Vol.57

KOTO

21 AUG 2019

写真はアイデンティティ!オールドレンズで個性を追求するには?

近年スマートフォンやデジタルカメラの技術が進化し、失敗することなく気軽に高画質な写真を撮影できるようになった。一方でそんなデジタル写真の均質さに対抗するかのように、インスタントカメラやフィルムカメラも、レトロで味のある写真表現ができると人気が再燃している。そして今注目したい写真の新しい楽しみ方が、「デジタル一眼レフカメラ×オールドレンズ」による撮影だ。高性能なデジタル処理による画像の美しさと、オールドレンズの個性光る描写が、自分らしい写真表現を可能にしてくれるという。その奥深い世界を知るべく、数多くのオールドレンズを取り扱う「ラッキーカメラ店」へ向かった。

”新旧融合の妙”が、写真表現に差をつける!

数ヶ月前、「SONY α7s」を知人から譲ってもらった。フルサイズセンサーが搭載されたミラーレス一眼レフカメラだ。そして、一眼レフカメラを手に入れると欲しくなるのが、交換レンズである。スタンダードに純正の交換レンズで遊ぶのも楽しいものだが、フルサイズのミラーレスカメラを手に入れた今こそ、オールドレンズ沼に飛び込み「自分らしい写真」を追求したいのである。

オールドレンズとは、かつてのフィルムカメラ時代に使われていたレンズのこと。一般的にレンズはメーカーごとにカメラ本体とレンズを連結するマウントの種類が異なるため、純正のものを装着することが多いが、マウントアダプターを使用すれば他メーカーのレンズも使用することができる。SONYのカメラを使う場合、ボディ側が「Eマウント」のマウントアダプターを用意する必要がある。

さらにオールドレンズは35mm判フィルム(=フルサイズ)対応のレンズが多い。つまりフルサイズのミラーレス一眼があれば、様々なオールドレンズで遊べるというわけだ。

しかし、問題はレンズ選び。初心者にも違いのわかる、遊べるオールドレンズはやはり単焦点レンズ。そこでおすすめしてもらった、ボケをより楽しめる「絞り値が小さい明るい単焦点レンズ」がこちらだ。

左奥から:Canon 50mm F1.8、Super Takumar 55mm F1.8、NIKKOR-S.C AUTO 50mm F1.4、HELIOS-44M-4 58mm F2
キヤノン、スーパータクマー、ニッコール、ヘリオスの4レンズである。なかでも柔らかな描写とボケ味が美しいスーパータクマーと、「ぐるぐるボケ」というボケの部分の描写がぐるぐると回るように暴れる現象を楽しめるヘリオスが人気だという。

現在のカメラレンズは自動でピントを合わせるオートフォーカスが主流だが、オールドレンズはマニュアルフォーカスのものが多く、ピントは自分で合わせなければならない。しかし、多くのミラーレスカメラ本体に搭載されている「ピーキング(※)」機能と、モニター上での「拡大表示」による確認作業を行えば、そんな難関も問題なく、簡単にピント合わせが可能だ。

かつては玄人向けだったオールドレンズだが、初心者でも使いやすくしてくれる機能が備わったことで、気軽に挑戦できるようになっている。

また最新のテクノロジーが搭載されたデジタルカメラでは起こりにくい「フレア」や「ゴースト」が自然発生するのも、フィルム時代のレンズの特徴。

※ピントが合っていると思われる箇所が、ライブビューに色付きで表示される機能。合焦表示。これにより、ピントの山が確認しやすくなる。

フレア(画面中央に発生した逆光の反射と丸い光の円)が入っている

ゴースト(画面中央右に発生した虹色のリング)が入っている
オールドレンズは最近のオートフォーカスレンズと比べて加工方法が異なり、レンズの表面も球面状のものが多い。そのため光が反射しやすくなることで、フレアやゴーストも発生しやすくなり、それが写真の味となるのだ。

