Vol.154

MONO

07 AUG 2020

こだわりの一人暮らしを「中川政七商店の漆椀」とともに始める

一人暮らしと漆椀は、なかなか結びつかないかもしれない。漆器は高価で、お金に余裕のある年配の人が持っているように思いがちだ。だが、今回紹介する漆椀は一人暮らし初心者におすすめなのだ。いや、一人暮らしに限らず、こだわりの生活を送りたい人に向いている。 堅牢で汚れがつきにくく落ちやすい。しかもどんな料理も映える。道具としての実用性と見た目の美しさ両方を兼ね備えている。シチュエーションを問わず、こだわりの生活を実現する様子を物語仕立てで紹介しよう。

こだわりのつまった一人暮らしを始める

一人暮らしを始めて最初の月曜日。朝は案の定時間がなくて、昨夜作っておいたおにぎりを持って家を出た。

夜、家に帰ってもごはんは待っていない。でも昨日、ちゃんと買い物をしておいた。
料理が得意なわけではないけれど、これからはなるべく自分で作ったごはんを食べる。一人暮らしを始めるときに決めた自分ルールだ。

今夜は親子丼とけんちん汁。たっぷりのタンパク質とたっぷりの野菜。炭水化物も抜かない。
けんちん汁は多めに作って、明日の朝ごはんにする。

裏底には中川政七商店の「七」のロゴが入っている
この部屋に決めたのは、空間がすてきだったからだ。この空間なら、自分の理想の暮らしができると思った。空間を大切にするために、持ちものは極々少なくすることにした。食器も必要最小限で使い回せるもの。

選んだのは、中川政七商店と越前漆器の老舗・漆琳堂(しつりんどう)とのコラボレーションによる「食洗機で洗える漆椀」。

以前から中川政七商店は気になっていた。

「ものが溢れるこの時代、何を選ぶのか、さらに言えば、
 何をもって善とするのか
 何をもって美とするのか
 何をもって真とするのか
 個人の価値観が問われる時代であると感じます。」(中川政七商店公式サイトより)

ものを選ぶことは、私の価値観を表現すること。

持ちものを少なくするために使い回せるものを、空間を活かすために部屋に似合うものを選ぼうとしていた。けれど、使い回せて部屋に似合うことは必要だが十分じゃない。美しいと思えるもの、大切に使い続けたいと思えるもの、そして使い続けられること。

この漆椀には、私の価値観が詰まっている。

疲れているときも時間がないときも、できる限り手を抜きたくない!

火曜日、一人暮らしを少しだけ後悔。トラブルで帰りが遅くなり、買い物をする元気もない。今夜は冷蔵庫にある残りもので簡単に作ろう。昨日の残り野菜、実家の真似をして冷凍庫に入れておいた薄揚げとうどんを使ってカレーうどん。

漆椀に盛ると残りもので作ったように見えない
今夜はオンライン英会話レッスンで時間がないから、洗いものは食洗機にまかせてしまおう。最近は一人暮らし向けの小さいタイプの食洗機も増えてきて、時間がなかったり、具合がよくなかったりするときには助かる存在だ。

手を抜きたくなくても抜くしかないときもある。美しさと便利さ、両方備えているこの漆椀だからこそ、無理せずに自分ルールを貫くことができる。

水曜日、今日も午前中から予定がいっぱいだ。朝ごはんという楽しみがあるから、早起きも苦にならない。大サイズは、大きさと深さがシリアルボウルにもぴったり。この漆椀の使い方は自分次第だ。
そして漆器は汚れがこびりつきにくいから、忙しい朝の洗いものも楽でいい。

漆器だから和食だけ、と制限するのはもったいない
木曜日、しばらくサボっていたから今日はちゃんとしたものを食べよう。野菜をたっぷり食べられるビビンバとわかめスープ。漆の黒は、ごはんの白も、野菜の緑も、コチュジャンの赤も全部しっくりくる。

こんな美しい漆器が食洗機に耐えられるとは驚きだ。創業227年の越前漆器の老舗・漆琳堂が現代に合わせて、素地や天然本漆を研究開発したそう。今の八代目が継承してから「漆器を日常に」という想いで、次々と新しいことに取り組んでいる。

黒と朱、どちらもいい色なので選ぶのに迷う
漆器は、高価で美術品のような特別なものというイメージだった。だが、漆琳堂の漆器は特別な人たちやハレの日のものではなく、ケの日常に寄り添うもの。

