Vol.19

KOTO

03 APR 2019

コミュニケーションは遊び心が大切。六本木で「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR 」開催

いつの時代もユーモアは、人々の気持ちや場を和ませコミュニケーションを円滑にしてくれる。デザインやアートにおいても、おもしろみがあり滑稽さをたたえたユニークな作品は、時代や国境を超えて私たちの心に響くものだ。六本木にある21_21 DESIGN SIGHTでは、2019年6月30日まで「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR 」を開催中。展覧会のディレクションを行うのは、時代を牽引し続けるアートディレクターの浅葉克己だ。彼が考えるユーモアなかたちや表現とはどのようなものがあるのだろうか? 「ユーモア」をテーマにしたユニークな展覧会を紹介する。

福田繁雄 「アンダーグラウンドピアノ」(1984年)

ユニークな広告作品で活躍。浅葉克己がディレクションを務める展覧会

浅葉克己(あさば・かつみ) 1940年横浜生まれ。アートディレクター。桑沢デザイン研究所、ライトパブリシティを経て、1975年浅葉克己デザイン室を設立。中国に伝わる生きている象形文字「トンパ文字」に造詣が深い。卓球六段。
アートディレクターの浅葉克己は、西武百貨店の「おいしい生活」やキューピーマヨネーズの「野菜シリーズ」など、数多くのユーモアを感じる名作ポスターやCMを制作・発表し、日本の広告史を築いてきたひとりである。
深圳(しんせん)、香港、ニュージーランド、メキシコ…。世界各地を旅しながら、様々な人々やモノたちに出会ってきた浅葉。彼にとって「ユーモア」はコミュニケーションにおいて最も重要な"センス"のひとつだ。
今回の「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR 」では、浅葉のインスピレーションのもととなっている国内外から集めてきた資料やファウンド・オブジェ(一度なんらかの目的で使用された物)とともに、浅葉が共鳴する30組以上のデザイナーやアーティストの作品が一堂に集結した。

会場風景(ギャラリー2)
「時間軸や空間軸を超えて、会場は必ずゴチャゴチャにしたい」という浅葉の考えのもとから、会場には作品が互いに干渉し合いながら配置されている。モノとモノが共鳴しあうようなユニークな空間に、どこか愉快さを感じることだろう。

パッと見てわかるユーモア、じっくり見て感じるユーモア

渡辺紘平「卓球ラケットスタンド」(2019年)
「ユーモア」とひとえに言っても、その在り方は様々だ。
浅葉自身も人間の笑いがどこから来るのか、ユーモアの本質についてこう語る。「ひとりで笑うこともあるが(孤独な笑い、ブラックユーモアというのか)、人間は誰かと会って、これ面白いよねと同意して笑うこともある。時代や国や文化によって異なるユーモア感覚もあるが、すべてを超えた笑いも存在するのではないだろうか」

井上嗣也「Sense of Humor」(2019年)

中村至男「7:14」(2010年)

会場風景(ギャラリー1)

確かに展覧会の作品の中には、誰もがおかしみを感じるような包括的なユーモアもあれば、自分だけが密かにクスリと笑ってしまうユーモアもあるだろう。失笑するもの、微笑ましいもの、苦笑するもの…さまざまなレベルのユーモアが集まっている。

会場風景(ギャラリー1)

パッと見ではわからなくても、じっくり見ることでそこにユーモアが隠されていることに気づくものもあるはずだ。

会場風景(ギャラリー1)

「ユーモア」という視点ひとつとっても、表現や捉え方は千差万別。他にはないユニークな展覧会となっている。

会場風景(ロビー)

会場風景(ギャラリー1)

会場の中には、浅葉が手がけたグラフィックデザイン作品も展示されている。

会場風景(ギャラリー1)

一方で浅葉の仕事にインスピレーションを与えたデザイナーやアーティストの作品、ファウンド・オブジェも並ぶ。「ユーモアは、コミュニケーションの本質だ」という浅葉自身がユーモアをどのように捉え、どのように表現してきたかを感じ取ることができるだろう。

会場風景(ギャラリー1)

和田 誠「似顔絵 」

福田繁雄 「野菜と顔」(1985年)

ロン・アラッド「Where Are My Glasses? Under」(2018年)

さまざまなユーモアのかたちと表現

一人でユーモアを感じるもよし、誰かと来てその面白さを共有するのもいいだろう。人によって作られたものだけでなく、自然の中から感じられるユーモアもある。価値があるとされているものにも、いまだにその価値が見出されていないものにも存在する。
ユーモアは人びとの営みから生み出されるもの。「ユーモア」という切り口で構成されたユニークな展示作品の中には、共感できるもの、共感できないものもあるだろう。展示を通して、自身のコミュニケーションのあり方や感覚のありかを発見してみてほしい。

ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR

この展示会は終了しました

会期:2019年3月15日(金)〜 6月30日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
休館日:火曜日(4月30日は開館)
開館時間:10:00〜19:00(入場は18:30まで)
※六本木アートナイト特別開館時間:5月25日(土)10:00 - 23:30(入場は23:00まで)
入館料:一般 1,100円、大学生 800円、高校生 500円、中学生以下無料