Vol.585

FOOD

24 SEP 2024

THE SIMIZのいちじく食べ比べセットで「おいしい」という喜びを思い出す

秋の味覚の代名詞、いちじく。その香りと甘さは特別で、他の秋の果物と比べてもファンの多いフルーツだと思う。私もまた期間限定スイーツを見つけては飛びついてしまうファンの一人だが、ただ私は、あるいちじくに出会って、これまで愛してきたのはいちじくの魅力のほんの一面でしかないことを知った。皮ごと食べられる種類豊富ないちじくを通じて、その本来のおいしさを味わってみよう。

神話から現代まで、人々に愛される果物いちじく

秋の味覚いちじく(無花果)は、アダムとイブの神話にも登場する古い果樹だ。

色鮮やかで香り高い、秋の味覚いちじく
「不老長寿の果物」と呼ばれるほど栄養価が高く、そのまま食べることはもちろんケーキなどのスイーツとしても愛されるフルーツだが、人気は味覚だけにとどまらず、そのみずみずしい香りが香水に用いられたり、そのこっくりとした色合いがファッションに用いられたりと、さまざまな分野で人々に親しまれている。

愛用の香水DIPTYQUE「PHILOSYKOS」は、いちじくの葉の香り
私もまたいちじくのファンの一人だ。ケーキ屋さんやコンビニで秋口に登場する期間限定のいちじくスイーツを、毎年心待ちにしている。

しかし振り返ってみると、いちじくそのものを自分で買ったことはあまりないように思う。そういえば、いちじくがどのように育ち、どのように収穫され、そしてどれほどの種類があるのか考えたこともなかった。

この秋は、もっといちじくの魅力に触れてみたい。そんな想いでたどり着いたのが、三重県桑名郡の「THE SIMIZ(ザ・シミズ)」だった。

「THE SIMIZ」のいちじく(三重県桑名郡)

「THE SIMIZ」のビニールハウス(三重県桑名郡)

THE SIMIZが展開する「THE FIG」

「THE SIMIZ」は、2022年にスタートした三重県桑名郡いちじく農家だ。「CLOSE TO "THE" ORIGIN -本来のおいしさを求めて-」をコンセプトにいちじくを複数品種ハウス栽培し、【THE FIG】という食べ比べセットとして、全国に販売、配送している。

THE SIMIZ/THE FIG “皮ごと食べられる”いちじく

4パック入りのいちじく詰め合わせセット
「THE SIMIZ」のいちじくの特徴は、さまざまな品種を栽培していること、そして皮ごと食べられることである。このこだわりについて、「THE SIMIZ」の代表清水俊樹さんに話を聞いた。

「THE SIMIZ」代表清水俊樹さん
いちじくの食べ比べセットを配送しようと考えたきっかけについて尋ねると、清水さんはとてもシンプルな答えをくれた。

「いちじくってこんなにおいしいんだよ、ということを知ってほしいと思って始めました。きっと皆さんが想像する以上においしいし、世界中に沢山の種類がある面白い果物。その魅力を知っていただきたかったんです」

日本で販売されているいちじくは、実は8割ほどが「桝井ドーフィン」という品種。一般的にイメージされるいちじくは、おそらくこの品種なのではないだろうか。かくいう私もいちじくといえばこの色かたち、つまり、赤紫色から淡い黄緑色へのグラデーションカラーで涙型のかたちだと思い込んでいて、今回ハウスの中を見せていただいて驚いた。

「いちじくって赤色ばかりではないんです。黄色や緑色の品種もあるし、中には縞模様のものも。色も味も、本来とても豊かなフルーツだと思っています」

よく見かける「桝井ドーフィン」THE SIMIZにて

濃い色の丸い品種は、ブルーベリーを大きくしたよう

縞模様の品種は育つ過程で黄色に変わるそうだ
「THE SIMIZ」のいちじくは、清水さんの願いのとおり、口に含んだ途端笑顔になってしまうほどおいしい。その背景には、こだわりの栽培・収穫方法があった。

