Vol.247

MONO

29 JUN 2021

初心者にもおすすめのガラスペン。言葉を綴る手元に透明な美しさを

人とのやりとりや、ちょっとしたメモをとるときの手段のデジタル化が進んでいる。しかし、手紙や日記などは、心のこもった手書きの文章を好むという人も少なくない。心を落ち着かせながら文字を綴るひとときには、とっておきの筆記用具を使いたい。 ものを書く道具の1つである「ガラスペン」というアイテムをご存知だろうか。ガラスを素材としたガラスペンは、エレガントな輝きを放つ見た目の美しさと機能性で多くの人に愛されている。初心者にも使いやすいことから、ギフトとしてよく選ばれているアイテムだ。ここでは、ガラスペンの特徴や魅力について紹介する。

おすすめの筆記用具「ガラスペン」の魅力とは

ガラスペンを使うにはインクが不可欠

インクに浸して使うガラスペンは「つけペン」の仲間

海外にガラス工芸が盛ん な国が多いことから、ガラスペンを海外発祥と思っている人は少なくない。しかし、実はガラスペンは明治35年に風鈴職人の佐々木定次郎氏によって 考案された日本発祥のものだ。ガラスペンはその名の通りガラスから作られた筆記用具であり、日本の伝統工芸品 として人気を博している。

一見すると、ガラスペンにインクが入っている様子はなく、インクをつける筆も見当たらないため、どうやって使用すればよいのかわからない人も多いだろう。ガラスペンは、ペン先をインクに浸して使用するつけペンの一種である。ガラスペンを使うためには、インク瓶に入ったインクの用意が必要だ。

ガラスペンと万年筆。その違いはペンの構造

ガラスペンはペン先をインクに浸して使うものだが、万年筆は中にインクを入れたり、インクカートリッジが内蔵されていたりするものだ。また、ガラスペンと万年筆ではペン先の構造も異なる。万年筆で文字を書くときは、ペン先の刻印がある面を上にして 書かなければうまく書けない。しかし、ガラスペンは全方向から自由に書くことができるのが特徴だ。

一度インクに浸すだけで、書ける文字はハガキ1枚分

ガラスペンは、ペン先を一度インクに浸すと、平均でハガキ1枚分の文字を連続して筆記することが可能といわれている。実用品として使うには十分な筆記力だといえるだろう。一般的なガラスペンのペン先には溝が施されており、そこにインクがたまることによって、少しずつペン先にインクが流れ出るようになっている。余剰のインクはペン先の溝に吸い上がるので無駄にはならない。

水洗いすればインクの色を変えられるのも魅力的

ガラスペンは水洗いをすることによって、簡単にペン先のインクが落ちる。そのため、ガラスペン1本でさまざまな色のインクを使うことができる。万年筆のようなインクの入れ替えが不要で、ボールペンのように色によって何本も用意しなくてもよいのは魅力だ。

ガラスペンを選ぶときは3つのポイントをチェック

美しさと機能性を兼ね備えたものが理想的

「美しさ」をとるか、「機能性」をとるか

ガラスペンには一体型と分離型があり、それぞれに異なる特徴をもっている。一体型は軸とペン先がつながった形状のため、統一感があって見た目が美しく、デザイン性を重視する人におすすめだ。

分離型は軸とペン先が分かれており、ペン先の取り替えが可能。ペン先が劣化した際にも、ガラスペンを買い直さずにペン先のみ交換すればよい。ただし、軸とペン先の材質が異なる場合があるので、ガラスという素材にこだわる人は注意しよう。

ガラスの質で愛用できる期間が決まる

ガラスペンの材質には、軟質ガラスを用いたものと硬質ガラスを用いたものがある。
軟質ガラスは硬質ガラスに比べ耐久性が劣るものの、比較的加工しやすいという特徴をもつ。そのため軟質ガラス製のガラスペンは、デザイン性に富むものが多い。

一方の硬質ガラスは、割れにくい性質をもっているため長く愛用できる。何気なく置いたときや筆圧を強くかけたとき、万が一落下したときに衝撃で割れるのが心配という人におすすめだ。また、硬質ガラスは磨耗しにくく、ペン先があまりすり減らないのもうれしい。ただし、硬質ガラスは加工がむずかしく、比較的高価になる傾向がある。

「あえて使う」ものだから、書きやすさやデザイン性も重視したい

ガラスペンは美術品のような美しさをもっているため、一目ぼれで選んでしまう人が少なくない。しかし、ガラスペンで文字を書くことを習慣づけたいなら、見た目だけでなく、使いやすさも重視して選ぼう。ガラスペン初心者はグリップ部分に丸みがあり、少しだけ太めのものを選ぶと手になじみやすい。

また、ガラスペンを卓上に置いたときに転がりにくいデザインを選ぶのもポイントの一つ。多角形のものや、飾りがついているデザインだと転がりにくい。専用の箱やペン置きがセットになっているものもおすすめしたい。

