高級ホテルも扱う味。忘れられない香りの体験
現在はその味が認められ、フランスで最も権威あるグルメ誌「Le Guide des Gourmands」の紅茶部門で金賞を受賞し、さらに五つ星ホテルや一流レストランでも提供されている。
私がBETJEMAN & BARTONと出会ったのも、出張で訪問させていただいたとあるフランスの星付きホテルだった。ディナーの後、ホテルの方が大切そうに箱に入れて持って来てくれたのが、BETJEMAN & BARTONのお茶だったのだ。美しい宝石のように並べられたお茶から一種類を選ぶという体験も素敵だったが、さらに運ばれてきたお茶を嗅いで、「まるで香水のよう」と、ふわりと漂う優雅な香りに参ってしまった。
フレーバーティーが主流のフランスと、イギリス文化との融合
フランスのお茶文化のユニークな点は、例えば茶葉を発酵させるなどして、香りの違いを生む中国茶とは違い、紅茶にさまざまなフレーバーを加えて香りを作る、という点である。そのため、足し算されて出来上がった味わいは非常に華やかでデコラティブなのだ。
そんなフランスのお茶文化に加え、創業者のアーサー・ベッジュマン氏が、紅茶の茶葉が持つ味わいや香りをいかに楽しむか、というイギリスのお茶文化の知識を融合させて作り上げたのが、BETJEMAN & BARTONだ。BETJEMAN & BARTONにも様々なフレーバーティーが用意されているが、そのいずれも、花や果物や茶葉のどれか一つが強く主張するのではなく、豊かに調和し合っている。
けれども、もしパリに来ることがあれば、ぜひ実店舗でBETJEMAN & BARTONのエスプリを感じて欲しいと思う。歴史あるパリの雰囲気を通して茶葉を購入する体験は変え難いし、100グラム10ユーロ以下で手に入る種類もあるため、手頃なお土産にも最適なのだ。
お店は決して広くはないけれど、天井までずらりとお茶が並び、専門店らしい濃密な雰囲気を味わうことができる。店内には250種類ものお茶が用意され、100グラムから購入可能。また種類は限られるが、使いやすいサシェタイプ(ティーバッグ)も販売されている。
好みに合わなければ価値がない。2種類の計り売り茶葉と、サシェを購入
“Les plus précieux thés du monde n’ont aucune valeur s’ils ne sont pas à votre goût. Corsé, léger, fumé ou parfumé… il existe un thé pour chaque heure du jour et de la nuit. A vous de faire votre choix, en fonction de l'instant de la dégustation et de l’humeur du moment.”
世界で最も価値のあるお茶も、あなたの好みに合わないのであれば価値がありません。フルボディ、ライト、スモーキーさ、また香りの豊かさ……。昼間や夜など、それぞれの時間のためにお茶があります。味わう瞬間とその時の気分に応じて、選択するのはあなた次第です。
専門店は選べる楽しさがあるけれど、選べるからこそ自分の知識不足を痛感し、つい敷居の高さを感じてしまうのは、きっと私だけではないはずだ。けれどもそんな人に、なんて寄り添ってくれる精神なのだろう。お茶も小難しいことを考えず、まるで香水やアロマを選ぶように、その時々の自分の感性に合ったものを選べば良いのである。
BETJEMAN & BARTONには、紅茶の他にも中国茶や緑茶、ルイボスティー、ハーブティーなど、さまざまな種類が用意されている。そんな中から今回筆者が購入したのは、「Pouchkine(プーシキン)」と「C'est une belle histoire」、そしてサシェタイプの「Citronnelle(シトロネラ)」である。
「Pouchkine」は、セイロンと中国の紅茶をベースに、ベルガモット、グレープフルーツ、オレンジなどの柑橘類で香り付けがされたお茶で、力強く、目が覚めるような爽やかな香りが気に入って選んだ。
さらに「Citronnelle」のサシェ。こちらは私がホテルで飲ませてもらった思い出のハーブティーで、家に置きたいと思っていた品である。
ここからは、この3つのお茶を実際に楽しんだ様子をレポートしたいと思う。
バターが香る朝ごはんと、Pouchkineとの組み合わせ
油が多めの朝食を、「Pouchkine」のキリッとした爽やかな香りが洗い流してくれる。また、眠気でまだぼんやりとしてしまう朝に柑橘類の香りはぴたりと合い、香りを嗅ぐたびに目を覚ましてくれるようだった。
午後3時のおやつと、C'est une belle histoire
今回購入したものの中で、果物や花など、一番さまざまな香りを楽しめるこのお茶は、じっくり味える一日の余白の時間にぴったりである。名前だけではなく香りもとてもポエティックで、口に含んだ瞬間は砂糖菓子のようなやわらかな甘さを感じるが、フルーツの酸味が混ざり合い、甘さにしつこさがない。これはなんの香りだろうと、丁寧に一文が練られた本を読むように、一口一口味わいたくなるようなお茶である。
ソワレに楽しむ、シトロネラのハーブティー
深呼吸をするように、ゆっくりと香りを味わう。仕事や生活など、様々なことで忙しなくなった心と頭の中を、クリアな香りは洗い流してくれるようだった。
朝、昼、夕方、夜。その時々の気分に相応しいものを選べる、魅力的な香りのお茶を作っているBETJEMAN & BARTON。このお茶があるだけで、気持ちにゆとりができ、感性が洗練されるように感じた。みなさんも、お茶の香りが織りなす詩的な時間を、暮らしに取り入れてみてはいかがだろうか。