皮ごと食べて!旬の栄養を丸かじり

いちじく本来のおいしさを求める清水さん。そのポテンシャルを最大限引き出すために、毎日繊細な作業を繰り返している。

「いちじくって本当は太陽の光がそこまで必要ない果物なんです。いちじくが生っている庭を見かけることがあると思いますが、そうして太陽の下で育ててしまうと、暑さで味が薄くなるし、すぐに身が落ちてしまうんですよね。だからしっかり遮光をして、温度の管理を徹底し、なるべく長く樹上で育つように目を配っています」

さらに「THE SIMIZ」のいちじくセットは、樹上で完熟したものを採れたてで発送している。だから中身は、基本的にはお任せ。その時々で一番おいしいいちじくが食べられるのだ。

「同じ品種でも樹によって性格が異なるので、収穫時期はバラバラ。でもそこが良い点でもあり、同じ品種でも時期によって異なる味や香りを楽しむことができます。その味比べを狙って、シーズンの間2ヶ月おきくらいにオーダーされるリピーターさんもいらっしゃるんですよ」

樹と毎日会話をするのだという清水さん

完熟したいちじくを収穫する
旬のおいしさというのは、旬の栄養でもある。完熟のとても柔らかい状態で発送するので「THE SIMIZ」のいちじくは傷や痛みがある場合もあるが、絶対に皮ごと食べることがおすすめだ。

「いちじくには、タンパク質分解要素のペクチンが多く含まれています。脂肪を食べてくれますし、便秘や下痢を解消するという効果も。またマグネシウム、カルシウム、食物繊維が入っていることも特徴です。皮には特に多く栄養素が含まれているので、皮ごと食べることで、それらをより体内に取り入れていただけたら」

さすが「不老長寿の果物」と呼ばれるほどの、いちじくの栄養の高さ。しかし私は実際に皮ごと食べてみて、栄養面以外での皮ごと食べる魅力を知った。

「頬張る」嬉しさがあるのだ。その香りと味を口いっぱいに楽しむには、上品にカットするより皮ごと食べる方が良い。それに色とりどりの皮は視覚的にも鮮やかで、嬉しい気持ちになる。そう清水さんに伝えると、清水さんは嬉しそうに笑った。

「せっかく皮まで綺麗に色をつけているのを剥いちゃうのはもったいないですよね。色も味も香りも、いちじくの全部を楽しんでいただけたら嬉しいです」

柔らかい皮を手でさくと、とろけるような中身が

「いちじく図鑑」というエンターテインメント

現在「THE SIMIZ」では、20種類弱のいちじくを栽培している。全部で200品種以上種類があるとされるいちじくの中から厳選した品種たち。毎年少しずつ数を増やしているのだそうだ。

「THE SIMIZ」のいちじくセットには、「いちじく図鑑」というミニ冊子がついている。食べ比べをさらに楽しんでもらうために作られた図鑑だ。

THE SIMIZのいちじくについてくるミニ図鑑
この図鑑には最初に栽培を始めた10種類が掲載されている。その後10種類弱品種が増えているので全部が載っているわけではないが、主な品種は見比べながら味わうことができる。

例えば今回私が持ち帰ったいちじくセットは「バローネ」「サルタン」「コナドリア」「ビオレソリエス」と言う4品種だったが、付属のいちじく図鑑には「ビオレソリエス」以外の3品種が掲載されていた。それぞれの甘味、酸味レベルを見つつ、どのように食べてみようか考える時間が楽しい。

左から「コナドリア」「ビオレソリエス」「バローネ」「サルタン」

中身の色も全て異なるのが面白くて美しい
「バローネ」を例に挙げると、いちじく図鑑には「希少な美味 短い間だけ味わえる贅沢」との説明が。糖度:18、重量:100〜150g、甘味レベル5中5、酸味レベル5中3という情報と共に、フランス原産品種であり、日持ちがしないので市場にはあまり流通しないということが書いてある。

