Vol.669

MONO

15 JUL 2025

インテリアにもなる高級パズルで、日常に遊び心を

「パズル」と聞くと、ジグソーパズルやパズル雑誌を思い浮かべる人も多いと思うが、今回紹介するのは「メカニカルパズル」と呼ばれるもの。一見すると金属製のオブジェや、ただの箱に見えるかもしれないが、実は内部に仕掛けが施されていて、開けたり分解したりすることが可能である。これを外して元に戻すのが目的だ。今回はその中でも世界トップクラスの美しさと難易度、そして貴重さを誇る「STRIJBOS(ストライボス)COLLECTION」を紹介しながら、ただパズルで遊ぶだけでなく、リビングを彩るインテリアとしても使用してみることを提案する。

メカニカルパズルの世界

「パズル?なんだ、ただの知恵の輪ね」と思われる方もいるかもしれないが、今回紹介するメカニカルパズルは知恵の輪というよりも、どちらかといえば寄木細工のからくり箱のようなもの。内部のつくりはほとんど見えないようになっていて、ちょっとしたパーツの動きや音、内部の変化を頼りにゴールへ向かっていくのが楽しくもあり、難しくもあるパズルのジャンルだ。

そして、何より「ただの知恵の輪」と大きく異なるのが、そこはかとなく感じられる高級感。今回紹介する「STRIJBOS(ストライボス) COLLECTION」の中でも、一番お手頃な「STRIJBOS DOVETAIL CUBE」シリーズでも1万円超。最も大きな「STRIJBOS PACHINKO BOX」は税込20万円と、なかなかのお値段。それもそのはず、他の金属製パズルのように鋳造で作るのではなく、アルミや真鍮の塊から1パーツずつを削り出し、寸分の狂いもなく組み合わさるように精巧に作られているからである。

解くために力は一切要らない

解けた時の気持ち良さ!
国内で唯一、この「STRIJBOS COLLECTION」の輸入・販売を行っている、ゲーム・パズル会社「ハナヤマ」の広報の方にお話を伺う。

「4年ほど前に自社製品の通販を始めるにあたり、おもちゃ屋や本屋などでも販売している自社のパズル商品だけを売ってもしょうがないということで、弊社の商品も取り扱っているカナダのパズル総合ショップから金属製のパズルを仕入れるようになりました。

その中でも、ここにあるのはすべてウィル・ストライボスというパズル作家の方の作品で、アルミを削り出してアルマイト加工(電解処理によってアルミに皮膜を作る表面処理)を施してあるのが特徴です。そのためお値段は少々張りますが、非常に高品質で、まるでアート作品のようなインテリアにもなるパズルになっています」

かわいくて、美しくて、難しいパズルたち

例えばこの「STRIJBOS DOVETAIL CUBE」シリーズは、日本古来より木造建築の現場で使われてきた柱を延長するための技術「継手(つぎて)」の形に似ているが、継手の組み方・外し方を知っていても簡単には外れない。しかもこのシリーズは「01」から「03」まであって、すべて解き方が違うという。

STRIJBOS DOVETAIL CUBE 02
ジグソーパズルのピースのような「STRIJBOS 4 PIECE BLUE/SILVER」は、上下には簡単に動きはするものの、取り外そうとしても外れない。こういったコンマ数ミリ単位の精巧さが求められるパズルは、アルミ削り出し以外で作るのはなかなか難しいだろう。

STRIJBOS 4 PIECE BLUE/SILVER
女性に人気が高いのは「STRIJBOS GREEN APPLE」や「STRIJBOS HEART in HEART」。「GREEN APPLE」はへたの部分が動き、振ってみるとジャラジャラと音がする。どうやらそれだけを手掛かりに、リンゴの中に入っているリングを取り出すのが目的のようだが…?内部に何かトリックがあるようで、一筋縄には開かない。ストライボス氏いわく「このリンゴは、恋人に素敵なプレゼントを贈ったり、特別なリングを入れたりするための素敵なアイテムになっていると思います」とのこと。

STRIJBOS GREEN APPLE
「HEART in HEART」はゴールドの真鍮製の土台にアルミニウム製のハートが埋まっているかわいらしいパズル。ハートを取り出すだけなら簡単だが、そのハートがさらに3つに分解できる。難易度は中級ということで、パズルが得意でない人にも向いているが、外す過程の美しさにストライボス氏の独創性がうかがえるだろう。

