神話から現代まで、人々に愛される果物いちじく
しかし振り返ってみると、いちじくそのものを自分で買ったことはあまりないように思う。そういえば、いちじくがどのように育ち、どのように収穫され、そしてどれほどの種類があるのか考えたこともなかった。
この秋は、もっといちじくの魅力に触れてみたい。そんな想いでたどり着いたのが、三重県桑名郡の「THE SIMIZ(ザ・シミズ)」だった。
THE SIMIZが展開する「THE FIG」
「いちじくってこんなにおいしいんだよ、ということを知ってほしいと思って始めました。きっと皆さんが想像する以上においしいし、世界中に沢山の種類がある面白い果物。その魅力を知っていただきたかったんです」
日本で販売されているいちじくは、実は8割ほどが「桝井ドーフィン」という品種。一般的にイメージされるいちじくは、おそらくこの品種なのではないだろうか。かくいう私もいちじくといえばこの色かたち、つまり、赤紫色から淡い黄緑色へのグラデーションカラーで涙型のかたちだと思い込んでいて、今回ハウスの中を見せていただいて驚いた。
「いちじくって赤色ばかりではないんです。黄色や緑色の品種もあるし、中には縞模様のものも。色も味も、本来とても豊かなフルーツだと思っています」
皮ごと食べて!旬の栄養を丸かじり
「いちじくって本当は太陽の光がそこまで必要ない果物なんです。いちじくが生っている庭を見かけることがあると思いますが、そうして太陽の下で育ててしまうと、暑さで味が薄くなるし、すぐに身が落ちてしまうんですよね。だからしっかり遮光をして、温度の管理を徹底し、なるべく長く樹上で育つように目を配っています」
さらに「THE SIMIZ」のいちじくセットは、樹上で完熟したものを採れたてで発送している。だから中身は、基本的にはお任せ。その時々で一番おいしいいちじくが食べられるのだ。
「同じ品種でも樹によって性格が異なるので、収穫時期はバラバラ。でもそこが良い点でもあり、同じ品種でも時期によって異なる味や香りを楽しむことができます。その味比べを狙って、シーズンの間2ヶ月おきくらいにオーダーされるリピーターさんもいらっしゃるんですよ」
「いちじくには、タンパク質分解要素のペクチンが多く含まれています。脂肪を食べてくれますし、便秘や下痢を解消するという効果も。またマグネシウム、カルシウム、食物繊維が入っていることも特徴です。皮には特に多く栄養素が含まれているので、皮ごと食べることで、それらをより体内に取り入れていただけたら」
さすが「不老長寿の果物」と呼ばれるほどの、いちじくの栄養の高さ。しかし私は実際に皮ごと食べてみて、栄養面以外での皮ごと食べる魅力を知った。
「頬張る」嬉しさがあるのだ。その香りと味を口いっぱいに楽しむには、上品にカットするより皮ごと食べる方が良い。それに色とりどりの皮は視覚的にも鮮やかで、嬉しい気持ちになる。そう清水さんに伝えると、清水さんは嬉しそうに笑った。
「せっかく皮まで綺麗に色をつけているのを剥いちゃうのはもったいないですよね。色も味も香りも、いちじくの全部を楽しんでいただけたら嬉しいです」
「いちじく図鑑」というエンターテインメント
「THE SIMIZ」のいちじくセットには、「いちじく図鑑」というミニ冊子がついている。食べ比べをさらに楽しんでもらうために作られた図鑑だ。
例えば今回私が持ち帰ったいちじくセットは「バローネ」「サルタン」「コナドリア」「ビオレソリエス」と言う4品種だったが、付属のいちじく図鑑には「ビオレソリエス」以外の3品種が掲載されていた。それぞれの甘味、酸味レベルを見つつ、どのように食べてみようか考える時間が楽しい。
私はいちじく図鑑という清水さんの心遣いを通じて、いちじくへの興味がさらに強くなるだけでなく、このような会話が生まれることもまた嬉しいなと感じた。
それはまるで、一つのエンターテインメント。「おいしい」って人を必ず笑顔にさせるということを、私は久しぶりに思い出した気がした。「おいしい」って、嬉しいことだったのだ。
自分らしい食べ方を通じて、さらなる「おいしい」へ
「いちじくって実はお肉と相性が良いんですよ」という清水さんのアドバイスを受けて、我が家ではまずお肉と一緒に食べてみることにした。
お肉と合うならと、生ハムを載せて胡椒とオリーブオイルでも試してみると、最高の晩酌のお供になった。白ワインとの相性抜群で、いつもの夜がいっそう特別な時間になる。
もちろん定番のサラダにもぴったりで、私はこれまでスイーツとしてのいちじくにばかり気を取られていたことを知った。自宅で作る前菜としても、いちじくは相当可能性の高い果物なのだ。
いちじくの可能性を探検するような料理は、とても楽しい。完熟で届くので日持ちは4、5日と短いが、思えば届いてから毎日毎食、食事が楽しみだった。この感覚って意外と忘れていたことかもしれないな、と思う。
食事をするたび、いちじくの味と共に、「おいしい」という喜びが体中へと広がっていくのを感じた。
「おいしい」という喜びに出会う
人それぞれの「おいしい」という喜びは、季節の喜びとなり、さらには人生の喜びとなって、いちじくというカラフルな果実のように人々を彩ってくれるだろう。
THE SIMIZ |いちじく
https://the-simiz.com/