Vol.619

KOTO

21 JAN 2025

自宅のイケア率95% イケアスタッフに学ぶデザイナーズマンション×インテリアスタイリングの極意

北欧スウェーデン生まれの家具・雑貨のブランドイケアは、高いデザイン性と手ごろな価格で世界中にファンを持っていることは言わずもがな。アイテム数も膨大ゆえにどんなスタイリングも叶うのが魅力だが、ともすると部屋が統一感のないちぐはぐな空間になってしまったり、思いどおりにいかなかったりするのもあり得る話だ。そこで、日本のイケアが2006年にオープンした当初から約20年務めているコワーカー(イケアで働くスタッフのこと)である江鬮結実(えぐち・ゆみ)さんのご自宅を訪ね、デザイナーズマンション×イケアのマリアージュの極意を教えてもらった。

10年以上暮らしているデザイナーズマンションは、「ほぼイケア」な空間

江鬮結実(えぐち・ゆみ)さんが夫&猫と暮らしているのは、43平米・1LDKのデザイナーズマンション。ご自宅にお邪魔すると、そこはビビッドなカラーリングのインテリアや雑貨とグリーンでいっぱいのカフェのような空間。やわらかく入り込む陽光と、暖色の照明に包まれ、ホッと心がなごむ。

黒のアイテムは空間を狭く見せるため、なるべくベースカラーを白にして、広く見せるようにしているとのこと

「椅子が好きで、イケアのものと友達から譲り受けたデンマークのアンティークチェアをミックスして使っています」
2006年に日本にイケアがオープンする前から海外のイケアをめぐっていたという、生粋のイケア好きである江鬮さんらしく、「部屋の家具や雑貨の95%はイケアですね」と笑う。買って1年以内の新しい丸型のダイニングテーブルもあれば、10年ほど前に販売された現在は入手不可なキャビネットまで、まさにイケアの歴代アイテムのショールームだ。

江鬮さんは、インテリアや雑貨だけでなく、北欧のライフスタイルも愛している。
「イケア発祥の地・スウェーデンには、Fika(フィーカ)という “お茶の時間”を楽しむ文化があるのですが、私はその文化が好きで。だから、部屋のテーマも『家でカフェタイム』です」

カフェタイムで使うカップはその日の気分で。食器の数も充実。もちろんほとんどがイケアのもの

夫婦ともに音楽好きで、スピーカーは音響がよいものをセレクト

BGMとともにカフェタイムを楽しむ
仕事が終わった後や休日に音楽を聴きながらお茶をしたり、友達を招いておしゃべりをしたり。

「家が池尻大橋エリアにあるから、近所に素敵なカフェやお弁当屋さんなどがいっぱいあるんです。タルトがおいしいお店や、フランスに行ったときに食べたフランスパンと同レベルの間違いないお店などなど。だから、外食をするよりも、お店でスイーツや惣菜をテイクアウトして、家で食べるのが落ち着くんですよね」


池尻大橋の商店街

自宅の近くには公園やイチョウ並木も

部屋はカフェタイムを楽しむダイニング・キッチン(9畳)のほか、ベッドルーム(10畳)がある

「夫はリモートワークもするので、ベッドルームはデスクを置いて仕事部屋としても使っています」。江鬮さん夫妻共通の趣味である作曲もここで

猫のピッピちゃん(2歳)の名前は、スウェーデンの小説『長くつ下のピッピ』(アストリッド・リンドグレーン)から。恥ずかしがり屋で、取材中はずっと隠れていた(写真提供/江鬮さん)

デザイナーとのコラボ、シーズンもの...限定コレクションは一期一会

さて、江鬮さん宅でイケアのアイテムがどう生かされているのか、詳しく紹介していただこう。

「まず、イケアの魅力を語る上で欠かせないのが『限定コレクション』です。年に数回、定期的に新しいアイテムが出るんですが、その時しか手に入らない上に即完売してしまうものも少なくないんです。だから、私もコワーカーのみんなも、常にチェックしてますね。オンラインでも、『新商品』というタグで検索できるので、ぜひ見てみてください。

特に有名デザイナーとのコラボアイテムは要チェックです。例えば今SNSで話題の、オランダのデザイナー、サビーネ・マルセリス(Sabine Marcelis)とのコラボコレクション『VARMBLIXT/ヴァルムブリクスト』のウォールランプ。7999円(税込)なんですけど、このデザイナーさんのコラボ以外の商品を購入しようとしたら10万円くらいはします。

インゲヤード・ローマンのワイングラスも、イケアのコラボは999円ですが、それ以外で買うと2万円はします。憧れのデザイナーズアイテムを手軽に暮らしに取り入れられるんです。好きな人にとっては生唾モノですよ」

「VARMBLIXT/ヴァルムブリクスト」のウォールランプは、壁に取り付けることもテーブルに飾ることもできる (写真提供/イケア)

江鬮さん宅のベッドルームにあるイケアのレシートをモチーフにしたラグも、ファッションデザイナーのヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)とのコラボアイテム。「洗濯したら色映りしてクシャクシャのレシートみたいになってしまったのですが、そこも含めて気に入っています(笑)

2024年にはオランダのデザインデュオ、ローカラー(Raw Color)とのコラボコレクション「TESAMMANS/テサッマンス」の時計(写真左上)とトレイ(写真右端)もゲット。即完売だったとか。植物の下にあるトレイはmarimekko(マリメッコ)とのコラボアイテムで、サウナがテーマ
デザイナーなどとのコラボだけでなく、季節ごとに登場するアイテムも見逃せない。

