iPhoneが初めて日本に上陸し、世間を驚かせたのは2008年のこと。あれから早18年、スマートフォンはもはや私たちの生活インフラとなった。中でも大きく変わったことの1つが、音楽との距離感だ。SpotifyやApple Musicを開けば、指先ひとつで世界中の楽曲へアクセスできる。場所も時間も選ばない、圧倒的に便利な時代。しかし、あまりにも効率化された日常を過ごす中で、一瞬ふと立ち止まりたくなるときがある。そんなとき、筆者は「ラジカセ」で音楽を聴くことにしている。ストリーミングが当たり前の今、生活にアナログを取り入れることで、時間の感じ方や風景の見え方は180度変わる。
時代を超えて愛される、ラジカセの変遷
「ラジカセって何?」という方のために、まずはラジカセの概要を紹介したい。
ラジオカセットテープレコーダー、通称「ラジカセ」が黄金時代を築いたのは、1970年代から1980年代にかけてのこと。音楽やラジオは家で聴くのが当たり前だった当時、乾電池で駆動し、どこへでも持ち運べるラジカセは、まさに自由を象徴する夢のアイテムだった。
もともとラジカセの原型は海外で生まれたものだが、日本メーカーが高性能化・量産化に成功すると、世界中から需要が爆発。特にアメリカでは日本製のラジカセは「BOOMBOX」と呼ばれ、ヒップホップ文化の飛躍に大きな影響を与えることとなった。
その後、音楽視聴の手段はCDプレイヤーやMDプレイヤー、そしてiPodへと移り変わっていったが、ラジカセに愛着を持つファンは今なお絶えない。現在も一部メーカーから新機種が発売されている他、あえて新譜をカセットテープでリリースするアーティストも増えており、専門店も存在するほどだ。
カセットは、アナログメディアの中で特に手に取りやすい価格帯であることも魅力。現在レコードの新譜が1枚5000円〜7000円するのに対し、カセットは1つ2000円〜3000円ほど。場合によってはCDよりも安く入手できるため、コレクションするハードルが低く、所有する喜びを手軽に味わえるのが嬉しいポイントだ。
コンパクトなのに多機能なラジカセ〈WINTECH〉SCT-R227
筆者が愛用しているのは、ラジカセやラジオを中心に展開する家電ブランド〈WINTECH〉のSCT-R227。赤いボディが目を惹くビジュアルは、部屋のインテリアとしても魅力的だ。
まず嬉しいのが、乾電池とACの2WAY対応であること。室内ではコンセントに繋ぎ、屋外では乾電池を入れてコードレスで。シーンを問わず、どこでも音楽を楽しめる。
そしてSCT-R227の真骨頂は、その多彩な機能性だ。カセットテープの再生はもちろんのこと、USBやMicroSDにも対応。さらに、ラジオもタイムラグなしで視聴可能。スイッチ一つでAM/FMを切り替えられる簡単さもありがたい。
また、録音機能も驚くほど充実している。ラジオの録音はもちろん、内蔵されているマイクに自分の声や音を吹き込むことだってできる。さらには、カセットテープからUSBやMicroSDへのデジタル録音、その逆にデジタル音源をカセットテープへダビングすることも可能だ。
コンパクトな本体にぎゅっと詰め込まれたさまざまな機能が、豊かなラジカセライフを彩ってくれる。
ラジカセで、音楽を公園に持っていこう
ラジカセを家で聴くのもいいが、私のオススメは公園に持っていって聴くこと。野外フェスやキャンプが好きな方であれば、その気持ちが分かってもらえるだろうか。
スマホさえあれば、外でも音楽は聴けるものだが、ラジカセを持ってぜひ出かけてみてほしい。デジタルとアナログでは、外で聴く音楽もかなり違って聴こえるはず。
今回紹介するラジカセSCT-R227の重量は約406g。スマホが約200gであることを考えると、そんなに重くもない。音楽を聴くためだけにこの「塊」を持ち歩くのは、どこか非日常を感じられる。「スマホで音楽を聴けばいいじゃん」と思われるかもしれないが、この手間暇こそが、いつもの散歩を特別なイベントへ変えてくれる。
デバイスが変わるだけで、景色も違って見える
今回訪れたのは、いつも散歩で立ち寄る公園。実際にカセットをセットし、再生ボタンを押してみよう。
テープが回りだすと、わずかな「サー」というノイズの後、ゆっくりと音が立ち上がる。音楽が流れるまでの、この「わずかな空白」。これこそが、音に出会う喜びを何倍にも膨らませてくれる。スマホでデジタル配信を聴くだけでは決して味わえない、音楽への高揚感が身を包むのだ。
いつもはスマホで聴いている音楽もラジカセで流してみると、スマホで聴くのとは全く異なる。空気を含んだ音が広がりだす。デバイスを変えるだけで、いつも見る景色まで違ってみえるから面白い。
ラジカセを操作していると、自然とスマートフォンとの距離が置けるのも、代えがたい体験のひとつ。通知の音に遮られることなく、ただただ音の粒に身を委ねる。そこには、普段よりもずっと緩やかで、密度の濃い時間が流れている。
ちなみに、SCT-R227にはイヤホンジャックも備わっている。有線イヤホンで「自分だけの音」をひとり楽しむのも、大人の贅沢な遊び方だろう。
豊かさは、“面倒”の中にある。
指先ひとつで、世界中の音楽を瞬時に呼び出せる時代。私たちはあまりに「便利」に慣れすぎているのかもしれない。そんな現代にラジカセが教えてくれるのは、効率の対極にある贅沢だ。
カセットテープを選び、パチリと蓋を閉め、再生ボタンを深く押し込む。客観的に見れば、それは面倒なステップの連続だ。しかし、その一つひとつの所作が、音楽を聴くことの感動や喜びを思い出させてくれる。
スマホの画面から目を離し、ラジカセから流れる温かい音に身を委ねてみる。すると、見慣れた景色がなぜかいつもより鮮明に感じられるはずだ。
CURATION BY
株式会社マシカクの代表取締役/コピーライター。東京とロックが好きです。