それらを踏まえて、デジタルの機能に対してオールドレンズをどう楽しむのか。判断基準は、オールドレンズの味となるボケの出方だ。そこでボケの出方の違いが明確だった2種を手に入れた。

オールドレンズその1:NIKKOR-S.C AUTO 50mm F1.4(ニコン)

NIKKOR-S.C AUTO 50mm F1.4 (マウントアダプター:レンズ側 ニコンFマウント/ボディ側 ソニーEマウント)
1つ目のオールドレンズに選んだのは、日本製のニコンレンズ、NIKKOR-S.C AUTO 50mm F1.4。1962年に発売され、14年のロングセラーとなったNIKKOR-S AUTO 50mm F1.4のレンズに、マルチコートが施されたバージョンだ。自然に近い視野でくっきりとした写りが特徴のオールドとニューの間に位置するようなレンズである。ゴツゴツとしたフォルムのシブさと、カラフルに塗られた絞りの目盛の甘辛バランスがたまらない。

レンズは見た目も大切。ボディに装着した時の「かっこよさ」も、オールドレンズを楽しむための重要なポイントなのだ。

NIKKOR-S.C AUTO 50mm F1.4 作例
こちらはピントが合っているところがかなりシャープに描写される。ボケとの対比がわかりやすく、初心者も使いやすいレンズだ。

オールドレンズその2: HELIOS-44M-4 58mm F2(ヘリオス)

2つ目に選んだのはオールドレンズの醍醐味を実感させてくれること間違いなしの、ロシア製レンズHELIOS-44M-4 58mm F2。1958年から生産されているHELIOS-44シリーズのひとつだ。「ぐるぐるボケ」を楽しめるオールドレンズとして有名である。

HELIOS-44M-4 58mm F2(マウントアダプター:レンズ側 M42マウント/ボディ側 ソニーEマウント)
「ぐるぐるボケ」は、レンズに入った光が1点に集まらずバラける「非点収差」が起こる現象。四隅がきちんと描写されず、その結果面白みのある画に仕上がるのだ。また、この現象は他のロシア製レンズでも見られるそうだ。

HELIOS-44M-4 58mm F2 作例
こちらは絞りF2.0開放にしてISO感度100に設定して撮った写真。結構シブい感じに写りつつも、ピントが合っている部分の描写はふわっと柔らかい。

ちなみにヘリオスはギリシア神話の太陽神から来ている言葉。その名の通り、明るい光の中で撮影すると、その魅力がさらに引き立つ。ハレーションが起こりやすく、ハイライトが効くので白っぽく写り、どこか淡い印象の写真を撮ることができるのだ。

HELIOS-44M-4 58mm F2 作例

HELIOS-44M-4 58mm F2 作例

「ニコン」と「ヘリオス」を比較

NIKKOR-S.C AUTO 50mm F1.4 作例

HELIOS-44M-4 58mm F2 作例
2つのレンズを同じ被写体で撮影して比べてみると、ニコンの方がヘリオスに対してシャープにピントが合っていることがわかる。一方でヘリオスのピントはマイルドに合いつつも、背景のボケが強くオールドレンズらしい写りを楽しむことができる。

王道以外のレンズにもチャレンジ。自分だけの写真表現を見つけよう

純正レンズよりも安く、気軽に購入できるオールドレンズ。メーカーごとにマウントアダプターが変わるが、レンズ沼にハマるにしてもそこまでの出費はなく、幅広い挑戦ができる。ピントの当たり方、ボケ味の違い、クラシカルな描写…無数にある様々なメーカーのレンズの中から、自分好みのレンズを見つけられることだろう。

ぜひ、「デジタル一眼レフカメラ×オールドレンズ」の組み合わせを駆使して、純正レンズにはないアイデンティティーの色がのった個性的な写真を描写してもらいたい。

Lucky Camera Shop

住所:東京都新宿区新宿3-3-9 伍名館ビル1F
営業時間:10:00〜20:00
定休日:年中無休
公式サイト:http://lucky-camera.com/