秋は私たちにとって回復の季節かもしれない。照りつける真夏の太陽と容赦ない湿度から解放され、体力と気力、そして食欲が戻ってくるシーズンだ。夏に失われたものを取り返すために、自然の恩恵に満ちた食材の力を借りてみよう。この秋、食生活に取り入れたいのが雑穀だ。栄養素が高く、様々な食材と合わせやすくアレンジも多種多様に楽しめる。自分らしい味わい方を見つけて、バランスのとれた美味しい食生活を始めてみたい。
夏バテで疲れた体に栄養補給を
暑い夏がようやく過ぎ去り、ほっとひと息つける季節となった。酷暑に見舞われていたあの長い間、毎年感じるのが食欲の減退だ。焼いたり炒めたりと火を使う料理はもちろんのこと、キッチンに立つのでさえ億劫になってしまう。従って食べるのは冷たいもの、さっぱりしたもの、調理がしやすく簡単なものが多くなる。結果、夏の終わりには少々体調を崩してしまうのだ。
秋になった今こそ栄養たっぷりの食生活を始めよう。現代では多くの食材がスーパーフードと称され、手軽に手に入り食べやすいレシピも数多く紹介されている。例えば”豆”。古代から世界各地で食文化を担い、私たちの暮らしに欠かせないもののひとつであった。
また、グルテン摂取量が気になる方にぴったりなのがワイルドライス。噛み応え抜群でつい白米を食べ過ぎてしまうという人におすすめで、食生活を見直すきっかけとなってくれる食材だ。
そして今回ご紹介するのが、自然の生命力を持つ雑穀だ。長い歴史を持ち栄養価が高く、やはりスーパーフードとして注目を集めている雑穀で、体の芯から健康的な生活を目指してみよう。
古くから伝わる雑穀のパワーを知って
雑穀と聞くと「白米を炊く際に混ぜるもの」というイメージだけで、実際にはどんなものなのかピンと来ない方も多いはず。そもそも穀物とは植物から得られる食材で主に種子を指しており、それらは主穀(しゅこく)、雑穀(ざっこく)、菽穀(しゅくこく)、擬穀(ぎこく)の4つに分類されている。
"主穀”とは主食に使用される『世界三大穀物』と呼ばれる米、小麦、とうもろこしのことを指している。”雑穀”は主食に使用されるイネ科の中で小さい果実をつけるひえやあわ、きびが挙げられる。”菽穀”は大豆や小豆などのマメ科の種子、”擬穀”はイネ科以外の穀類の種子で、アマランサスやキヌアなどがある。しかし現代の日本では「主食以外の穀物」の総称を”雑穀”と定義しており、そこには”菽穀”や”擬穀”も含まれている。
雑穀は食物繊維が豊富で、ポリフェノールなどの抗酸化物質を多く含み、カルシウムやマグネシウム、鉄分など、日常の食生活では得ることが難しい栄養素をスムーズに補える。また雑穀はもちもち、プチプチとした様々な食感が楽しめるのも特徴だ。
また煮込めば雑穀からでんぷんが溶け出し、とろみを付けることもできる。炒め物やサラダに入れてボリュームアップしたり、粒状の形や色を活かして料理に彩りをもたらすことも可能だ。
また日本人の主食となる白米はその美味しさ故、つい食べ過ぎてしまうことも。雑穀を混ぜて炊けば、歯ごたえのある食感のためよく噛んでじっくりと味わうので、早くに満腹感が感じられ、量が増えてしまうこともない。栄養を摂り健康を意識しつつ、食べすぎ防止にも役立つ力強い存在なのだ。
雑穀を美味しく食べるために
では早速雑穀を調理してみよう。雑穀は他の食材を調理する際にそのまま加えるか、あるいは加熱したものを加えるかのいずれかになる。加熱する場合は茹でる、炊く、蒸す方法があるが、ここでは簡単に茹でる方法と、もっとも食べやすい白米に混ぜて炊く方法をご紹介しよう。
まず目の細かいザル、もしくは量が少ない場合には茶こしに好きな雑穀を入れ、さっと洗う。この時にもみ殻が混ざっている場合、水に浸して浮かんできたものを捨ててから洗おう。