フランス原産の品種「バローネ」の特徴を図鑑で知る
家族とこの図鑑を読みつつ、どのように食べようかを作戦会議。そんなに希少でとびきり甘いなら、そのままの甘さを味わってみたい。酸味も少しあるので、ハチミツとの相性も良いかも?水切りヨーグルトとハチミツと一緒に食べてみようか、と、笑顔が広がる。

私はいちじく図鑑という清水さんの心遣いを通じて、いちじくへの興味がさらに強くなるだけでなく、このような会話が生まれることもまた嬉しいなと感じた。

それはまるで、一つのエンターテインメント。「おいしい」って人を必ず笑顔にさせるということを、私は久しぶりに思い出した気がした。「おいしい」って、嬉しいことだったのだ。

水切りヨーグルトとハチミツで嬉しいおやつの時間

自分らしい食べ方を通じて、さらなる「おいしい」へ

食べ比べセットとしてたっぷり届くので、さまざまな食べ方に挑戦しやすいこともまた「THE SIMIZ」の良さだ。自分らしい食べ方を見つけることで「おいしい」という喜びはさらに深まる。

「いちじくって実はお肉と相性が良いんですよ」という清水さんのアドバイスを受けて、我が家ではまずお肉と一緒に食べてみることにした。

お肉にいちじくという意外な組み合わせを試す
塩胡椒とバターで味付けをしたステーキの上に、スライスしたいちじく。まず見た目の華やかさに心が躍る。次にお肉と一緒に口に入れて、その相性の良さに驚いた。出会ったことのない味だが、しかし確実に美味しい味。おそらくその果実の柔らかさがジュレソースのようになって、口の中で違和感なくまとまるのだろう。こんな食べ合わせはレストランだけのものだと思っていたが、家でもできるという大発見だった。

お肉と合うならと、生ハムを載せて胡椒とオリーブオイルでも試してみると、最高の晩酌のお供になった。白ワインとの相性抜群で、いつもの夜がいっそう特別な時間になる。

もちろん定番のサラダにもぴったりで、私はこれまでスイーツとしてのいちじくにばかり気を取られていたことを知った。自宅で作る前菜としても、いちじくは相当可能性の高い果物なのだ。

いちじくとワインで静かな秋の夜を

モッツァレラチーズといちじくのサラダは見た目もお洒落
サラダでチーズとの相性の良さが分かったので、最後はピザに載せてみたのだが、これも至極のおいしさだった。

いちじくの可能性を探検するような料理は、とても楽しい。完熟で届くので日持ちは4、5日と短いが、思えば届いてから毎日毎食、食事が楽しみだった。この感覚って意外と忘れていたことかもしれないな、と思う。

食事をするたび、いちじくの味と共に、「おいしい」という喜びが体中へと広がっていくのを感じた。

いちじくを通じて思い出す「おいしい」という喜び

「おいしい」という喜びに出会う

「CLOSE TO "THE" ORIGIN -本来のおいしさを求めて-」というコンセプトのとおり、いちじく本来のおいしさを存分に堪能できる「THE SIMIZ」のいちじく。ああ、おいしいってこういうことだったんだ、と、私は当たり前のことを思い出したような気持ちでいる。

私たちの秋を彩ってくれるカラフルないちじくたち
「THE SIMIZ」のいちじくを知ったら他のいちじくは食べられない……というのではなく、世の中のあらゆるいちじくを含め「食べること」を純粋に楽しむためのヒントとして、是非とも一度味わっていただきたいと、私は考えている。私はきっと、この秋もっと、食べることに喜びを見出せるはず。「THE SIMIZ」のいちじくが、私に「おいしい」という喜びを思い出させてくれたのだから。

人それぞれの「おいしい」という喜びは、季節の喜びとなり、さらには人生の喜びとなって、いちじくというカラフルな果実のように人々を彩ってくれるだろう。

THE SIMIZ |いちじく

※今年は12月初旬までの販売を予定
https://the-simiz.com/