欧米の映画を観ていると、独創的なインテリアスタイリングに目を奪われることがある。ウェス・アンダーソンのレトロ×パステルな色使い。スタンリー・キューブリックの異次元的なコーディネート。キッチンも寝室も真っ赤なアメリの部屋──。語り始めるとキリがないが、映画の中のインテリアで私が特に興味をそそられるのが、鮮やかな色柄の壁紙使いだ。日本では室内の壁といえば白が定番だが、海外ではさまざまな色・柄の壁紙を楽しむのはごく一般的なのだとか。自宅のキッチン、リビング、寝室が、映画のワンシーンのような空間だったなら!そんな夢をかなえてくれて、なおかつ賃貸物件にも貼ることができる、輸入壁紙の楽しさをご紹介したい。
大人の遊び場、恵比寿へ
今回ご紹介する輸入壁紙専門店は、恵比寿駅から徒歩5分ほどにある。駅周辺を散策しながら店へ向かうことにした。住みたい街ランキングでも上位に入る恵比寿には、ショッピングモールや個性的な飲食店が多く、昼夜問わず多くの人で賑わっている。美術館やギャラリー、映画館など、感性を刺激してくれるスポットも点在する大人の遊び場だ。
散策途中、恵比寿天にちなんだアートがちらほら目に入り、何となくおめでたい気分になる。
賑やかな飲食街エリアを抜けると、珍しい楕円形の敷地に建つ「恵比寿神社」がある。この神社は元々「大六天様」と称された神社で「天津神社」とも呼ばれていたという。それが今「恵比寿神社」に改められている理由。それは恵比寿という地名の由来が背景にある。
ご存知の方も多いだろうが、恵比寿という地名は、元々ヱビスビールを製造・発売していたサッポロビールの貨物専用駅だったことに由来しており、ヱビスビールの貨物専用駅として「ゑびす駅」が誕生し、地名も恵比寿になった。かつて「天津神社」であったこちらも兵庫県西宮神社より商売繁盛・縁結びの御神徳のあるえびす様を招き合祀して、社名を「恵比寿神社」に改めたということなのだ。
さて、今日の目的地である輸入壁紙専門店は、この神社のすぐ近くにある。
輸入壁紙専門店「WALPA store TOKYO」
「WALPA(ワルパ)」は、世界中の最新デザインを含むおよそ2万種類のデザイン壁紙を取り揃える輸入壁紙専門店。初心者にも扱いやすいスタンダードな壁紙から、ユニークなデザイナーズ壁紙までが揃うのが特徴だ。
WALPAの壁紙はオンラインでも購入可能だが、実物の色味やテクスチャー(中には香りつきの壁紙も!)を確認できることや、壁紙のプロからアドバイスを聞くこともできるため、店舗へ足を運ぶことをおすすめしたい。
多様なニーズに沿ったコーディネートの提案をしてもらうことが可能で、実際の部屋の写真や図面を持参するとアドバイスをもらいやすい。冒頭で話したような映画のインテリアコーディネートなどを見せながら相談するのも良いだろう。部屋の写真があれば、専用アプリを使用して壁紙をチェンジした様子なども見ることができる。
店舗の在庫品はメートル単位でカット販売されているため、壁用のほかに、ちょっとした小物をデコレーションすることも可能だ。
WALPAの店内には、フランス・イタリア・アメリカ・ドイツなど、海外の人気壁紙のカタログがずらりと並び、それぞれがアートの画集のように美しく見ごたえがある。見本をパラパラと眺めるだけでも、想像が膨らむ楽しい体験ができる。
こちらは、タイポグラフィーや19世紀のイラストにインスパイアされたデザインが特徴である、イギリスのデザイナーデュオQuirk & Rescue(クワーク・アンド・レスキュー)のカタログ。蛍光カラーのアクリルカバーもユニークだ。
一切の妥協を許さないmade in Germanyの品質を誇るMarburg(マルブルグ)の壁紙の歴史の始まりは1845年。170年以上続く老舗の壁紙ファクトリーだ。
開いているページは流行のリブウッドパネルにインスパイアされた3D壁紙で、プリントとは思えないリアリティのある質感、立体感が感じられる。
見どころ盛りだくさんのWALPA店内。とくに化粧室はお見逃しなきよう! 壁紙はもちろん、収納棚の扉部分、正面に掛けられた女性の肖像画にも壁紙が活用されており、この小さな小部屋だけでも、輸入壁紙の楽しさや可能性を感じることができる。
入って右手の壁紙は「mineheart(マインハート)」というシリーズ。シェークスピアの中の言葉「mine」と「heart」から取ったもので「my heart」を意味するという。化粧室という小さな空間が、ロマンチックかつユーモラスなストーリーで満たされている。
壁紙を一部分だけ変えるアクセントクロス
実際の施工事例も合わせてご紹介しよう。
クラシカルな花柄が暗闇に浮き上がるような、生命力溢れるデザイナーズ壁紙。花柄パターンはガーリーで甘めなイメージになりがちだが、色柄の選び方を工夫することで、キリッと締まった都会的なスタイリングができそうだ。
