Vol.673

KOTO

29 JUL 2025

世界中を魅了するKENDAMAカルチャー。 デザインも技も進化し続ける最新けん玉の奥深い世界

けん玉と聞くと、日本の伝統的な玩具というイメージが強いかもしれない。ところが今、海外をも魅了する「KENDAMA」(以下、ケンダマ)カルチャーとして進化を続けているという。世界中で大会が開かれ、無数の技で魅せるスター選手たちは注目の的。デザインも多彩で実に奥深い。そんなケンダマの世界を紹介しよう。

ケンダマは国境や”遊び”を超えたカルチャー

ある休日、晴れた日に公園を歩いていると、ケンダマを楽しむグループを見かけた。10~20代が中心、ストリートファッションに身を包み、持っているケンダマはどれも違っていてクールなデザイン。ケンダマのイメージがガラリと変わった瞬間だった。

実はこのような光景が見られるのは日本だけではない。今、世界中でプレイヤーが増え続けている。約10年前からケンダマを広めているコーヒーとケンダマの店「muumuucoffee」(東京都墨田区)のオーナー、アユムさんは「アメリカやカナダなども10年以上前から、アジアの国も台湾や香港などたくさんのプレイヤーが生まれてきています。ヨーロッパでも古くからはデンマーク、最近はオランダなどを中心にどんどん広がってきている印象です。日本では10代のプレイヤーたちが頭角を現していますが、子どもから大人まで年代に限らず幅広くプレイヤーがいます。海外イベントだと20代プレイヤーの参加が多いようです」と話す。

アユムさんいわく、ケンダマは音楽やスケートボード等と一緒、とのこと。つまり、言語を超えたコミュニケーションツールになる、というのがおもしろいところだ。

コーヒーとけん玉の店「muumuu coffee」

「2014年に香港に行ったとき、現地で偶然出会ったプレイヤーたちと仲良くなりました。今でも交流があります。『ケンダマは国境や遊びを超えた意思表示のアイテム』だと感じた原体験でした」(アユムさん)

常連のお客さんにもケンダマ好き多数。コーヒーを飲みながら新顔のお客さんにケンダマを教える光景は日常だとか

技は無限大。新技も開発され続けている

世界中のプレイヤーを魅了するケンダマの魅力とは何だろうか。アユムさんは「技の無限さ」「達成感」「手軽さ」だと話す。

「基本的な『載せる』『刺す』という動作を思い浮かべると思うのですが、誰でも簡単に始められ、技の数も無限大。世界中のプレイヤーたちによって、常に新しい技が生み出され続けています。技ができるようになった時の達成感は、もはやスポーツですね。そして、いつでも手軽にプレイできることがいいですね」

まず、ケンダマは、「玉」、とがった部分の「けん先」、最も大きな皿状の「大皿」、少し小さめの「小皿」、けんの下の部分にある「中皿」などの部位があり、それらを駆使して技を繰り出す。

ケンダマの部位

けん先

玉の穴
例えば、代表的な技は以下のようなものがある。

玉の穴の部分を大皿のふちに固定させるバランス技「ウグイス」

玉の部分を持ち、大皿か小皿を玉の上に着地させる技「月面着陸」

玉の部分を持ち、けん先を玉の上で垂直に着地させるバランス技「ボーダーバランス」
複数の技を組み合わせた高難度技も。

玉とけんを紐でテンションをかけながら(張力を加えながら)放り投げ、宙で1回転させ、玉をキャッチした後、穴にけんを刺す「宇宙遊泳」
さらに最近では、ケンダマは木製だけでなくゴム製のようなものも存在しており、弾力を生かして地面にバウンドさせるなどの技も生み出せる。技の組み合わせ、発想力、素材の違い…”技の数は無限大”という言葉、納得。

ちなみに新しい技は、主にInstagramを中心に日々シェアされていて、ハッシュタグ「#けん玉」などで検索すると、多くのプレイヤーの投稿を見ることができる。

世界中のメーカーが生み出す魅力的なデザイン

ケンダマの魅力はデザインにもある。今、メーカーは世界中にあり、各国で個性豊かなアイテムが生み出されている。

メーカーによって、使う素材、サイズ感、重さ、質感、硬さなど特性が異なるのがポイントだ。一例を見てみよう。

「Sol Kendamas」(アメリカ)

アユムさんは「Sol Kendamas」チームプレイヤーで、店で取り扱っているのも同メーカーのものがメイン。大皿、中皿、小皿、玉の穴が伝統的なけん玉よりも比較的大きめに作られているほか、玉の塗装も滑りにくい特殊な加工(バット塗装やスティッキー塗装)が施されているため、技を決めやすいのが特徴。

muumuu coffee + sol kendamas コラボけん玉(左2つ)各7,700円、6月に発売したばかりの11周年記念けん玉 各12,000円。11周年記念はメイプル・ローズウッド・パープルハートの寄木。ケンダマの縦柄のデザインは珍しく、縦柄と無垢パートを7:3ほどで分割し、玉の回転の視認性を高めるための工夫が凝らされている

