石川直樹20年の軌跡をたどる大規模個展
1977年東京に生まれた石川直樹は、弱冠22歳で北極から南極まで人力で踏破し、23歳で七大陸最高峰の登頂に成功。その後も各地を縦横に旅して撮影を続ける人物だ。人類学や民俗学などの視点を取り入れた独自のスタイルを持ち、日常や世界を見つめ直す活動としても注目されている。
展示では、石川の初期から現在にいたるまでの活動を、写真だけでなく映像や、言葉、実際に使用してきた道具なども含めて、幅広く紹介。北極圏に生きる人々を写した『POLAR』、各地に残る先史時代の壁画を撮影した『NEW DIMENSION』、ポリネシア・トライアングルの島々をとらえた『CORONA』、日本列島の南北に連なる島々を追う『ARCHIPELAGO』、ヒマラヤの西端に位置する世界第2位の高峰に向かう遠征で撮影された『K2』など、各シリーズを通してあくなき冒険と探求を続ける石川の足跡と眼差しに触れられる。
「この星の光の地図を写す」とはなにか?
「見慣れた世界地図もそうだけど、それぞれの人が持っている地図が好きなんです。例えば旅先で道に迷ったときに、現地の人に道を聞いたりする。すると、その人なりの地図を描いて案内してくれたりする。その人だけが知っている通りが描かれていたり、小さなお店なんだけどその人にとっては思い入れのあるお店がでっかく描かれたりいたりする。旅先でもらうその人だけの地図が好きです」と石川は語る。
石川がシャッターを切り、太陽の光によって写し出された写真は、彼が旅をしてきたからこそ描ける地図だと言えるのだろう。
石川直樹の足跡をたどる
「DENALI」というシリーズは、石川が写真家として活動を始めたばかりの20歳の頃のものだ。デナリという北アメリカのアラスカ山脈最高峰で、初めての高所登山を経験した。初めて体験する6000m以上高度に、高山病になって頭はクラクラ。
写真で記述するという石川の一連の行為は、軌跡をたどる地図にもなり、語る言葉にもなる。
「仲間の後頭部が写ってしまったけど、この写真があったことで、その当時の苦労が今でも鮮明に思い出すことができる。今となっては写っていてよかったなと思います」
目の前の世界を写すのであって、決してその場所を写しているわけではない。きれいな風景を撮ってやろうと考えているわけではなく、自分とその場所との関わりを撮っているのだ。
石川と世界との関係性を写し出すのは、プラウベルマキナ670という中判カメラ。過酷な環境に晒され壊れやすいため、中古で買ったものを4台所有しながら20年以上使いまわしているという。
展示スペースごとの世界観を楽しむ
代わりに、会場のいたるところに石川が綴ったテキストが展示されている。写真のある空間でテキストを読むことで、自身の解釈をより深めてくれることだろう。
「DENALI」「POLE TO POLE」「POLAR」「ANTARCTICA」シリーズが展示されている最初のスペースは、広々とした白い空間だ。
自分と世界の関係を見つめ直す
「自分と世界」の1対1の関係は、刹那の感情であり、記憶であり、思考の起点や通過点にもなりうる。その関係は、部屋でくつろぐ瞬間にも、通勤途中の風景にも、休日の街並みにも見いだせるものかもしれない。
石川直樹「この星の光の地図を写す」
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(ギャラリー1・2)
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
開館時間:11:00〜19:00(金・土〜20:00)
休館日:月(祝日の場合は翌平日)
料金:一般 1200円 / 大学・高校生 800円 / 中学生以下無料
石川直樹 アーティストトーク
この展示会は終了しました
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(展示室内)
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
要整理券(当日14:00より整理券を配布。整理券は1人1枚のみ。参加には当日入場券が必要となります。また参加状況により入場制限を行う場合もございます。)
問合せ:03-5777-8600