Vol.538

12 APR 2024

〔ZOOM in 横浜関内〕慌ただしい毎日に“余白”をもたらす。「altoyo」で出合う粋なうつわ

最近は、大手雑貨店や100円ショップでも、安価でそれなりにデザイン性の良い食器を手に入れられる。私自身もこれまではそういった場所で、「とりあえず数が足りていれば良い」というマインドで食器を買いそろえてきた。しかし、なぜか最近、いわゆる「作家もののうつわ」に無性に惹かれることが増えてきた。横浜元町に店を構えるうつわのセレクトショップ「altoyo(アルトヨ)」には、そんな心躍るうつわがそろっている。また、うつわと存分に向き合える空間が用意されていることも、この店の特徴だ。今回は、この唯一無二とも言えるうつわ屋を紹介したい。

静と動のコントラストを感じる、横浜元町

「altoyo」があるのは、横浜市中区の「横浜元町」と呼ばれるエリアだ。店の最寄り駅は、みなとみらい線「元町中華街駅」もしくはJR根岸線「石川町駅」で、それぞれまっすぐ向かうと徒歩8分ほど。今回は「元町中華街駅」から、少し散策しながら「altoyo」を目指していく。

元町中華街駅の1番出口を出ると、すぐ目に飛び込んでくる「朝陽門」

平日の夕方にも関わらず、この賑わいようだ
言わずと知れた観光名所、「横浜中華街」。シズル感たっぷりの看板が目を引く食べ歩きフードの店、エキゾチックなものがそろう雑貨屋、知る人ぞ知るといった雰囲気の町中華などがひしめき合い、歩くだけでうきうきしてしまう。

この「中村川」付近になると、途端に辺りが静かになる

横浜開港当時の面影が残る「元町ショッピングストリート」
活気ある中華街を抜け、橋を渡り川を越えると、雰囲気が落ち着いた西洋風へと変わる。この辺りには横浜開港時に多くの西洋人が住んでいて、当時の面影が今もなお残っているのだ。このエリアの顔である「元町ショッピングストリート」やその裏通りには、洗練されたブティックやカフェ、バーなどが集まっている。

「汐汲坂」の入口。急勾配が写真ではなかなか伝わらず、悔しい

白が基調のナチュラルな外観の「altoyo」。手書きの黒板が目印

粋な暮らしを叶える、うつわのセレクトショップ「altoyo」

店内には600~700ものうつわが並んでいる

今回お話を伺った、オーナーの山口泰明さん
うつわのセレクトショップ「altoyo」がオープンしたのは、2021年の10月。店内には、皿やカップ、カトラリーなどが、計600~700ほど取りそろえられている。シンプルながら造形美を感じるもの、模様の個性が光るもの、絵柄が繊細に描かれているもの…作り手によって、うつわから受ける印象が全く異なり、それがとても楽しい。

彫りで描かれた牡丹。食卓がパッと華やぎそう

表面がざらりとしていて、土器のような趣がある

思わず顔がほころんでしまう、可愛らしい箸置きたち
店で取り扱ううつわは、オーナーの山口さんが、『今日からできる粋な暮らし』というコンセプトに合うものを選んでいる。

「生活に取り入れることで満足度が上がるような、そして人から見ても『あか抜けている』と思ってもらえるようなものを選んでいます。基本的には自分の好みも入っていますが、偏りすぎないよう幅広く、作り手の技がしっかり感じられるものを取り扱っています」

ポップからは、作り手へのリスペクトと作品への愛情が感じられる
うつわのそばには、作家を紹介する手書きのポップが置かれている。作品の特徴がわかりやすく魅力的に言語化されており、どれも読み応えがある。「素敵なうつわだなぁ」という印象から、「化粧土でこの質感を作っているのか」「この模様は釉薬が流れてできているんだ」という見方に変わり、うつわの解像度がひとつ上がる感覚だ。

同じ商品でも表情が異なることが、自然で心地よい。最近は量産されたものに囲まれているから、このようなうつわに惹かれるのかもしれない

遊び心がありながら、うつわの個性とぶつからないインテリアも素敵
店内は、まるで外の世界と切り離されたように静かで、それでいて温かみを感じる雰囲気。うつわと向き合うにはぴったりな空間だ。

「うつわって、同じ商品であっても、色や表情がそれぞれ違うんです。灰を被って模様ができたり、焼成時に色の変化が出ていたり…。なので、お客さんが一枚一枚を落ち着いて、じっくり見られる空間になるようにと考えています」

