1本1億7,300万円で落札されるウイスキー
世界5大 産地 ウイスキーと言われているのが、スコッチ、バーボン、アイリッシュウイスキー、カナディアンウイスキー、そして余市や山崎など、今や世界中で入手困難になっているジャパニーズウイスキーである。
世界中でウイスキーブームを証明するように、2018年には世界最古の国際競売会社サザビーズのオークションで山崎50年が3,250万円、同年にロンドンで行われた美術品などを扱うクリスティーズ社のオークションでは、マッカラン60年がなんと1億7,300万で落札されるという事もあった。
インドにスコッチのような本格的なウイスキーが誕生
スコッチのような本格的なウイスキーが作られ始めたのはまだここ十数年の話であり、そのうちの一つが今回紹介するポールジョンである。ポールジョンが日本に輸入され始めたのは2017年からなので、まだ多くの人には馴染みのないウイスキーかもしれない。
伝説の聖地ゴアで作ったポールジョンピーテッド
この地域の水はアラビア海からの偏西風が運び山に降り濾過されたものだ。ウイスキーにとっては水や自然環境は味や香りを左右する重要な要素だ。このような自然の恵みが豊かな場所で作られたウイスキーというだけでワクワクしてしまう。
そのエンジェルズシェアの量は製造量に対して年間8%にもなる。故に長熟する事が出来ず、また醸造をコントロールしにくいなど様々な悪条件を抱えているのだが、実はその熟成の早さを上手く利用することで、南国らしいリッチで複雑なアロマフレーバーを生みだしているのだ。
ポールジョンは5種類のウイスキーをリリースしているのだが、その中でピーテッドという商品はウイスキーの製造過程の中で大麦を燻す際にピート(泥炭)という天然燃料をより多く使っているため、他のシリーズよりもスモーキーな香りと味わいが強い商品だ。
ポールジョンは7年熟成で作られている。一般的にウイスキーで7年では早熟となるが、このポールジョンピーテッドは、世界で最も影響力の高いテイスターのジム・マーレー氏が、毎年1,000本以上のテイスティングをしスコアリングした「ウイスキー・バイブル」にて96点という非常に高い評価を受けている。
薫るピートは上品で味わいは力強く
はっきり言って想像以上の完成度。オイリーでとろみがあり、スパイシーで力強く、ほのかな甘味に上品さを感じる。潮っぽいピートの香りがして、トロピカルな味わいは南インドの自然豊かな環境ならではの味わいだ。
ウイスキーを家で一人ゆっくり飲むのは至福の時間
私が今回ポールジョンピーテッドと一緒に合わせたい写真集がこちら。インド人フォトグラファーのラグビールシン。インドのウイスキーにインドの景色が合わないわけがない。彼が亡くなった18年後の2017年に出版された、ベスト・アルバムのような写真集だ。
コツはパラパラと先にページをめくりたくなる気持ちを抑えて、ページをゆっくり一枚めくり、グラスを手に取り香りを確かめて、これもまたゆっくりと少量を口に含む。一息ついたら写真に目をやる。何度見返しても一枚の写真に新たな発見をするだろう。
飲み急いでもいけない。ストレートに疲れてきたら多少加水しても良い。つまみにはオリーヴでもあれば充分だ。
大人にだけ許された嗜み方。贅沢な時間。
ラグビールシンの構図や色使いの芸術性とパワフルでエネルギッシュなインドのリアリティーが融合した芸術作品は、南インドの環境そのものをボトルに濃縮させた芸術品ポールジョンピーテッドそのものといえる。まさに商品の名前にもなっているポール・P・ジョン社長の夢「造る以上は、世界を唸らせるウイスキーが造りたい」から生まれた情熱の結晶である。
このお気に入りの写真集とポールジョンピーテッドの至高のマリアージュを是非楽しんでいただきたい。