Vol.713

MONO

16 DEC 2025

肌にも環境にも優しく、しっかり落ちる。ハウスケアクリーナー|SOMALI

毎日の掃除の時間を、もっと快適に、気持ちよくできたら——そう思ったことはないだろうか。そんな願いに応えてくれそうなアイテムが、木村石鹸工業株式会社のハウスケアクリーナー「SOMALI」シリーズだ。汚れ落ちはもちろん、肌にも環境にもやさしく、暮らしに溶け込むデザインもうれしい。今回は、100年を超える老舗企業のこだわりや、ものづくりへの姿勢についてお話を伺った。

植物オイル100%の純石けんで、水回りをまるごと心地よく

木村石鹸の「SOMALI」 シリーズは、水回りの掃除が得意な人にも苦手な人にもおすすめしたいアイテムだ。

水回り掃除用品4点セット(左から、トイレ/バス/キッチンクリーナー、台所用石けん)
石油系の合成界面活性剤や合成香料等を使わず、植物オイル100%の純石けんをベースに、肌への負担を抑えながら汚れをしっかり落とす。「良いものをつくる」というシンプルで強いこだわりが、素材選びにも表れている。

たとえば、ボディ用などの防腐剤には酸化銀といった天然系の成分を使用し、一部の複合石けんに加える合成洗剤も全て植物由来のものを採用。ハウスケア製品にもボディケア製品と同じ品質基準を適用し、「子どもと一緒に使えるもの」を想定してつくられている。

実は洗浄力が高い。石鹸の実力、知っていますか?
ひとくちに汚れといっても、酸性・アルカリ性など種類はさまざまだ。「SOMALI」は、それぞれの汚れに効くように丁寧に設計されている。たとえば、台所汚れは酸性の油汚れのため、アルカリ性の洗剤でよく落ちる。一方で、お風呂の汚れは酸性の皮脂汚れとアルカリ性の水垢が入り混じった複合的なものだ。

これら一つひとつの汚れに合わせて原料や配合を細かく調整するには、経験と技術が不可欠で、当然手間もかかる。しかし木村石鹸は、汚れの性質を見極めたうえで、最適なつくり方を追求している。

キッチン、トイレ、バス。使う場所に合わせて、石けんの中身はすべて変えられている
キッチンクリーナーとバスクリーナーにほんのり漂う柑橘系の香りは、香りづけというよりは、汚れ落ちを重視して選ばれたオレンジオイルによるものだ。トイレクリーナーは、便器から床、壁まで1本でまかなえるオールインワンタイプ。アルコールを配合することで、サッと乾き、除菌効果もある。気になる部分だけ拭き取れる手軽さも魅力だ。

ラベンダーの香りが広がり、気になる臭いもすっきり
台所用石けんは、肌の潤いを守りながら、しっかりと食器の汚れを落としてくれる。これは天然保湿成分のグリセリンとトレハロースを配合していることと、石けんが十分な水で薄まると界面活性能(水と油を混ぜ合わせる働き)を失う特性によるもの。万が一肌に残っても刺激を与えないため安心して使うことができる。

肌にも環境にも優しく、洗浄力も妥協しない。この絶妙なバランスを極める姿勢こそが、木村石鹸らしさであり、最大の強みでもある。

4点が詰まった「水回りのお掃除の心地よさを贈る ハウスケアギフト(S5)」も人気

石けん本来の良さを引き出す釜焚き製法へのこだわり

木村石鹸は、創業から100年を超える歴史の中で、職人の勘と経験がものをいう「釜焚き製法」を守り続けてきた。中小規模の石けんメーカーを中心に、工業的に大量生産された石けん素地を海外から仕入れて製造するところが増えていき、伝統的な釜焚きを行うメーカーは全国でもひと握りにすぎないという。

効率よりも大切なことがある。そんな思いで、伝統の手法を守り続けている
その中でも、木村石鹸はやし油を用いた石けんをつくり、汚れの種類によって石けんを使い分け、配合を細かく調整する。製品の数だけレシピがあり、ここまで原料や製法を分けるメーカーはほとんど存在しないそうだ。

釜焚きは、職人が一日つきっきりで行う。大きな釜に油とアルカリを入れ、ゆっくりと熱を加えながら時間をかけて反応させて石けんに仕上げていく。しかし、季節や気温、湿度、さらに原料であるやし油の質によって条件は日々異なり、マニュアル通りにはいかない。

粉末状の「ナトリウム石けん」と液状の「カリウム石けん」の2種類がある
だからこそ、職人は五感を研ぎ澄ませて石けんづくりに臨む。油の匂いが石けんの香りに変わる瞬間、泡のかたちが細かく変化するタイミングなど、微細な変化を見極めるのは、経験を積んだ職人にしかできない技である。

手間ひまを惜しまない石けんづくりは、限界に挑戦するという感覚に近い
一見非効率に見える釜焚きだが、石けん本来の良さを最大限に引き出すために、もっとも適した方法なのだ。「一度やめれば、技術を復活させるのは難しい。石けんの良さを追求する会社がなくなってはいけない」という思いのもとで、非効率の中から生まれる「最高の使い心地」を求め続けている。

「面倒くさいこと」を当たり前に。木村石鹸のまじめなものづくり

木村石鹸の創業は1924年。創業者・木村熊治郎氏が、「木村石鹸製造所」を立ち上げたのが始まりだ。より良い石けんをつくろうと志したものの、当時の固形石けん市場はすでに大手メーカーが占めており、繊細なシルクを洗える振袖用の石けんへとシフトする。

