Vol.245

MONO

22 JUN 2021

極上のやわらかさ、驚くほどの軽さ。「andu amet|アンドゥアメット」のエチオピアシープスキン

「革製品」と聞くと、硬くて重く、ハードなイメージを持つ方が多いのではないだろうか。andu amet(アンドゥアメット)のシープスキンは、そんな革製品のイメージを覆す。何も知らずに触れてみると、その触り心地に声を上げて驚いてしまうほど。今まで触ったことのないやわらかい感触で、あえて例えるならばふわりと浮かんでいる雲のよう。澄み渡る青い空の下、広大なエチオピアの高原に棲息する羊からのみ取れる希少な素材「エチオピアシープスキン」を使ったandu ametの日常の暮らしで使えるアイテムを紹介したい。

シープスキンのあふれる魅力

やわらかく繊細な感触が特徴のエチオピアのシープスキン。そのシープスキンを使い、日常で使えるバッグや財布を作っているブランドのandu amet広報の村松氏に魅力を伺った。

「世界には羊の品種が1,000種以上あるといわれていますが、エチオピアに生息する『アビシニアハイランドシープ』という品種は、その中でもとくに優れた皮を持っています。エチオピアの高原は北緯10度、標高3,000メートル前後なのですが、標高が高い地では、寒暖差が激しくなり、それによって皮の繊維の一本一本が太くなるので、丈夫でありながらも皮革になめしたときの銀面(毛や表皮を除去した真皮の表面)はきめ細かく滑らかになります。andu ametではその中からさらに厳選された、最もグレードの高いものを使用しています」と村松氏は話す。

アビシニアハイランドシープスキン
市場に出回る革製品の多くは、皮表面の「きず」や「まだら」をカバーするために、なめして色を染めた革の上からさらに塗料を吹き付けていることが多いそう。しかしそれらのエ程は欠点をカバーする代わりに、本来の革の質感も覆い隠してしまっている。しかしandu ametでは、革にもともとある「きず」や「まだら」などを隠すことはしない。

そんな「きず」や「まだら」といった個体差は、動物たちがエチオピアの大自然の中でのびのびと生きていた証であり、天然の素材の魅力のひとつであるとandu ametは捉えているため、それらを隠すのではなく、革本来の質感がより活きるようなナチュラル仕上げにこだわっているという。

左からバッグの「Airy(エアリー)」、名刺入れの「Business Card Case(ビジネスカードケース)」、ミニサイズのお財布「Across Half Wallet(アクロスハーフウォレット)」

ハンドメイドへのこだわり

andu ametのプロダクトは、全てハンドメイドによって作られている。その理由の一つは、エチオピアシープスキンが柔らかく非常に繊細なことから、通常の皮革とは比べものにならないほど制作に高い技術を要するためである。

「一つの革製品が作られるまでには実にさまざまなエ程がありますが、andu ametの製品は、その全てが厳しい訓練を受けた熟練職人の手によって行われています。例えば裁断。余計な加工が施されない天然仕上げの革は一枚一枚、異なる個性があります。それらを見定め、その一枚が最も生きるように考えながらハサミを入れる作業は、革に命を吹き込む作業とも言えるほど、実は、革製品を作る上で最も重要かつ難しい工程のひとつです」と村松氏は話す。

何度でも修正のきく布製品と異なり、一度でも縫製に失敗すると針穴が開き、縫い直しができないシープスキン。裁断から縫製に至るまで、高い技術力とセンス、経験が必要となる。

エチオピア在住のエチオピアの職人によって作り上げられる
二つ目の理由は、一つのものをできる限り長く使えるようにするため。

機械で画一的に作るのとハンドメイドとでは、見た目の美しさや味わい深さはもちろん、強度や耐久性は大きく異なる。andu ametのアトリエでは大量生産を前提としたライン方式ではなく、一人の職人が一つのバッグに対し、最初のハサミを入れるところから最後のひと針を抜いあげるまで、すべての工程を仕上げている。長く使い続けることができるように、それぞれに異なる革の厚みや強度に合わせて糊や芯材を加減したり、デザインや用途によってミシンを使う箇所と手縫いの箇所を使い分けているそう。

製品には職人固有のタグが付けられており、一人一人の職人が責任をもってていねいに製作をすることで、長期使用を実現する強度や耐久性を保っているのだ。

三つ目の理由は、エチオピアの人々が誇りと喜びを持ち続けられるように。

「エチオピアは最高級の皮革の産地でありながら、技術力が乏しく、これまでは原料である革の状態での輸出に依存をしていました。それらが、例えばイタリアでなめされるとイタリア製の革となり、フランスで縫製されるとフランス製のバッグとなって付加価値が付くものの、産地であるエチオピアに富はもたらされず、技術力を持つ職人も育たない状況が続いていました。andu ametではそんなエチオピアに直営工房を設立し、現地の若手職人たちを直接雇用し、日本や先進国の市場にあった高いレベルの技術を長期的に技術指導しています。職人たちには、高い技術力に見合った適正な報酬を支払うのはもちろん、彼らが誇りや喜びを持って働ける環境を提供し、支援しています」

生産地への視点をしっかりと持ち、見えない生産過程をも妥協せず、職人によるハンドメイドでの製作にこだわっているandu amet。時間と手間をかけて作られているそのプロダクトは、時が経ち、使い込むごとにも味わいを増していくという。

