Vol.35

FUNCTIONAL

14 MAY 2019

帽子をかぶってどこへでも。「A WANDERING TAILOR」の魅力

帽子といえば、紫外線、雨、暑さ、寒さなど、様々な外的影響から頭部を守るアイテムだ。一方で帽子は顔周りの印象を左右するため、ファッションアイテムとしてついつい収集してしまうという方も多いだろう。かくいう私も帽子好きのひとりだ。しかしファッションに合わせやすい上にファンクショナルで、メンテナンスもしやすく、頭にしっかりフィットする…なんていう理想の帽子にはなかなか出会えない。
しかしある日出会ってしまったのだ、「A WANDERING TAILOR」の帽子に。

おしゃれでありながら機能的。A WANDERING TAILORの帽子

あらかじめデザインに組み込まれたタブ部分を、フックに引っ掛けて陳列されているハット。この時点でファンクショナルなアイテムの予感がするではないか。
張り感のある生地で作られた帽子は、アウトドアアイテムのような質感と洗練されたシルエットの掛け合わせが斬新だ。近くに寄って見てみれば、細部までこだわったデザインであることがわかる。帽子好きの好奇心を刺激するその姿に、思わず手に取ってかぶった。

これは…!思わず唸るフィット感。私のために作られた帽子なのだろうか?すでに運命を感じる。
音楽フェスや仲間とのキャンプなどで年に何度かはアウトドアを楽しむ私。晴れた日の海や山の日差しは強く、つばが広い帽子を探していた。さらに風が強い日に活用できるストッパーがついていれば文句なし。そんなアウトドアに必要な機能が、この帽子には詰め込まれている。
アウトドアを楽しむ時、サングラスをかける方も多いだろう。サングラスをかける必要がない時は、ご覧の通りにサイドの隙間にサングラスのモダン部分を差し込めばOK。こんなに機能満載なのに、見た目に無駄な要素がないのが嬉しい。
カーキグレーの生地は、チノ素材とも相性抜群だ。つば広のシルエットは、不思議なことにどこかエレガントな雰囲気があり、ロングスカートにも合わせられた。
デザイン、機能、フィット感。全てにおいてバランスがいい、かぶれば納得のこの帽子。いったい誰がつくったのだろうか?

老舗帽子会社に新しい風を。ブランドに込められた思い

展示会に立っていたのは、前田崇雄(まえだ・たかお)さん。A WANDERING TAILORの主宰者として、企画・デザイン・制作・営業・販売を一貫して行う人物だ。
前田さんは、昭和16年創業の株式会社倉田に所属。A WANDERING TAILORの活動によって、長年帽子の卸製造業を行なう老舗の会社に新しい風を吹かせている。

前田さんがかぶる帽子も、同じくA WANDERING TAILORのもの。ワークキャップとしても、ファッションアイテムとしても活用できそうだ。
「帽子を作るのが大好きで、毎日のようにこんな機能があったらいいなぁとか、こんな構造が面白いかも、とアイデアを練っては試作していたんです。そうしてできた帽子を誰かに使ってもらいたくて、ミシンを運んでその場で帽子を作るというスタイルで、3年前にA WANDERING TAILORをスタートさせました」と、前田さん。
WANDERINGという言葉に「放浪する」「うろうろする」などといった意味がある通り、様々なイベント会場で展示・実演販売を行う、さすらいの帽子屋なのだ。

張り感がある生地を使用し縫製方法にもこだわっているため、芯が入っていなくても型崩れしにくい。
A WANDERING TAILORの帽子は、年代や性別などターゲット層を決めず、アウトドアなどの実用アイテムか、シティ用のファッションアイテムかといった使用シーンを特に絞っていない。なぜそうしているのかと伺うと、
「僕は被り手を選ばない帽子を作りたいんです。そうすることで、帽子を気に入って購入してくれた男性から『ゴルフでかぶったらプレーしやすかった』というフィードバックがあったり、中学生が買ってくれたり、ファッションアイテムとして気に入ってくれた女性がいたり…。色々な場所で色々な人と触れ合えば、新しいアイデアの発想にも繋がると思います」と、語ってくれた。

商業施設などで帽子づくりの実演を行うことも
そこで気になるのが前田さんの帽子づくり。実際に制作現場を見せてくれるというので、工房へと伺った。

実力派の職人が魅せる帽子づくり

こちらがA WANDERING TAILORの工房。意外とスッキリしたスペースだ。
「メインで使用している生地が、コーデュラ®という防水と耐久性に優れたもの。これを使うことによってアウトドアでの使用にも耐えられるタフな帽子になるんです」(前田さん)

パーツとなる生地は1枚ずつ手作業で切り出している
「僕はパターンをひいて帽子を作りますが、もう1人のデザイナーは立体裁断で作ります。下積み時代にどこで修行してきたかで作り方も作る形も変わってくるところが、帽子の面白いところでもありますね」(前田さん)
前田さんは最終的なデザインを決めるまで何度も試作するため、新しく帽子をデザインする時は1〜2週間ほどかかるという。

縫製は、帽子職人としての熟練の腕前のみせどころ。

切り出した生地を正確かつスピーディーに縫い合わせていく。そのミシンさばきに脱帽。

昔ながらの道具を駆使しながら丁寧に仕上げていた
前田さんの手にかかれば、わずか3〜4時間で完成するそうだが、高い技術が必要なので大量生産は難しいという。生産数に限りがある代わりに、サイズの調整などの細かい変更については柔軟に対応しているため、あなただけのお気に入りの帽子がみつかるかもしれない。
まずはかぶって試してみたい!という方は、公式サイトのブログかInstagramでイベント情報をチェックしてみよう。一度かぶればそのファクショナルな魅力の虜になるかもしれない。この帽子と一緒に色々な場所へ出かけたくなるだろう。

A WANDERING TAILOR