Vol.301

KOTO

04 JAN 2022

一日の流れを変える小さな贅沢。朝時間を楽しむ暮らし

朝ごはんを食べなくなって、随分と長い月日が流れた。朝はとにかく慌ただしくて朝食のための時間が惜しくなった事や、運動量も減った今、一日三食は必須ではないと感じたことが主な理由だ。だが朝食無しの暮らしを続けていると、何故か一日の中にメリハリがないように感じてしまう。時には早起きをしてキッチンに立ち、朝ごはんをしっかり食してみたい。今まで過ごしてきた一日とは異なる風景が待っているはずだ。

朝ごはんのない暮らしの中で

大人のためのプライベートな時間は夜から。そんな想いをいつから抱くようになったのだろう。何かと忙しい朝は食べる事に時間を割く事が減り、知らぬ間に朝食抜きの生活が始まった。

キッチンに朝日が差し込む時間帯…調理をすることはほぼ皆無となっている
そのうち朝に空腹を感じることもなく、自然と朝食を欲しない身体になった。今では起床後、まずは目覚めのコーヒーをカップ一杯。覚醒して時間が来たら仕事を始め、昼まで食事を取る事はない。

いつの間にかコーヒーが朝食代わりに。「朝」を意識することも少なくなった
美味しいものはランチタイムかお酒と一緒に夕食で。友人や大切な人と食事をするのも、昼か夜のどちらかだ。つまり朝に食事をする行為はすっぽりと暮らしから抜け落ちてしまっている。しかし最近、そのことに物足りなさを感じるようになった。

今日はちょっと時間をかけてと用意した夕食も、食べてしまえばあとは就寝、記憶に残る食事となっていないことに気付く。特別な機会だからと奮発し、ちょっぴり豪勢なレストランで食したディナー。店の雰囲気はぼんやりと覚えているのに、選んだメニューや食した味は記憶の底に沈んでいる。

長く心に刻まれる朝の食事

思い返せば生き生きと蘇る食事の記憶は、多くが朝食だ。海外で初めての一人旅、安宿のシンプルな朝食でさえ少し緊張しつつ食べたこと。キャンプの朝に火を起こして作った朝ごはん、在り来りなベーコンエッグでさえ特別であったこと。旅館のテーブルに食べきれないほど並んだ朝食から、母や祖母が用意してくれた朝ごはんまで、どれも不思議と鮮やかに思い出せるのは何故だろう。

思えばこれは「朝」という時間が関係しているのではないだろうか。一日の暮らしが始まる朝は、暗闇に包まれた夜が明けて朝日が街を照らし、普段は目につかない場所まで見渡せるようになる時間だ。まだ誰も知らない新しい物語が始まる眩しいひと時。

何処にいても誰にでも、朝日と共に新しい一日は訪れる
周囲を照らす光りのように味覚も視覚もクリアなために、食材の色合いから食感までどれも鮮明に感じられる。朝食を食べた後はエナジーチャージを終えた身体となって、気力と活力に溢れている。

朝の光りの中で味わう朝食は、染み込むように記憶の中に
昨日の続きに今日があり、今日が終わればまた似たような明日が来る。そんな暮らしに少しの変化をつけるべく、朝食を取り入れてみようと試みた。毎日の習慣を変えるのではなく、少しだけ特別な一日を送るために。

朝食を食べるひと時を特別な出来事に

これまで朝食を食べない暮らしをしていたために、朝は自然と食欲が沸いてこない身体になっている。ならば朝食をとると決めた前日から用意はスタートしておこう。前日の夕食は軽めに早く済ませておく。何といっても、空腹は美味しい食事のために欠かせないスパイスになるはずだ。

そして何を作るかは前もって念入りに計画を。パンを焼くだけ、ご飯と味噌汁だけではせっかくの朝食の機会がもったいない。最初は無難なものからと、エッグベネディクトとポタージュスープを選んでみた。