エシカル、サステナブルであることに、とことんこだわる

国内化粧品メーカーでプロダクトデザイナーとして働いていた代表の鮫島氏は、当時主流となり始めた大量生産・大量消費の「モノづくり」に疑問を抱き、携わることに限界を感じ始めたという。長く愛用してもらえるような本当にいいものを作りたい。でも本当にいいものとは何だろう。

そんな葛藤を抱えながら、ボランティアとしてエチオピアを訪れ、目を覆いたくなるような貧困に戸惑いながらも、エチオピアシープスキンと、貧困にありながらひたむきに情熱を注ぐ職人たちと出会ったところからandu ametはスタートした。

andu ametはエチオピアの事実上の公用語であるアムハラ語で 「一年(ひととせ)」という意味
エチオピアの若者たちを正規雇用し整備された環境にて長期的に技術指導をしていること以外にも、andu ametは創業当初より関わる工程すべてにおいてエシカル、サステナブルであることにこだわり続けている。

すべて「食用」の副産物となるアビシニアハイランドシープの革のみを使用
革をなめす過程では大量の薬品や水を使用するため、タナリー(革なめし工場)では水をきちんと浄化して自然に戻すシステム完備が不可欠となる。しかし、エチオピアをはじめ途上国のタナリーでは十分な浄化システムを備えておらず、周辺地域の水質汚染を引きおこしているのが実情だそう。

そこでandu ametは、基準に見合った環境対策を講じているタナリーとのみ契約し、契約前のみならず契約後も、すべてのタナリーに定期的に足を運び、環境基準をクリアしていることを直接確認した上で革の仕入れを行なっているという。

その他、生産の現場以外でも、店舗兼オフィスの電気は100%再生可能な自然エネルギーにしたり、全てのラッピング材からプラスチック素材を排除したり、ペーパーレスを推進したりするなど、環境に配慮する取り組みが行われている。

エシカル、サステナブルというのは昨今さまざまなシーンで聞くことが多くなった。しかしそれを一過性のものや流行として捉えるのではなく、andu ametは自らが社会に与える影響についてしっかり考え行動している様子がうかがえる。

毎日の暮らしのシーンと共に

andu ametの魅力が存分に味わえるプロダクトを、ここでは3つ紹介したい。

「Airy」は、裏地を使わず、そしてつぎはぎもしていない一枚仕立てのバッグで、ずっと触っていたくなる皮のなめらかさが存分に味わえる。A4サイズの書類やPCもたっぷり入る大きさでたった100gしかなく、手にしていることを忘れるほどの軽さが特徴。しかしながら14kgもの耐荷重もあり、たくさん物が入るのでメインのバッグとしても、プラスチックバッグを持つ代わりに食料品の買い物時などにも毎日使える優れもの。

アフリカの田舎の風景をイメージした「Green field(グリーンフィールド)」というカラー。13インチのPCも収納可能

カラフルなエチオピアシープスキンを積み重ねて作られたストライプの装飾がアクセント
「Business Card Case」は、シンプルなデザインながら、フラップをひらくと華やかなカラーリングが特徴の名刺入れ。約1.5センチの折りマチがあり、一般的な厚さの名刺40〜50枚(厚手の場合30~40枚)を収納可能。交換した名刺を大切にしまいながら、使うほどに味わいを増す革の感触や変化を楽しみたい。

小さいながらも素材の上質感が味わえる「Business Card Case」

ベージュとスカイブルーのコントラストが印象的な「Nile Breeze(ナイルブリーズ)」というカラー。きらめく水面、吹き抜ける風。そんなさわやかなブルーナイルをイメージしたという
ミニサイズのお財布「Across Half Wallet」は、コイン、紙幣、カードなど必要なものを全て収納できる。4色の鮮やかなレザーを編み上げて作られた、工芸品のようなお財布だ。キーケースや小物入れとしても使える。

カラーは「Mimi(ミミ)」。エチオピアの言葉で「女の子」という意味で、ビビッドなピンク、ポップなオレンジにビターなブラウンをミックスした、元気溢れるカラー

小さいながらも大容量
丸みのあるフォルムや、エチオピアの豊かな大自然を想起させる色彩が特徴のandu ametのプロダクトは、寄木細工や着物の帯結びなどといった日本の伝統美からもインスピレーションを得ているそう。トレンドに左右されず、年を重ねてもずっと使っていたくなる、そんなデザインだ。

大切な時を一緒に積み重ねていく

時を重ねて作られたからこそ、時が経ち、使い込むほどに味わいも増す
猫や犬は飼い主に似るというが、andu ametのバッグや財布も持ち主に馴染み、長い間をかけて、持ち主に似てくるような気がしている。このプロダクトからは、そんな生きているような、命の力を感じられるのだ。

ひとつの大きなすじのようなしわがはいっているもの、うっすらと凹みがあるもの、不思議な模様のようなもの。人と同じように、唯一無二の皮の個性を味わいながら、日本の反対に位置するエチオピアの大自然、そしてその背後にあるストーリーに想いを馳せる。

andu ametのバッグや財布は、国境や時空を超え、日常、そして大切な時を一緒に積み重ねていくことができるだろう。

andu amet

https://anduamet.com/

Airy 30,800円(税込)
Business Card Case 15,400円(税込)
Across Half Wallet 13,200円(税込)