その後も時代の変化に応じ、衣料用洗剤や銭湯向けの浴場洗剤、クリーニング業界や病院、おしぼり関係の業務用ランドリー洗剤の製造販売を手がけるなど、業務用洗剤メーカーとして製品の幅を広げていった。

1990年代に入ると、銭湯やクリーニング店が減少し、家庭での入浴や洗濯が主流となる。すると、業務用で培った技術を家庭用製品に応用し、2015年には「SOMALI」を発売。自社ブランドを本格的に展開し始めた。現在では売上の約4割を自社ブランドが占めるまでに成長している。

最近では、2024年に発売を開始した「asuno(アスノ)」という洗濯用の粉洗剤が人気上昇中だ

創業当初から変わらないのが、「良いものをまじめにつくる」という姿勢だ。商品づくりの際には、開発に関わる一人ひとりが「本当に良いものとは何か」と自問しながら取り組む。品質を追求するあまり、製造工程が複雑になり、委託先を探すのに苦労したこともあったという。

製品の裏面にも、誠実なものづくりへの思いが表れている
他社との一番の違いは、「面倒くさすぎることを、当たり前のようにやっていること」だ。それは社内ではごく自然なこととして根付いており、社外の反応を通して、「実は特別なことだった」と気づかされることも少なくないそうだ。

手間を惜しまず良いものをつくるマインドは、代々受け継がれてきたもの

「これしか使えない」と語るファンも。世代を超えて愛される理由

これだけ手間をかけ、こだわった製品であれば、価格は少し高くなるし、売るのも簡単ではないだろう——そう思う人がいても不思議ではない。実際、木村石鹸が自社ブランドを本格的に展開し始めたのは、100年を超える歴史の中でもここ10年ほどのことだ。

「売り方はまだ模索中」と話すが、木村石鹸らしく誠実さが伝わるコピーや、暮らしに溶け込むナチュラルなデザインが製品の魅力を引き立て、手に取る人が増えている。

流行に左右されないシンプルな見た目が、使う人を選ばない理由のひとつかもしれない
たとえば、髪の傷みやくせ毛、寝ぐせに悩む人に人気のシャンプー「12/JU-NI(ジューニ)」。その販売ページには、開発者の「とにかく髪に良いものをつくりたい」というメッセージが、ストレートに綴られている。マーケティングありきではなく、まっすぐな思いがユーザーの心に届き、木村石鹸を代表する製品のひとつとなった。

とにかく「髪にいいものをつくりたい」という思いでつくられた「12/JU-N」
現在シリーズ展開している家庭用ブランドは「SOMALI」と、掃除用のニッチな製品を扱う「C SERIES(シーシリーズ)」。さらに、単体の製品として、洗濯用洗剤「asuno(アスノ)」や、酸素系漂白剤「そこかし粉」などがある。

一度使うと手放せなくなる人も多く、台所用石けんを5リットルの大容量で購入する人もいるほど。レビュー欄には丁寧な書き込みが並び、問い合わせフォームには感謝の言葉や「どうか販売をやめないでください」といった切実なお願いも届くという。

子育て世代から、年配の方まで幅広い年代に愛される製品に育っている

毎日の掃除用品、どう選ぶ?買い物は投票という考え方

2023年、木村石鹸は社会や環境に配慮した経営が評価され、国際認証「B Corp(ビーコープ)(※1)」を取得。製品の品質はもちろん、ものづくりへの姿勢そのものが認められたかたちだ。

創業100周年を迎えた2024年には、長らく製造していなかった固形石けんを復活させた。そこには、創業者がこだわった「品質の良い石けんをつくる」という原点に返る意味も込められている。数か月にわたる乾燥工程を要するなど手間がかかり、「非効率の極み」だというが、大事なことにはあえて挑む姿勢は木村石鹸ならではだろう。

釜焚きとはまったく別もの。固形石けんづくりは、ゼロからの新しいチャレンジだった
2025年には大阪・関西万博にて「未来のせっけん」を展示した。プラスチックを極力使わないことを目指して容器を石けんでつくり、従来の液体・固体・粉末とも異なる使いきりタイプの「第4のせっけん」を提案。これからの石けんのあり方について、来場者とともに考えるきっかけをつくった。

今はまだ挑戦の途中。「未来のせっけん」が当たり前になる日が、いつか来るのかもしれない

今後は「くらし、気持ち、ウキウキ」というブランドのテーマに沿って、洗剤だけでなく、基礎化粧品や掃除道具など暮らしに関わるアイテムへと展開を広げていくことも視野に入れている。

木村石鹸では「ものづくりが、社会に対して良いインパクトをもたらす」ことを目指していくという。「買い物が『投票』になる」という気持ちで、共感するポイントがあれば、ぜひ選んでほしいと語る。

天然か合成かにとらわれず、人と環境にやさしく、汚れ落ちの良いものを用途に応じて選ぶのが木村石鹸の考え方
自分にとって心地よいかどうか。使い心地や香り、肌へのやさしさ。製品を選ぶとき、私たちは自然と自分軸を大切にしている。けれどそこに、もうひとつ社会という軸を加えてみるのもいいかもしれない。より良い未来のために消費者としてできることを考えるきっかけにもなりそうだ。

(※1)正式名称は、「B Corporation™︎」。米国の非営利団体「B Lab™︎」が運営する、持続可能性・透明性・社会貢献をバランスよく追求している企業に与えられる国際的な認証制度

取材協力:木村石鹸工業株式会社 営業・マーケティングチーム 鹿嶋 友莉江さん / 西浦 紗楽さん

木村石鹸|SOMALI

水回りのお掃除の心地よさを贈る ハウスケアギフト(S5):4,950円(税込、送料無料)
公式オンラインショップ:https://www.kimurasoap.co.jp/pages/store

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