「同じく冬の季節アイテムであっても、年ごとに“赤”がテーマだったり、“ニット柄”がテーマだったりと、いろんなシリーズが出るんです。コラボアイテムも季節商品も、自分が好きなスタイルのものが出たら”買い”です。ついついアイテムが増えてしまうので、要るもの・要らないものを熟考するのがかなり大変です(笑)」

歴代の季節限定アイテムの数々
ちなみに、現在はイケア創業80周年記念のコレクションが展開されており、過去の名作の復刻アイテムが登場している。2025年も続く予定だとか。

デザイナーのアイテムや季節ごとのアイテムで、気兼ねなく部屋にトレンド感や季節感を取り入れていく。ファッション感覚で部屋の模様替えを楽しむ暮らしは、すごく刺激的だ。

ベッドルームのカーテンは、今は冬らしいモミの木柄。春には緑いっぱいの季節アイテムに模様替え

「家具も気軽に年に一度ペースで買い替えています。使わなくなったものは欲しい友人に譲ります」

“明かり”を楽しむ北欧文化をイケアアイテムで

「“照明”もおすすめのイケアアイテムなんです」と江鬮さん。

「北欧の冬は暗い時間帯が長いので、間接照明などの明かりを楽しむ文化があるんです。1灯だけの明るい照明ではなく、複数の照明を部屋のいろんな場所において、明かりで空間を演出するんです。そんな北欧で生まれたイケアですから、照明アイテムが充実しています。同じシリーズの照明を取り入れて統一感を出してもよいですし、デザインが違ういろんな照明を取り入れてもよいと思います」

ベッドルームでは「BRUNSTA/ブルンスタ」のペンダントライト(写真手前)とスタンドライト(写真奥)を組み合わせて
「また、裸電球もいろんなデザインのものがあるので、あえて裸電球を生かしたデザインの照明を選ぶのもおすすめです。イケアの電球は種類が豊富な上に、LEDであっても1000-2000円と手ごろな価格で手に入るので、いろんな組み合わせをしやすいですよ」

裸電球も美しい
照明は、部屋の四隅や家具などの後ろなどに置いて壁に光を広がるようにすると、空間に広がりが生まれるとのこと。江鬮さんはポトスに照明のコードを絡ませるというユニークな技も。

垂れ下がるポトスに複数の電球がついた照明を組み合わせると、まるでオリジナルアイテム

ポトスの後ろには、工具のHEXレンチをモチーフにした照明を忍ばせていた

「北欧は森と湖が多いので、北欧家具と植物の相性もすごくいいんです。イケアのコワーカーも植物好きが多いんですよ」

照明の置く場所や、組み合わせるアイテムで、空間の印象がガラッと変わるのがおもしろい。取材が終わって外が少し暗くなり、部屋に明かりが灯る。まだ明るかった訪問時とはガラリと違った表情を見せ、昼間とは違う時間が流れ始めた。

世界中のイケアユーザーたちのクリエイティビティを学ぶ

江鬮さんの話を聞いていて、イケアの醍醐味について新しい発見があった。それは、世界中で同じアイテムが展開されているからこそ、ユーザーそれぞれの楽しみ方を知ることができる、ということ。

江鬮さんに、部屋の空間づくりで何を参考にしているかを聞くと、
「Instagramで、コワーカーのアカウントや、世界中のイケアユーザーのアカウントをチェックします」との答えが返ってきた。

「自分が欲しいと思ったアイテムを、他の人がどう使っているのかをタグで検索するんです。買おうかどうか迷ったときの判断基準になりますし、使い方のインスピレーションを得られるんですよ」

なかには、思いもよらない使い方をしている人もいる。例えば、テーブルの天板を取り外して別のアイテム(スツール)と組み合わせてアレンジし、新しいアイテムを生み出してしまうなど。誰かがひらめきと発想をSNSでシェアし、そこからさらに新しいクリエイティブな楽しみ方が生まれていく。

江鬮さんは、古くなったランプのシェードの部分を取り外し、新しいランプのシェード部分を取り付けて、オリジナルアイテムをつくった

備え付けの収納が少なかった賃貸マンションで大活躍中なのが、なんと子ども用クローゼット「STUVA/ストゥヴァ」(写真左)。横幅約60cmのコンパクトなつくりなので、部屋に圧迫感を与えない

海外限定アイテムもSNSでチェック。コワーカー仲間から、海外旅行のお土産としてもらうことも。写真はタイ限定の靴下
どのような部屋を素敵だと感じるか。それは、「その人らしさ」が感じられる部屋だと思う。唯一無二の一点ものもオリジナリティがあって憧れる。一方で、たくさんあるもののなかから自分の感性で選び取り、ライフスタイルにあわせた使い方を楽しむことも「その人らしさ」なのだ。江鬮さん夫妻の部屋には、北欧とイケアへの愛があふれていた。

自分の好きな色を決めて、そこをベースにアイテムを増やしていくのがイケア部屋の作り方のコツとのこと。「イケアのモデルルームは色味の合わせ方などスタイルも考え抜かれているので、参考にしていただければ」
写真撮影/嶋崎征弘

●取材協力
イケア渋谷店 コワーカー
江鬮結実(えぐち・ゆみ)さん
https://www.ikea.com/jp

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