Pastels 各3,900円。木材は軽量なバーチ材で、他のケンダマの重さの約半分。価格帯も抑え目で、初心者にもおすすめ
ケンダマの素材にもこだわりがあり、けんには硬くてきめ細かいメイプル材、玉には少し柔らかいブナ材を使用することが多いそうだ。硬さのあるメイプル材はけんの耐久性を高めることができる一方で、柔らかいブナ材を使った玉は使ううちに穴の部位が少しずつ広がり、けんに刺さりやすくなる(育つ、という)。使い込むごとに自分仕様になじんでくるというわけだ。

Pastelsシリーズは、けんと玉の素材にバーチを使用。メイプルやブナに比べて耐久性は劣るが、軽量で安価なため、初めてけん玉を買う人におすすめの一つ、とのこと。

また、人気ケンダマプレイヤーとのコラボアイテムもある。

Kevin DeSoto Pro Model 2.0 7,700円。ストリートけん玉黎明期から活動するプロチームメンバーデザイン。けんはメイプル、玉はブナ・ウォルナット・アッシュの寄木で、質量感もちょうど良い

Mateusz Rudny Pro Model 8,600円。ポーランドにある選手お気に入りのケンダマスポット(ケンダマをする場所)からのインスパイアによるデザイン。けんと玉、ともにメイプルを使い、レーザー刻印など多彩なプリント技術を駆使した逸品

「DA Oringinz」(オーストリア)、「Okendama」(ラトビア)

「DA Oringinz」「Okendama」は共にヨーロッパで新鋭のメーカーで、独特な質感の玉塗装でグリップが強く、バランス技が決まりやすい。日本や海外でもファンが増えている。


「DA Oringinz」(オーストリア)/右、「Okendama」(ラトビア)/左。
いずれも「Sol Kendamas」とのコラボモデル(アユムさん私物)

「AKA kendama」(オランダ)

オランダの職人が端材などを利用し、手作業で一つ一つ削って作っているクラフトケンダマ。シェア工房で他の家具職人が出した家具の端材を使うため、オーダー時に素材やデザインの指定はできないが、そのユニークな制作スタイルと、そこで生まれる唯一無二のけん玉が注目されている。

作っているのは、けんのみ。玉は自分で入手し、好きなものを組み合わせる(アユムさん私物)

「山形工房」(日本)

競技用けん玉生産「日本一」の認定工場。伝統的なケンダマを生み出しているが、5個の玉を一気に皿にのせる変わり種も。「平衡感覚と目線が成功のポイント」とのこと。

5連大皿。写真はBEAMSとのコラボモデル(アユムさん私物)
ケンダマは木製が多いため、使い込むほどに色合いや質感が変化し、手に馴染んでいく「経年変化」も楽しめる。飾ってデザインを楽しむのも良いけれど、努力して技を習得し、なんだったら塗装もはげたりしてしまったものの方が、勲章になるに違いない。

使い込んだケンダマがズラリと並ぶ様子も、味わい深い

まずは自分にしっくりくる1本と出会う

「できれば実際に使ってみて、自分に一番しっくりくるものを選んでいただきたいですね。デザインで選ぶのももちろん良いです」とアユムさん。

自分に合う重さ、質感、使いやすさ。初心者には、皿や玉の大きさが比較的大きいものや、玉が滑りにくい加工がされているもののほうが、技が決めやすくてオススメとのこと。ある程度の重さのあるケンダマはコントロールしやすい一方で、子どもや女性なら、扱いやすさから軽さを重視するのも一手。

インタビュー中も息を吸うようにケンダマの技を繰り出すアユムさん
ケンダマ初心者の筆者も、アユムさんにオススメしてもらった1本を使って簡単な技を教えてもらった。今までチャレンジしても、どうしてもできなかった「大皿ジャンプ」(大皿に玉を載せる技)、「ろうそく」(中皿に玉を載せる)、「まわしとめけん」(玉を回転させたあと、玉の穴をけん先で刺す)、「飛行機」(玉を持って、けん先を玉の穴に刺す)と4つの技も短時間で成功! 相性のよい1本と出合うことで、ケンダマの楽しさが何倍にもなることを知った。

進化し続けるケンダマカルチャー

ケンダマの楽しさは人とのコミュニケーションツールにもなりえること。今はSNSを見ながら技を習得することもできるが、ケンダマ1本を持って休日の公園に繰り出せば、技を教えあえる仲間との出会いがあるかもしれない。

日本生まれのケンダマが、世界中に広がり、今も日々、進化を続けている。5年後、10年後にはどのようなカルチャーに成長しているだろうか。

muumuu coffee

東京都墨田区京島3-50-14
営業時間・定休日 ※Instagramのストーリーズで確認
https://www.instagram.com/muumuucoffee/

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