STRIJBOS HEART in HEART
パズルとして、そしてアート作品として、より高級なものを持ってみたい方には「STRIJBOS BURR 7 MOVES」がオススメ。金属の加工難易度とコストが限界を超えているそうで、世に出回っている数はかなり限られているという非常に美しいパズル。これもまたアルミニウムの塊から削り出されているが、まるでクリスタルのような輝きを放っている。

STRIJBOS BURR 7 MOVES
一見、万力や文房具のように見えなくもない「STRIJBOS LOTUS FLOWER」は、その名の通り「蓮の花」をテーマにした作品。動くのは釘のような部品とリング状の部品のみで、どこにも蓮の花らしきものはないが…。パーツの細かな動きや音、感覚を頼りにパズルを解いていくと、あっと驚くような展開が待っていて、「蓮の花」の名前が意味しているものも分かるはず。なぜこの形なのか、内部がどうなっているのか。それはこのパズルが解けた人だけのお楽しみだ。

STRIJBOS LOTUS FLOWER
そして最後に紹介するのは、最も大きく、最も重く、最も値段が高い「STRIJBOS PACHINKO BOX」。日本で昭和初期に流行したスマートボール(≒パチンコ)のボール発射装置のようなパーツが取り付けられた大きな箱の仕掛けを解いて開け、内部にある2枚のコインを取り出すのが目的のパズル。一見するとただの箱だが、窓からは内部構造が少しだけ見えたり、取り出すべきコインが内側に張り付いているのも見えたりする。難易度はパズルマニアをも唸らせるほどで、箱の1つ1つにシリアルナンバー入り…と、ここまで来ると本物の「宝箱」。一家に一台、秘密のコインが隠された誰にも開けられない「宝箱」があるというのも面白いのでは?

ちなみに、これらのパズルに解答書は一切付属していない。そのため、解きたければ遊び続けて考え続けるのみ。こういったシビアさも、メカニカルパズルの面白さのひとつなのだ。

STRIJBOS PACHINKO BOX

STRIJBOS PACHINKO BOXの側面。日本のパチンコに着想を得たと言われている

世界を旅するデザイナーが生んだパズル

これらのパズルをデザインし、制作しているストライボス氏というのはどんな方なのだろうか?再びハナヤマの広報の方にお話を伺う。

「パズルがたくさん詰まったスーツケースを片手に世界中を旅しているオランダ人のパズル作家で、毎年、日本にもいらしては弊社やさまざまなパズル愛好家のもとを訪ねて、いろんなパズルを売ったり交換したりしています。でも、パズルで商売というよりも、もはやパズルが人生の一部のような方ですね」

ストライボス氏のカラフルで美しいパズル
オランダ生まれのウィル・ストライボスは1979年からパズルを制作し始め、日本では「明治サイコロキャラメル」を模した「明治サイコロキャラメルパズル」の作者としても有名。今回紹介したメカニカルパズルの製作は1984年から始めたと言われており、その美しさと難易度から世界中で高い評価を得ている。ただ、常に在庫を置いているのはハナヤマだけだそうだ。

ちなみに、「パズルは楽しそうだけど、そこまで高価なものはちょっと…」という方には、ハナヤマが製作・販売している鋳造パズルシリーズ「はずる」もオススメ。おもちゃ屋の他にも家電量販店のおもちゃ売り場や本屋で売っていることも多く、遊べるサンプルのパズルを見たことがある方も多いのでは。「はずる」の価格は、ほとんどが1000円台と手に取りやすいが、やはり「ただの知恵の輪」と違ってデザイン性に優れており、リビングに飾っておけるようなものばかり。箱に難易度が記してあり、簡単なものは子供でも解けるので、パズルの楽しみを味わうのにオススメだ。

高級パズルがある暮らし

タイパやコスパばかりが重要視される昨今において、部屋に無駄なものは置きたくないと考える人も多いのでは。そんな中で、今回紹介したような美しく遊び心のあるパズルをインテリアとしてリビングに置いてみて、たまには手を動かして頭を使う時間を作り、生活の中に彩りを加えてみるのはどうだろう。

あるいは来客時に「これって何?」と聞かれて、「実はこれ、パズルでさ、中にあるモノが隠されてるんだ」なんて楽しい会話が生まれることもあるかもしれない。もちろん、ゲームや謎解きが好きな人への贈り物としても喜ばれるはず。遊べる高級インテリア、メカニカルパズルがある暮らし、してみませんか?
撮影協力:funny meal

ハナヤマオンラインストア