毎日繰り返される食事は、人間には必要不可欠な行為だ。もちろん食材を調理し、食べるだけでも生きていけるが、その食事が変化に富んだ心弾む時間であれば、より一層暮らしが充実することだろう。そのためにも、既存のインテリアになじみながらも、新しさをもたらしてくれるアイテムがほしい。そこで注目したのが、2020年に誕生し、食器や花器を中心に展開しているブランド、KIKIMEの「ozen」というウッドボードだ。高さを出したお盆型の木の器は、ダイニングテーブルの上に高低差を生み出す。食事の時間はどのように変わるのだろうか? 「ozen」のある食卓の魅力を探っていこう。
食卓を演出する器
家で食事する時を思い出してみる。フラットなテーブルの上に、いくつかの平皿や深皿、お椀が並び、カトラリーを置く。見慣れた光景だが、時々どこか退屈に感じることがある。そこで日常的に使えて、食卓を効果的に演出してくれるアイテムがほしいと思うようになった。そんな折に見つけたのが、KIKIMEの「ozen」である。
寿司下駄のようでありながら、洗練されたフォルムのウッドボード。ナチュラルな素材感が、器というよりトレーのような印象を与える。このアイテムを食卓に取り入れたら、どうなるのか。食事の時間がもっと楽しくなるだろうか。そんな好奇心に駆られて、実際に使ってみることにした。
日常品を目利きし、ニューノーマルを生み出すKIKIME
「等身大の暮らしの中に、心地の良い“効き目”をもたらすモノづくり」というコンセプトを持ち、日本各地の産地と協働するプロダクトブランドKIKIME。食器や花器などを中心に、細部までこだわったものづくりを行う気鋭のブランドだ。
KIKIMEというブランド名には、“効き目”という意味以外に、“目利きして編集する”という視点も込められている。暮らしの愉しみに寄り添うものを選び抜き、KIKIMEの視点で再構築することで、遊び心のあるアイテムを生み出しているのだ。そのためのものづくりに垣根はなく、産地・素材・最新技術・手仕事などそれぞれの良さを組み合わせながら、ライフスタイルに新しい風を吹かせるニューノーマルなアイテムづくりに成功している。
手持ちの食器が和食器でも洋食器でも合わせやすそうな、素材感とカラーリング。シンプルで日用品として親しみやすいプロダクトでありながら、他とはひと味違う洗練されたセンスも感じられる。そのバランスの良さが魅力のひとつだと言えるだろう。
組み合わせることで広がる。職人のこだわりが詰まった器「ozen」
人や技術、素材をボーダレスに捉え、その良さを生かしたものづくりを行うKIKIME。今回筆者が注目した「ozen」の場合、同じ木材であっても、神奈川県と北海道という異なる産地の素材を用い、最終的に小田原の職人の手によって仕上げられている。
そのデザインのアイデア元は、日本人に馴染み深い寿司下駄なのだとか。寿司下駄は寿司屋ではよく見かけるが、日常的には使わないアイテムだ。その寿司下駄を現代の視点で捉え直し、載せる食材を選ばない、人が集まる食卓で活用できるアラカルトボードに生まれ変わらせたのだ。
「ozen」の高さを出している、脚の部分に注目してみよう。よく見るとカラーのストライプが入っていることがわかる。これは北海道芦別市で生まれた、「ペーパーウッド」というシナ材と再生紙を組み合わせた合板素材。焦げ茶色のウォールナットの天板にはブルー、明るい茶色のケヤキの天板にはオレンジが差し込まれ、モダンな雰囲気と強すぎない個性を醸し出している。
食材を載せる天板部分には、ウォールナットとケヤキの天然無垢材を使用。硬いウォールナットは傷がつきにくく、柔らかいけやきは滑らかな肌触りが魅力で、使い込むほど味わいのある風合いになる。
この天板部分を加工するのは、箱根寄木細工の地場産業としても有名な神奈川県小田原市の職人。天面には汁が落ちないようにと繊細な縁取りが施され、「ozen」同士を重ねた時も縁の中に脚が安定して収まるように設計されている。さらに脚の丸みに合わせて、天板の側面や底部も角のない滑らかな形になるよう、ひとつひとつ丁寧に仕上げられている。
上から見ても、横から見ても、木のさまざまな表情が楽しめるプロダクトなのだ。
乾物も汁気のあるものも。載せることで華やぐ食卓
「ozen」はひとつでも使えるが、皿として、テーブル上のミニテーブルとして、飾りとして…その時々で必要な役割を持たせることができる機能的なアイテムだ。さらに組み合わせることで食卓の可能性を多様に広げていくことができる。
晩酌をする時も、いつものお皿から「ozen」に変えることで、おつまみがワンランクアップ。木の素材感を残しながらも、器として使いやすいように、透明のウレタンコーティングが施されているので、水気が多い食材や油っこい食材も安心して置くことができる。水はけが良く、手入れもしやすいのが嬉しいポイントだ。
これからの季節、バレンタインデーやホワイトデーなど、お菓子を食べる機会も増える。そんな時にお菓子を載せるトレーとして使えば、テーブルの上がパッと華やぐ。上から見ても、横から見ても、斜めから見ても、いい景色。使えば使うほどに、アイデアが広がっていくはずだ。
これまでの文化から、新しい価値を見つける
食事の時間をより楽しませてくれる「ozen」。その発想の元だという寿司下駄自体は、寿司ネタを置くためのアイテムだが、もともとカウンターの上にバランを敷きその上に置いていた文化から、効率よく手入れするために木の板を置く文化に転じ、さらに湿気対策のために脚をつけて今の寿司下駄となったそうだ。ただ機能を追求して生まれたアイテムだが、寿司下駄にはいつの間にか、「本格的」「高級感」といったイメージも付随するようになった。
そのせいか、「ozen」にポンと食材や小物を置くだけで、それが「特別なもの」という印象に変化するのだ。さらに食卓に強弱と奥行きを持たせ、楽しみを与えてくれる。いつもの暮らしに「ozen」を加えて、食事の時間に新しい価値を見出してみてはいかがだろうか。
KIKIME ozen
「ozen」ウッドボードL
カラー:ウォールナット×ブルー/ケヤキ×オレンジ
各¥8,800(税込)
「ozen」ウッドボードS
カラー:ウォールナット×ブルー/ケヤキ×オレンジ
各¥7,480(税込)
https://www.kikime.tokyo/2021年2月15日(月)まで、COREDO室町3の期間限定店舗「こしらゑ」内にて商品を展開中。また1月18日(月)〜3月中旬まで、梅田の蔦屋書店でもPOP UPにて展開予定。
CURATION BY
フリーライター・エディター。専門はコミュニケーションデザインとサウンドアート。ものづくりとその周辺で起こる出来事に興味あり。ピンときたらまずは体験。そのための旅が好き。