Vol.419

KOTO

21 FEB 2023

トレンドの模型製作は、組み立てオンリーのバイク模型から。模型趣味の始め方

巣篭もり需要で近年人気を集めている「模型製作」。特に『機動戦士ガンダム』を題材としたガンプラをはじめとするキャラクターキットへの需要が高く、今もなお品薄状態が続いている。とはいえ、模型はガンプラだけでなく、実在の兵器や車両をモチーフにしたスケールキットもあり、むしろ商品点数でいえばスケールキットの方が膨大。今回はその中から「バイク模型」に焦点を当てて、模型の面白さや楽しみ方をお届けしていこう。

模型の醍醐味“組み立て”を存分に楽しめるバイク模型

メカニカルで複雑なディテールのパーツで構成されているバイク模型
模型ジャンルの中でもひと際難しいのが、実はバイク模型。メカニカルなエンジンと艶やかなフューエルタンクやカウルといういわば真逆の質感を表現する必要があり、形状も複雑。縮尺が実車に近いぶん本物に近づける余地があることも難易度を上げている要因だ。

ただしそれは、塗装をして完成させることを前提とした話。模型専門誌やSNSなどでもきれいに仕上げられた模型を目にすることが多いので、“模型は塗装しなければならない”とハードルを上げてしまっている人が多いのだが、模型の醍醐味は“組み立て”にある。現にガンプラなどのキャラクターキットの多くはパーツごとに色分けがされていて、そのまま組み立てただけの“素組み”の状態でも見栄えするように配慮されている。

スケールキットは塗装前提の単色成型になっていることが一般的だが、実車モチーフの縮尺模型という側面から組み立てただけでもその構造やディテール感を存分に楽しむことができる。特にバイク模型は縮尺が実車に近いぶん再現度が高い。実車では見られない部分を手の平の上でじっくり観察したり、その構造を組み立てとともに追体験することが可能だ。

各メーカーバイク模型レビュー

バイク模型シーンを牽引するタミヤとハセガワ

タミヤ

『ミニ四駆』やラジコンでお馴染みのタミヤは、日本だけでなく世界を代表するスケールキットメーカー。どのジャンルにおいても再現度の高さとキットの作りやすさが魅力で、初心者にも充分おすすめできる。比較的最近の市販車やレース車をモチーフにしたバイク模型を展開。往年の名車をリリースすることがたまにあるが、主にかなり昔のキットの再販なので製作難易度は高くなる。

ハセガワ

かつては飛行機キットを中心としたスケールキットメーカーであったが、今はキャラクターキットにも注力。バイクキットのリリースにも精力的で、往年の人気市販車を中心に展開している。製作難易度はタミヤのキットよりも高めだが、素組みであれば問題なく組み立てられるはずだ。ディテールが細かく、実車再現度が高いのが特徴。

青島文化教材社

戦車〜デコトラまで、幅広いスケールキットをリリースしていることで知られる青島文化教材社。往年の市販車を中心に非常に多くのバイクキットをラインナップしているが、その多くが比較的昔のキットなので、実車から少々デフォルメされているものもあったりする。腕に覚えがある人向け。

フジミ模型

飛行機や車といった王道だけでなく、恐竜や昆虫といった独自路線のチョイスが魅力のスケールキットメーカー。バイク模型としては往年のレース車をリリースしていたりするが、なによりスーパーカブを手厚くリリースしているのが特徴。初代スーパーカブだけでなく、近年のモデルや、CT125ハンターカブを完全新規金型でキット化している。

バイク模型の組み立てに必要なもの

最低限、この工具とマテリアルは準備しよう
必要なものは模型用ニッパー、デザインナイフ、カッターマット、ピンセット、接着剤は用意しておきたい。接着剤を使うことに抵抗を覚えるかもしれないが、緑のキャップの流し込み接着剤を使うと手早くきれいに作業が進められるのでぜひ一度挑戦してみて欲しい。

模型用ニッパーは切れ味がいいものを用意しよう。今は片側だけが刃になっている、文字通りの片刃ニッパーが主流になっている。少々値は張るが切り口がきれいなので、デザインナイフで整える作業が楽になる。デザインナイフは「ランナー」と呼ばれる枠からパーツを切り出す時に残った部分(ゲート跡)をきれいに取り除く際に必要。

細かいパーツの取り付けなどにピンセットも用意しておこう。ピンセットの形状は好みだが、コストを意識するあまりに安物を買うと、小さなパーツを飛ばして紛失したりして模型を嫌いになる可能性が非常に高い。自己判断で構わないので、先端の精度が高くて頑丈そうな比較的高いものを選んで買うようにしよう。