茹でる際はお湯をたっぷり沸かし、あわ、きびの場合は5〜7分、ひえは4〜6分、キヌアやアマランサスは8〜12分ほど茹でる。大きめの雑穀はこれよりも長めの茹で時間で、黒米や赤米は15〜20分ほど必要だ。何度か試して好みの硬さになる時間を探してみよう。なお、茹でた後は加熱前の約2倍の分量となる。
黒米や赤米など、大きめの粒の雑穀を白米と炊く際は、耐熱容器に黒米、赤米を大さじ1杯入れ、熱湯を注ぎ、30分以上浸しておく。白米を炊く前にレンジで600Wで30秒温め、白米とともに炊飯器に入れ、通常より大さじ1〜2杯ほど増やした水分量で炊けば完成だ。
なお、雑穀は多めに茹でて冷凍保存することも可能だ。水分を含んだまま冷凍できるよう、茹でた雑穀がまだ熱いうちにラップに小分けにし、粗熱が取れたら冷凍庫で保存。3週間ほどで食べきるようにしよう。
アレンジは自由自在。雑穀を多くのレシピで楽しもう
雑穀を初めて食べる人におすすめなのは、やはり白米と混ぜたもの。どのおかずにも合わせやすく、彩りや食感がより豊かになる。例えば赤米は白米と混ぜて炊くと、きれいなピンク色に変化する。黒米や緑米も入れて、色の変化を楽しんだり、もちきびやもちあわを入れるとプチプチとした食感が味わえる。
また古代よりアンデス地域で栽培されていたキヌアはヒユ科アカザ亜科アカザ属に分類され、今では世界的にスーパーフードとして注目されている雑穀。食物繊維やカルシウム、鉄分などのミネラルが豊富で、プチプチとした食感が特徴だ。茹でたものをサラダに加えたり、ドレッシングに混ぜて使ったり、ソースに入れて使用するのもおすすめしたい。
調理時間がない人へ。食べ方豊富なスープを取り入れて
雑穀が体に良いのは分かるけれど、茹でて調理する時間がない、という人もいるだろう。そもそもあまり自宅でご飯を炊く機会が多くないという場合もあるはずだ。そんな方におすすめしたいのが、雑穀入りスープ。多くのメーカーが展開している雑穀入りスープだが、今回ご紹介するのは宮崎県都城市で設立された健康、美容に特化した自然食品を扱うブランド『タマチャンショップ』の三十雑穀スープだ。
お湯で溶かすだけ、という手軽さだから、忙しい人でも毎日の食生活に難なく取り入れることができ、スープだけでなく他のレシピへのアレンジも可能なのが嬉しい。どれにしようかと悩んだ末、今回購入したのは三十雑穀みそスープと、トマトスープだ。
みそスープはわかめや豆腐を入れてそのまま味噌汁に、あるいはサバの味噌煮や焼きおにぎりに。トマトスープはお湯で溶かしてそのままスープに、あるいはリゾットの風味付けやパスタソースの代わりにしても。雑穀を味わうのが初めてという人にも、調理する時間がない人にもおすすめしたい。
雑穀のパワーでエナジーチャージを
暑さのために減退していた食欲が徐々に戻ってくる秋は、きのこや栗、さつまいもなど魅力的な旬の食材が出回り、夏に失くしていた気力や体力も復活する時期。心も体も整うように、食材の栄養素まで考えて豊かな食生活を送りたい。
日本最古の歴史書『古事記』や『日本書紀』にも登場する雑穀は日本だけでなく、古代インカ帝国時代や三千年前の中国でも食されていたと記録されているほど長い歴史を持つ食材。多くの栄養素を含むだけでなく、ご飯やスープ、メイン料理、サラダなどに入れて新たなレシピにチャレンジできる食材だ。
涼しくなり体調が戻ってきた秋にこそ、再び心底元気になれるレシピを試してみたい。自炊で自分の体を整える大切さを、小さな粒にパワーを秘めた雑穀がきっと教えてくれるだろう。
三十雑穀スープシリーズ タマチャンショップ
CURATION BY
31年間暮らした英国から日本へ。海と山と川に囲まれた、小さな村での暮らしが始まりました。