このように、一部の壁だけに好きな壁紙を貼る「アクセントクロス」という手法がある。部屋全体の壁紙を変更することはハードルが高いかもしれないが、一面だけ、部分的に好きな壁紙を貼る程度なら、誰もが導入しやすいはず。
ゴールドの壁紙! メタリックな色彩は生活空間には派手すぎるように思う方は少なくないだろう。しかし、 実際にスタイリング事例で見ると、簡素な空間をグレードアップしてくれるようなイメージで、上品な仕上がりが期待できそうだ。
固定観念を捨て、自由な発想で壁紙を選んでみたいと思わせてくれる事例だ。
こちらは室内全体の壁紙を統一した事例。インテリアといえば家具に注目しがちだが、視野の大部分を占める壁紙の選択も重要であることがよくわかる。
バナナリーフをモチーフとしたこちらのワイルドな壁紙は、往年のロックの名曲、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』のジャケットに使われたことでも知られる「ビバリーヒルズ・ホテル」に使われているものなのだとか。
賃貸物件にも使える壁紙の選び方
ほとんどの賃貸物件は原状回復義務があるため、きれいに剥がせる壁紙を選ぶことが重要だ。壁紙の中には、貼って剥がせるものとそうではないものがあるため、そのポイントを簡単にご紹介する。
賃貸向けのクロス選びのポイント
不織布(フリース)素材を選ぶ
壁紙は主に紙のものとフリース(不織布)素材のものに分けられる。賃貸向けなのはフリース素材の壁紙だ。専用の粉のりはフリースに染み込んでいくため、元の壁紙には残らない。のりが乾いた後でも剥がしやすく、原状回復が必要な賃貸でも施工が可能だそう。
無地より柄物を選ぶ
無地の壁紙の方が貼りやすい印象を持つかもしれないが、ものによっては境目が目立ちやすいという落とし穴があり、注意が必要だ。柄ものであれば絵柄がはっきりしているため合わせやすく、境目が目立ちにくい。
厚さがあるものを選ぶ
壁紙にはさまざまな厚さがあるが、薄いものは剥がすときに破れやすく、原状回復が困難になる場合がある。賃貸の場合は、厚手の壁紙を選ぶようにすることがポイントだ。
手軽なシールタイプは初心者にもおすすめ
シール壁紙は使いやすさが魅力だ。裏面がシール状になっているため、カッターとスムーサーさえあればすぐに壁紙施工を始められ、のりやハケなどの準備も不要だ。
WALPAのシール壁紙「NU WALLPAPER」は水に強い素材でできており、バスルームやキッチンなどの水回りの壁にも安心して使えるという。またWALPAでは「Hatte me! Square」という小さめのスクエアサイズのオリジナルシール壁紙も展開している。小さめサイズのパターン壁紙なら比較的簡単に施工できそうだ。
コツを掴めば簡単。壁紙の貼り方
初めての場合は、壁紙の施工に不安感がある方がほとんどかもしれない。WALPAには、賃貸にも使用できる粉のりや工具がすべて揃ったセットが用意されていて、貼り方のレクチャーを受けることができるため、壁紙施工が初めての人も安心だ。
実際に店舗で行われる壁紙レクチャーの様子を少し紹介する。
作業台とイーゼルを使って、用具の使い方や壁紙の扱い方、貼り方のコツなどをプロに教わることができる。
実際の施工を見ていると、難しいことはなさそうではあるが、のりの分量や道具の使い方、5cmほどはみ出して貼り後からカットする理由など、いくつかのポイントがあるようなので、メモを取りながらしっかりと聞いておこう。
壁一面に遊び心を。壁紙で生活の背景を彩る
日々の生活を、映画のワンシーンのように演出するとしたら、皆さんはどんな壁紙を選ぶだろうか。
小鳥が舞うダイニングでモーニングコーヒー。
壁一面の名画を楽しむためのリビング。家具は最小限に。
壁も家具も全て真っ赤な寝室。(映画「アメリ」のように)
トイレはジャングル柄でワイルドに。
世界中から集められた壁紙カタログを見ていると、イマジネーションがどんどん膨らんでいく。
この妄想の楽しさは、家具を揃えるだけでは到底かなわない。壁紙を巨大なアートを飾るような感覚で取り入れてみよう。壁紙を取り入れることによって空間に奥行きがもたらされ、生活の何気ない一コマを自由自在に演出できるはずだ。
今回ご紹介した壁紙は、ほんの一部。世界中の壁紙を見て、生活空間に自分らしい演出をしてみてはいかがだろうか。
WALPA store TOKYO
東京都渋谷区恵比寿西1-17-2
シャルマンコーポ恵比寿1F101号室
電話:03-6416-3410
https://walpa.jp/E-mail:
tokyo@walpa.jp
CURATION BY
料理とアートが好きなコラムニスト&写真家。
毎日、都内をぐるぐる歩き回っていますが、本当はインドア派。
映画を観ながら、作品に合わせた外国の料理を楽しむことにハマっています。