バイク模型を組み立ててみよう

パッケージデザインにも定評のあるタミヤのキット。車体の赤がよく映える
では実際にバイク模型を組み立ててみる。今回は2022年にリリースされたタミヤ製 1/12 ドゥカティ スーパーレッジェーラV4をチョイスした。模型は基本的に新しいキットのほうがパーツ精度は高く、新しい試みが盛り込まれていて出来が良い。また、スーパーレッジェーラV4はドゥカティの技術の粋を結集して作られた世界限定500台のプレミアムバイク。他にはない形状や構造となっていて組み立て甲斐のあるキットといえる。

ドゥカティ スーパーレッジェーラV4とは

言わずと知れたイタリアのバイクブランド・ドゥカティが手がける公道走行可能なスーパースポーツクラス。よく公道でサーキット走行も可能なSSクラスのバイクに乗ることを疑問視する人が多いが、その持て余してしまう力云々というよりは、レースシーンなどで培った各メーカーの最新テクノロジーを体感できることに価値があるのだ。

イタリア語で“軽い”を意味するレッジェーラを冠したスーパーレッジェーラV4は、約1000ccという排気量を持ちながら、乾燥重量わずか159kg、およそ1/4の250ccクラスのバイク並の重量を実現。販売台数は世界限定500台。熟練工の手作業によってそのほとんどが組み立てられた、まさにドゥカティの持てる全てを注ぎ込んだマシンとなっている。

説明書に書かれているランナータグのアルファベットと番号をもとにパーツを探して切り出していく

パーツを切り出す際、パーツに近い位置に刃を入れると誤ってパーツを切る場合があるので注意しよう

パーツを合わせるところにゲート跡が残っていることもあるので、目立つデート跡はデザインナイフできれいに処理しておくとトラブルは少なくなる

ガイドとなるピンとダボ穴や形状になっているので、しっかり合わせよう。タミヤ製のキットはその精度が高いので組みやすい

パーツ同士を合わせたあとにその合わせ目に接着剤を流し入れることでピタッとくっつく。流し込み接着剤は乾燥が早いので、すぐに次の工程へ進むことができる

ここまでものの2、3分。早くもスーパーレッジェーラV4に搭載されているV4エンジンの全貌が見えてきた。この調子でどんどんパーツを組み付けていく

リアサスペンション。スプリングと軸には金属が使われていて実車を彷彿とさせる。この仕様はタミヤ製バイク模型ではお馴染み

このキットからチェーンは2パーツ構成。それまでは1パーツで表現されていた

2パーツにすることでチェーンの溝を再現している

スイングアームと本体の接続には付属のビスを使う。タミヤのキットは要所にビスを使うので、実車を組み立てているような気分が味わえる

ちなみにドライバーはあらかじめキットに同梱されている。市販のものを使うよりねじ山にフィットしてなめづらい

マフラーの取り付け。限られたスペースに通す工夫がみられる、組み立ての醍醐味の一つ

外装以外が組み上がった。実車ではなかなかみられない光景。カウルをつけるとほとんど隠れてしまうので、あえてこのままにしておくのも一興

ドゥカティのV4エンジンを観察。管の部分は付属の樹脂パイプを切り出したもの

カウルを取り付けた状態。エンジン部分などは隠れてしまったが、個性的なデザインなので見応え十分

サイレンサーがないので、逆側からでも見た目のギャップがないスーパーレッジェーラV4

左右に張り出した空力パーツが特徴的。これで、270km/hで50kgのダウンフォースを発生させることができるとか
組み立てにかかった時間はおよそ6時間。構造を楽しみながら組んだぶん少々時間がかかったところもあるが、比較的パーツ数が多めに感じられたので、そもそも組みごたえのあるキットといったところ。ちなみにカウルはビス留めされているだけなので、好みに応じて取り外した状態にすることもできる。

気軽に楽しむ組み立てオンリーな模型趣味は、ステップアップにも繋がりやすい

ちょっと高台に飾れば素組みのバイク模型も立派なインテリアに
タミヤ 1/12 スーパーレッジェーラV4は、キットも車種も新しいのでディテールがよく、素組みのままでも見応え十分。机や棚に直置きにするのではなくて、何か台をあつらえてそこに飾ればインテリアにもなってくれる。

今後、やっぱり塗装で仕上げたいと思ったら、もう一つ買ってこよう。この素組みを通じて塗装のための段取りがぼんやり見えてきているだろうし、何かあったときのパーツ取りにも使える。同じ模型を買ってはいけないというルールはないのだ。

誰しも最初からきれいに仕上げた模型を完成させたいと思うもの。そうやってハードルを上げてしまうと作り出すきっかけも作りづらい。自らが課したハードルで欲しくて買った模型を楽しめなくなるのはとてももったいない。どのジャンルの模型でもまず組み立てることを始めてみよう。その過程で、バイク模型に触れる機会もぜひ設けてみて欲しい。