縄文時代にすでに存在した漆器は、アートではなくファンクショナルな生活の一部だったのだ。

あっという間の週末、理想の休日のすごし方

金曜日、今夜はオンライン飲み会。お酒のアテは枝豆に、山形のだしをのせた冷奴。冬になったら、湯豆腐もこれで食べたい。

画面に映った漆椀をほめられた。陶磁器はこだわって選ぶ人が多いけれど、漆器を持っている人は少ないようだ。今は一番大きいものとその次に大きいものの2つしか持っていないが、今度は一番小さいものを買ってみようか。お椀だけど、小さいものはぐい呑みたいな使い方もできそうだ。

数が増えても入れ子にしてしまえるから、持ちものを少なくルールには抵触しない。深さがあるから、平皿を重ねるよりは場所をとる。でも、入れ子にしたら大きいものの中に収まるから、1つも4つも占めるスペースは同じ。

漆器同士は重ねても平気、漆器以外の場合は傷がつかないよう間にティッシュを挟むとよい
土曜日、一人暮らしを始めたらやってみたかった、休日のブランチ。

お米からおかゆを炊いて、実家から持ってきた実山椒の佃煮を添える。朱の漆椀におかゆを入れると、食欲が増す。熱を通しにくいから、熱々のおかゆでもちゃんと手に持って食べられる。

黒はなんでも合うが、朱とごはんの白の相性もいい
漆器を手に取り、光にかざす。光をうけて輝く外側と陰に沈む内側。明るいところでは艶々と輝き、暗いところでは色の深さが増す。

漆器は分業制で、何人もの職人の手を経て、ひとつの器ができ上がる。けれど、それで完成ではない。

本当の完成は100年後とも言われている。漆は湿度を吸収し吐き出すことを繰り返して硬くなっていく。さらに、拭くことで表面の粒子がなめらかになり、深い艶が増す。今はまだまだな私の料理の腕とともに、この漆椀の美しさも育っていく。

修理して、塗り直して、一生使える漆椀

日曜日、買い物をして来週のために冷凍したり、作り置きをこしらえる。その前に、休日だから大好きなパスタでランチ。カボチャのスープも作ろう。

上手じゃないけれど、自分で作った料理はおいしい。買ってきたお惣菜を盛り付けてもおいしそうだけど、やはり自分で作ると満足度が断然上がる。これからもできるだけ料理しよう。

うどんやそばだけでなく、パスタを盛り付けても違和感がない
いつか誰かと一緒に暮らすことになったら、ふたりで料理をするのだろうか。
ふたりなら、今あるものと逆の色を買おう。棚に並ぶ黒と朱の漆椀。すてきだ。

漆器には経年変化という楽しみもある
実は漆器は塗り直しをしたり、傷がついたら修理をしたりできる。欠けたところを埋め、色を塗る。色あせたり、色を変えたくなったら、塗り直す。

漆器は実にファンクショナル。少し気をつければ、ずっと使える。汚れがつきにくく、どんな料理にも合い、壊れても修理して捨てる日は来ない。こんないいものを、なぜみんな日常使いしないのだろうか。

こだわりのために手を抜くことをおそれない

初めて一人暮らしを始めるとき、ずっと自分ルールを守って最初の状態をキープするんだと決意する。こだわって選んだ部屋で、こだわって選んだものだけに囲まれて暮らしたい。部屋ですごす時間を大切に、丁寧な暮らしをしたい。

日光に弱いので、直射日光に当たらないように気をつけよう
だが、どうしても手を抜かざるを得ないときもある。疲れていたり、具合が悪かったりという場面を想定し、ものを選ぶときに想像力を働かせよう。

見た目がよい、センスが合うのはもちろん、手入れのしやすさや使い勝手のよさも併せ持つものを選ぼう。

それは妥協ではない。自分の価値観が詰まった一人暮らしをデザインするためのこだわりなのだ。


中川政七商店「食洗機で洗える漆椀」

中川政七商店「食洗機で洗える漆椀」
大椀:約890cc、直径150 * 高さ90(mm)、7,700円(税込)
 大:約520cc、直径125 * 高さ75(mm)、5,500円(税込)

大椀:https://www.nakagawa-masashichi.jp/shop/g/g4547639461520/
 大:https://www.nakagawa-masashichi.jp/shop/g/g4547639444851/