーに、100円ショップのペンチ。何時間もかかる作品を作り上げる前に飽きてしまうのでは、という心配も不要。
ワイヤーで文字を描くワイヤーレタリングは、ものの10分程でできてしまう。流れるような文字のタッチが、韓国インテリアらしい雰囲気を醸し出している。物撮りの時のスタイリングに使ったり、立てかけられるところがあれば立てかけるだけで、アンニュイな雰囲気に。
レタリングがうまくいったら、ワイヤーの色を変えて自分だけのアクセサリーを作ってみよう。馴染みの良いゴールドのワイヤーを手に入れたら、ワイヤーフラワーの技術を応用して、フラワーリングを作ることもできる。
自分の指の太さにばっちりと合うワイヤーのリングは、華奢なルックスと繊細さが売り。サイズを計って指輪を買う必要はなく、曲げ直してニュアンスを変えながら、指先に華やかさをプラス。
梅雨に入る前に自分のためのフラワーベースを
ワイヤーフラワーを作ったなら、今度はフラワーベースに挑戦しよう。フラワーベースといっても、主役はワイヤー。平面だった物が、立体になって存在感を放つ。
作り自体はシンプルであるので、図面があれば図面通りに、頭の中で組み立てることができれば想像しながら作ることもできてしまう。
ワイヤーだけで作ったものにはドライフラワーの一輪挿しが様になる。線でできたフラワーベースが、まるで絵のようにドライフラワーを支え、美しさを引き立てる。
また、生花を生けたい場合は、試験管をプラスして水を差せるようにしよう。無機質なワイヤーと瑞々しい生花がお互いを引き立てる。
遊び心をプラスして、小さなハンガーを作れば、まるでそこに小人が来てくれそうな空間に早変わり。マスキングテープをかけて置いておけば、そのためにマスキングテープを買いたくなるような小さなデスクアクセサリーに。
お気に入りのマスキングテープをおしゃれに飾るミニハンガーは、デスクワーク中に思わず揺らしてしまいたくなるほど愛おしい。
ハンドメイドは自分のために
ハンドメイドというと、誰かへの贈り物や販売用の作品を意識しがちだ。クリエイターや作家と呼ばれる、特別に器用な人たちだけができることのように思っていた。
でも、本当はそうではない。
ハンドメイドは「自分のため」にこそあるもの。針金一本から形を作り上げる作業は、静かに自分の内側と向き合う時間でもある。
失敗してもいい。うまくいかなくてもいい。ただ「この形が好き」「この瞬間が楽しい」と感じる気持ちこそが何より大切なのだ。
ワイヤークラフトの魅力は、自由度の高さにある。きっちりと整った形も、ラフでのびやかな曲線も、すべてが“自分らしさ”を映し出している。
完成した作品を部屋に飾ったり、大切な誰かにそっと手渡したりする喜びももちろんあるけれど、それ以上に大切なのは、手を動かしながら無心になれる時間、夢中で作るその過程にある。
ハンドメイドは、外へ向けた表現ではなく、自分を満たすための“私だけの時間”なのだ。
想像を形に。
朝起きて、仕事をして、帰ってからの自由時間。その自由時間は自分のためのハンドメイド時間。
ただひたすらに、頭を空っぽにして指先を使う時間。もっとこうしたい、もっとこうしよう、と自分自身と対話する時間。そんな時間を生み出してくれるのがワイヤークラフトなのだ。
そう、出会いはたった一本のワイヤー。
曲げたり、結んだり、形を探ったり——ワイヤーという素材は、まるで自分の「好き」と向き合う時間をくれる。
難しさも、思い通りにならない瞬間も、完成したときの達成感へとつながっていくのが、手仕事の醍醐味。
飾って楽しい、作って嬉しい、暮らしにそっと寄り添うワイヤー雑貨は、特別な技術がなくても始められるのが魅力。自分だけの表現ができるからこそ、世界にひとつだけの“私らしさ”が生まれる。
まずは気軽に1本のワイヤーから。暮らしの中に小さなアートを取り入れて、自分の感性と遊んでみよう。
CURATION BY
公務員からパティシエへキャリアチェンジ。日常にそっと寄り添う、シンプルで美しいお菓子作りを大切にする