初心者にもプレゼントにも。おすすめのガラスペンブランド

ガラス工房まつぼっくり

ガラス工房 まつぼっくり「ツブツブ」
ガラス工房まつぼっくりでは、ガラス工芸作家の松村潔氏によってオリジナルガラスペンが制作されている。ガラスペンは「書くための実用的な筆記用具」として制作するため、過度な装飾はせずに使いやすい形とデザインを大切にしているという。すべてのガラスペンに、軽くて丈夫で、修理もできるボロシリケートガラスを採用している。

ガラスペンのラインナップはツブツブ、雲母、モール、モノクロームなどのネーミングで、種類豊富にそろっている。「ツブツブ」はガラス工房まつぼっくり独自の美しく特徴的なフォルムをしており、シンプルなデザインでありながらキラキラと輝く姿が魅力的だ。9色展開の豊富なカラーバリエーションもうれしい。また、その他のガラスペンにはシンプルなクリア色やブラックなどの色も用意されているため、男性への贈り物としても適している。

ガラス工房 まつぼっくり 公式HP:https://shop.matsubokkuri.biz/

ガラス職人 菅清風

ガラス職人 菅清風「清風(せいふう)」
菅清風氏は1996年に世界初の硬質ガラスペンを完成させたガラス職人。オバマ元アメリカ大統領へ作品が寄贈されたり、バーレーン王国との調印式で作品である「加茂の流れ」が使用されたりするなど、日本を代表するガラスペンを制作した 。制作では温度1200度の炎と闘いながら、一つひとつを正確な手作業で焼成。右にねじり、押し、左にねじり、押すという作業がダイヤ絞りというらせん模様を生みだす。軸の端からペン先まですべてを硬質ガラスで作ることにこだわっている。

人気商品は硬質ガラスペンの「清風(せいふう)」や「雅(みやび)」。カラーバリエーションが豊富なため、好きな色を選ぶことができる。両方ともグリップ部分のダイヤ絞りが特徴的なデザインだ。グリップ部分が太いため手によくなじみ、重心が低くなることで書きやすいペンに仕上がっている。

ガラス職人 菅清風 公式HP:https://www.kanseifu.com/

川西硝子

川西硝子「矢絣」
川西硝子では、ガラスペンの材料として耐熱性にすぐれた硬質ガラスを採用している。ペンの溝はすべて手作業で制作されており、ペン軸からペン先まで完全な手作り。また、柄の部分には金と銀の装飾がされており、高級感あふれる仕様となっている。川西硝子で制作されるガラスペンの最大の特徴は、ガラス内部に立体的な模様が入っていること。光が入った瞬間に模様が浮かび上がる幻想的な美しさが魅力だ。手にした者が魅入ってしまう見た目だけではなく使用感にもこだわっており、長い文字数の筆記が可能だという。

ガラスペンのラインナップは、無垢、十二、細波、螺旋・矢絣・柳など。「無垢」は軽量で男女問わず使えるシリーズ。「十二」は上品なデザインをしており、ペンを置いたときに転がらないように滑り止めがついている。「細波」は細かい波打つ模様がキラキラと輝き、書いているときにも格別な美しさを感じられる。「螺旋・矢絣・柳」は川西硝子で最高級ランクのガラスペンであり、オーダーメイドにも対応している。

川西硝子 公式HP:http://www.kawanishiglass.com/

おしゃれで美しいガラスペン。長持ちする使い方を心がけたい

お手入れ方法は簡単、水で洗うだけ

ガラスペンの使い方は意外と簡単

ガラスペンを使用する際は、まずインク瓶のインクにペン先を浸し、ペン先の1/3程度にインクを行き渡らせる。ペン先がインク瓶のふちに触れると破損する恐れがあるので、まっすぐに引き上げてから執筆する。またインクに浸す際は、インク瓶に深く入れすぎて底にペン先を当てないように。

ガラスペンで執筆するときは、ペンを軽く握り、筆圧をかけすぎないように気をつけよう。流れるようにゆっくりと、ペンの重さを感じながら文字を書くとよい。溝にたまったインクを使って書くので、少しずつ回して溝のインクを均等に使うのがポイントだ。

お手入れ方法も確認。使用後は道具をいたわる時間を

ガラスペンのよいところは、使用後のお手入れが簡単なところ。使用後は容器に入れた水にペン先を浸してインクを落とし、インクが落ちたらやわらかい布やティッシュなどで水分を拭き取る。インクが落ちにくい場合はぬるま湯で落とそう。その後、収納するときはペン先の保護をお忘れなく。

ゆったりと文字を書く時間にはガラスペンがおすすめ

特別ではない日常にもガラスペンを取り入れたい
見た目と機能性を兼ね備えたガラスペンは、まるで実用的なアート作品のよう。種類が豊富に販売されており、ふっくらとした曲線美と透明感のあるガラスペンは、普段使いにもギフトにも最適なアイテムだ。

ガラスでできているため、ていねいに扱う必要があるが、初心者でも使いやすく生活にも取り入れやすい。お気に入りのガラスペンを手に入れて、文字を書く習慣を始めてみてはどうだろうか。