昨年2023年4月に開催された「藤原純のうつわ展」

独特な形状と、透き通る海のような青が印象的
普段は複数の作家のうつわが並んでいるが、1人の作家にフィーチャーする展示イベントも毎月行っている。イベント期間中には、作家が在店し、直接話を伺える機会もあるそうだ。

4月20日~28日には、「藤原純のうつわ展」が開催される。うつわ好きには言わずと知れた陶芸作家である藤原純さんの、独創的でエネルギッシュなうつわが店いっぱいに並ぶ予定だ。

うつわから受け取る、心地よい“余白”

皿を使うときも、少し余白があるだけで、盛り付けが綺麗に見える。その点、縁のあるリム皿は重宝するとのこと。


あらゆるものが効率化している今、私たちは何かに対して自由に取り組むことから遠ざけられ、その環境を窮屈に感じることもある。そのような時代だからこそ「altoyo」では、生活や心の”余白”を届けることを1つのテーマにしている。

「もともと父がうつわの卸業をしていたんですが、僕は全く別の業界で働いていました。ある日、父がうつわの産地へ行くのについて行ってみたんです。その時、張り詰めた生活を送っていた当時の自分に、何か入ってくるものがあったんですよね」

「うつわの産地って、何だかゆったりしているんですよ。作家さんたちも、心に余裕がしっかりとあって、生活自体を楽しんでいるような方が多くて。人って生き方や仕事はそれぞれですが、そういった”余白”は全てにおいて大事なことだと思うんです。でも、ただ『余裕をもって生きましょう』と言われても、なかなか難しい。なので、そのような作家さんが作ったものを通して、ちょっとした”余白”を届けられたらと思っています」

心に余白があるからこそ、こんなに素敵なものを生み出せるのだろう

うつわを選ぶポイントとは?

これだけ個性的なうつわが数多くそろっていると、どれを購入するか悩んでしまう人も少なくないはず。そんな時、どのようにうつわを選んだら良いのだろうか?

「僕が重要視しているのは、“手馴染み”です。持った時にそのうつわが馴染むかどうかは、手の大きさや柔らかさなどによるので、人によって違います。手馴染みが良くないものって、だんだん使う頻度が下がって、結局は食器棚の奥にしまわれがちなんですよ」

「オンラインストアもやっているので、こんなこと言うのも何なんですが(笑)、うつわを選ぶときには実際に触ってほしいですね。気になったものを、両手でしっかり持って、触ってみて…そのうえで『これがいい!』と感じたものを買っていただきたいです」

どの部分が厚く仕上がっているかによっても、手馴染みは変わってくるという

生活スタイルによっては、食洗機が使える磁器を勧めることも

うつわに心惹かれ始めている人へ

最後に、作家もののうつわに興味がある人、これから集めていきたいという人に向けてのメッセージを、山口さんに伺ってみた。

「あまり難しく考えずに、どんどん触って使ってみてほしいですね。決して安くはないし、軽々しく使えるものではないですが、とは言え上手に使えば一生付き合えるものなので」

「そして、ぜひ生産しているところも見てみてほしいです。今は物があふれていることもあり、簡単にできているように思われがちですが…実際は流れ作業ではない、信じられないくらい難しいことをされているんですよ。Instagram で生産過程を発信している作家さんもいらっしゃるので、うつわを使って興味がでてきたら、ぜひ見てみてください」

店内のうつわは入れ替わっていくので、何度でも訪れたくなる

うつわに触れ、使う。自分に立ち返るひととき

今回購入したカップ。手にすっぽり収まるサイズ感と、絶妙な色味が気に入っている
坂を登って店に足を運び、自分の心をくすぐるうつわを見つけ、手に取ってじっくり眺めながら、家に迎え入れるかを検討する…オンラインで済ませる買い物と比べ、はるかに効率的ではない。

しかし、今回「altoyo」で作り手のこだわりや遊び心に触れた時間、そして悩みぬいて購入したうつわを家で使うひとときは、慌ただしい毎日の中でないがしろにしてきた私自身の感性や欲求を取り戻す感覚を教えてくれたように思う。

お気に入りのマグカップを日々使いながら、これからも自分に立ち返るための”余白”を大切にしていきたい。

altoyo|アルトヨ

神奈川県横浜市中区山手町52-7 ジュネス山手弐番館

営業時間:水木金 11:30〜16:00 / 土日祝 11:00〜18:00
定休日:月・火

https://altoyo.com/
https://www.instagram.com/altoyo__store/