ポタージュスープは前日の夜から用意しておき、朝は温めるだけの状態に。当日の朝は早起きしてキッチンへ向かい、鍋に湯を沸かしたら、そこに酢を少々入れて割った卵を静かに落とす。スプーンで白身をまとめ、固まってきたら水を張ったボウルに取り分けておく。

イングリッシュマフィンを焼いている間にベーコンを炒め、マヨネーズと卵黄、溶かしバターをボウルに入れて混ぜ合わせ、レモンを絞ってオランディ―ヌソースが完成だ。こんがり焼けたマフィンにベーコン、ポーチドエッグ、オランディ―ヌソースをかける。お気に入りの器を選び、温めたスープとともに食卓へ。

ビタミンカラーのエッグベネディクトは朝食にぴったりのメニュー
朝日が差し込む食卓で、まずはスープを味わってみる。温かなぬくもりが身体に浸透していくのが分かる。黄金色に輝くマフィンの香ばしさとカリカリに焼けたベーコンに、とろりと溶けた卵の黄身、そしてオランディ―ヌソースの風味が混じり合い、それらをしみじみと味わう至福のひと時となった。

朝の時間が充実すると、これから始まる一日が違う風景に

食事を終えたらコーヒーを。毎朝飲んでいる同じコーヒーなのに、朝食後ではその味までも変わってしまったかのようだ。目を覚ますために1杯が、食後の余韻に浸るため、そしてこれから続く一日に向かうための1杯に変貌を遂げている。

いつもの食卓、いつものコーヒー。けれど朝食が加わることで、違う味わいとなっている
朝食を終えた後に、その日一日がまだまだたくさん残っているのに気づく。休日の朝はいつものんびり起きていたため、午前中の時間が思ったよりも長いことに驚いてしまう。

普段と違う朝だから、いつもと異なる過ごし方をしてみよう。朝の散歩に出かけても良いし、いつもは後回しにしている気になるエリアの掃除に取り掛かってみるのも良いだろう。

早起きをすると一日が長く感じられる。朝食後の散歩は普段の通り道も異なる景色に変化する
一日二食に慣れている故、空腹感は感じない。昼食を抜いたら夕飯はいつもよりぐっと早めの時間となった。するとどうだろう、夕食後から就寝まで自由に使える時間がたっぷりあるではないか。早起きをして朝食を摂った事で、時間の流れが大きく変化していることに気付く。

毎日朝食を作るのは難しいが、週に1度くらいなら待ち遠しい楽しみとなりそうだ。次の週末は純和食も良いかもしれない。以前訪れた国の思い出の朝食や、まだ知らぬ国の新たなレシピに挑戦するのも面白い。

食べたいものを、自分流に。次の朝食は何にしようかと考えるのが楽しみになる
大切な人と過ごす時や、贅沢な時間を過ごしたい時には、豪奢なホテルに泊まった気分でシャンパンブレックファストも面白そうだ。朝ごはんと聞くと在り来りなメニューだけかと思いきや、考えてみれば様々な楽しみ方があるのに気付く。

変わらぬ日常に小さな変化を起こして

今日という一日は、昨日とも明日とも異なる一日だ。夜が明ければ朝焼けと共に訪れる新しい一日は、まだ読んでいない物語の1頁目のようなもの。これから起こる出来事は何だろうとわくわくとした予感とともに始まる日を過ごすために、時には少し早起きをして、自身で調理した朝ごはんを食べてみよう。

朝の時間を、そこから続く一日を充実したものに。朝食はそのスタートとなってくれるはず
毎日の変わらぬ暮らしに小さな変化を起こしてみれば、いつも見ている日常的な風景が新鮮なものへと変わっていくに違いない。真新しい一日の始まりとともに食す朝ごはん。幼い頃には当たり前だったことが大人になった今、小さな贅沢となっている。それを自分らしく楽しむことは、少し特別な一日を送るきっかけとなってくれるかもしれない。