ブランド、ジャンル、価格…価値観の呪縛で”思考停止”していないか
自覚なく抱いていた固定観念に気付かせてくれたのが「FUNagain」だった。
それでは、なぜリサイクルショップだったのだろうか。その背景には、10年前に高島さんが台湾に行った時の体験がある。台湾では、年末の大掃除や引越しなどで、粗大ゴミとして出された大量の家具が道端に置いてある光景を目にすることがある。それを他の人が再活用することも少なくない。
「結構いいものがあるんですよね。イベントで、それを拾い集めてディスプレイし直す機会があったんですが、みんな『超イイね』って言ってくれて。でも、これらのアイテムって誰かが捨てたものなんですよね。価値観の違いで元のモノの価値が変わるという気づきになりました」
ショップのサブタイトル「The Circulation of Love!!」にも、その時の学びとマインドが刻まれている。
結局、いま世の中で言われていることって、環境のためではなく、建前なんじゃないかと。
僕が大切にしたい『循環』というのは、人の気持ちのことです。モノを作った人、使っていた人、これから使う人、全て。たとえ有名なデザイナーのものでなくても、魂を感じるものだったら伝えたい。だからこそ、毎週仕入れたアイテムをInstagramで丁寧に紹介するようにしていますし、接客でも大切にしていること。どれか一つを切り取ったら、『愛の循環』は成立しませんから。その結果がほんの少しでも、より良い地球の未来につながるのではと思っています」
まさに一期一会。固定観念を破壊しながらモノ選びを楽しむ
毎週、 約8 割の商品が入れ替わるというから、アイテムとの出会いはまさに一期一会。19番の筆者が入店したのは開店から30分後ほどだったが、Instagramで紹介されていた商品の体感7割は「Sold」マークがついていた(筆者はプライウッドのローテーブルとイタリア製ガーデンスツールをゲット)。お目当てのアイテムがあるなら、土曜に早起きをして早い番号の整理券を入手すべし。
「まず、お店の個性を出すラインナップが3割。これは世の中でみんながあまり価値に気づいていないものです。例えば、1980年代後半から90年代の勢いがあったバブル期の日本って、海外から取り寄せた物や、素材もデザインもお金をかけたつくりの良い物がたくさんあったんです。そういう物のなかでも、現代の暮らしに取り入れても違和感がないものをセレクトしています。
次に、時代の流れに合わせたものが 3 割です。丁寧でシンプルな暮らしが流行していましたが、今、そういうものに飽きてきていて、反動がきていると思うんですよね。80年代のイタリアで起きたポストモダンに似ています。機能的に優れた美しいものがもてはやされていた中で生まれた、自由にいろんな考えや表現があってもいいよね、という動き。いわばカウンターカルチャーです。そういう意識で選んだものです。
のこり4割がベーシックなもの。どんなテイストにも馴染むものです。無印良品やIKEAなどみんなが知っているブランドのものもあります。僕はラタンのアイテムを選ぶことが多いかもしれません」
レザーカンチレバーチェア 14,000円(税込)
ランドリーボックス 12,000円(税込)
一輪挿し 9,000円(税込)
ダイニングテーブルセット ダイニングテーブル1台、イス4脚 85,000円(税込)
石器の平皿 1枚2,800円(税込)
サワーグラス 1,800円(税込)
モノの持つ要素を分析し、仲間同士をグルーピングする
「時代、素材、テイスト、これらがグルーピングの三大柱。同じ性質を持つ仲間同士は喧嘩しないんですね。さらに、そこにそのグループが際立って見えるようなコントラストをつくるアイテムをプラスする。例えば、古いシャビーなものばかりを集めたら老けた感じになってしまうけれど、現代的に見えるようにするためには何の要素が必要なのかを考えるんです」
「現代の北欧製のものが2点のもの、アンティークなものが1点。ということは、デザイン性の高いアイテムのアクセントに古いものを混ぜるのがお嫌いじゃないですよね。クリーンなテイストのものをベースにするのがお好きだけど、全部そうだとモデルルームみたくなっちゃうのは違う、と思っていますか?」と即座に分析。カメラマンを「どうして分かるんですか!」と驚かせていた。
ここまで知識や価値観に囚われていないか投げかけてきたが、高島さんの話を聞くと、ものの持つ歴史や、作り手や背景といった知識があれば、もの選びの解像度が上がるのだと感じる。実際、グルーピングをするにしてもアイテムの持つ要素を因数分解して理解することで特徴や魅力がクリアになるし、何より高島さんの目利きは確かな知識と経験、見立てに基づくものだ。
「僕は、モノの持つ要素や、なぜ良いと思うのかを常に考え続けるクセがついているんです。商品の紹介をするときも、『どこのブランドで、デザイナーは誰か』で終わるんじゃなくて、それ以外の価値をどう伝えるかを言語化できるようにすることに重きを置いている。知識を持っていること自体が価値なのではなくて、それをどう使うか、どう発展できるか、ということに価値があると思います。この差は思っているより大きい」(高島さん)
知識にとらわれているのか、知識を表現手法として使いこなせているのか、この問いにハッとさせられる。
常日頃から物事に向き合い、本質に気づけることが人生を豊かにする
常日頃からいろんな物事に向き合っていくことって、いろんな気づきがあるんですよ。その気づきが多ければ多いほど、ちょっとしたことで人生を楽しくできたりする。
例えば、『ラグジュアリーとは何か』に向き合ってみると、必ずしもそれはタワーマンションに住んだり自家用プライベートジェットに乗ることじゃないんですよね。『あ、今日の夕陽超きれいだったな』というような、ちょっとしたことでも贅沢だなと思える瞬間が、絶対にたくさんある。こういう細かいところに日常的に気づけるかどうかが、人生を豊かにすることにつながると僕は思います」
高島大輔
https://www.instagram.com/anthemdsk/
FUNagain|ファンアゲイン
営業時間:土曜11時-18時、日曜12時-18時
※8時から11時ころまで整理券を配布し、順番に入店。
16時からはDM通販対応もできる限り行っている。事前キープ不可
定休日:月-金曜
https://www.instagram.com/funagain_sendagi/