いつの時代もユーモアは、人々の気持ちや場を和ませコミュニケーションを円滑にしてくれる。デザインやアートにおいても、おもしろみがあり滑稽さをたたえたユニークな作品は、時代や国境を超えて私たちの心に響くものだ。六本木にある21_21 DESIGN SIGHTでは、2019年6月30日まで「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR 」を開催中。展覧会のディレクションを行うのは、時代を牽引し続けるアートディレクターの浅葉克己だ。彼が考えるユーモアなかたちや表現とはどのようなものがあるのだろうか? 「ユーモア」をテーマにしたユニークな展覧会を紹介する。
ユニークな広告作品で活躍。浅葉克己がディレクションを務める展覧会
アートディレクターの浅葉克己は、西武百貨店の「おいしい生活」やキューピーマヨネーズの「野菜シリーズ」など、数多くのユーモアを感じる名作ポスターやCMを制作・発表し、日本の広告史を築いてきたひとりである。
深圳(しんせん)、香港、ニュージーランド、メキシコ…。世界各地を旅しながら、様々な人々やモノたちに出会ってきた浅葉。彼にとって「ユーモア」はコミュニケーションにおいて最も重要な"センス"のひとつだ。
今回の「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR 」では、浅葉のインスピレーションのもととなっている国内外から集めてきた資料やファウンド・オブジェ(一度なんらかの目的で使用された物)とともに、浅葉が共鳴する30組以上のデザイナーやアーティストの作品が一堂に集結した。
「時間軸や空間軸を超えて、会場は必ずゴチャゴチャにしたい」という浅葉の考えのもとから、会場には作品が互いに干渉し合いながら配置されている。モノとモノが共鳴しあうようなユニークな空間に、どこか愉快さを感じることだろう。
パッと見てわかるユーモア、じっくり見て感じるユーモア
「ユーモア」とひとえに言っても、その在り方は様々だ。
浅葉自身も人間の笑いがどこから来るのか、ユーモアの本質についてこう語る。「ひとりで笑うこともあるが(孤独な笑い、ブラックユーモアというのか)、人間は誰かと会って、これ面白いよねと同意して笑うこともある。時代や国や文化によって異なるユーモア感覚もあるが、すべてを超えた笑いも存在するのではないだろうか」
確かに展覧会の作品の中には、誰もがおかしみを感じるような包括的なユーモアもあれば、自分だけが密かにクスリと笑ってしまうユーモアもあるだろう。失笑するもの、微笑ましいもの、苦笑するもの…さまざまなレベルのユーモアが集まっている。
パッと見ではわからなくても、じっくり見ることでそこにユーモアが隠されていることに気づくものもあるはずだ。
「ユーモア」という視点ひとつとっても、表現や捉え方は千差万別。他にはないユニークな展覧会となっている。
会場の中には、浅葉が手がけたグラフィックデザイン作品も展示されている。
一方で浅葉の仕事にインスピレーションを与えたデザイナーやアーティストの作品、ファウンド・オブジェも並ぶ。「ユーモアは、コミュニケーションの本質だ」という浅葉自身がユーモアをどのように捉え、どのように表現してきたかを感じ取ることができるだろう。
さまざまなユーモアのかたちと表現
一人でユーモアを感じるもよし、誰かと来てその面白さを共有するのもいいだろう。人によって作られたものだけでなく、自然の中から感じられるユーモアもある。価値があるとされているものにも、いまだにその価値が見出されていないものにも存在する。
ユーモアは人びとの営みから生み出されるもの。「ユーモア」という切り口で構成されたユニークな展示作品の中には、共感できるもの、共感できないものもあるだろう。展示を通して、自身のコミュニケーションのあり方や感覚のありかを発見してみてほしい。
ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR
この展示会は終了しました
会期:2019年3月15日(金)〜 6月30日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
休館日:火曜日(4月30日は開館)
開館時間:10:00〜19:00(入場は18:30まで)
※六本木アートナイト特別開館時間:5月25日(土)10:00 - 23:30(入場は23:00まで)
入館料:一般 1,100円、大学生 800円、高校生 500円、中学生以下無料
CURATION BY
フリーライター・エディター。専門はコミュニケーションデザインとサウンドアート。ものづくりとその周辺で起こる出来事に興味あり。ピンときたらまずは体験。そのための旅が好き。