Vol.31

KOTO

01 MAY 2019

1枚からオーダー可能!CUT&RECで叶うアナログレコードづくり

近年「多様化」という言葉をよく耳にするようになった。例えば音楽を聴く方法を一つとってみても、ストリーミングによる配信サービスやダウンロード、コンサートで生の音楽を体験するなどがほとんどで、レコードやCDなどのフィジカルメディアが衰退しているイメージがあるかもしれないが、実はそうではない。この数年でアナログレコード市場が勢いを取り戻しつつあることをご存知だろうか。そんな需要が高まる中で、レコードを1枚から製作できるユニークなサービス「CUT&REC」が注目されている。サービスを実際に体験し、製作現場から垣間見えたアナログレコードの魅力を紹介する。

アナログレコードへの回帰

昨年、国内の音楽ストリーミングサービスが初めて楽曲ダウンロードサービスを上回った。一方ではダウンロードをはじめ、CDの販売は大きな落ち込みを見せている。アメリカの人気ロックミュージシャン、ジャック・ホワイトが「2020年代はストリーミングとアナログの時代だ」と言うように、ストリーミングサービスに加え、現在アナログレコードが再び注目を集めているのだ。

CUT&RECエンジニア・橋本 洋氏
アナログレコードへの回帰を想定したサービスCUT&RECは2017年に始まった。元々DJでもあるCUT&REC のカッティング・エンジニア橋本 洋(はしもと・ひろし)氏は、その音楽活動の中でデジタルが進化する一方、海外におけるレコードブームを肌で感じていた。
橋本氏は「モノから音が鳴る、聞いていて楽しさを得ることができる、そんな魅力がアナログレコードにはある」と語る。

世界で1枚のオリジナルレコードを作ることができるCUT&REC

そんな機運が高まる中で登場したのが、オリジナルレコードを1枚から気軽にオーダーメイドできるユニークなサービス、CUT&RECだ。
通常、アナログレコードを作るときは、最低100枚単位などの大量発注を前提としたオーダーが基本。1枚からの発注は不可とされてきた。しかしCUT&RECなら、1枚からの小ロットに対応したオリジナルレコードを作ることができる。
さらに、収録音源の入力からジャケットとレーベルのデザインまで、すべてサイト上で行うことができるのも画期的だ。音源と画像さえあれば、誰でも簡単にアナログレコードを作ることができるのだ。
世界に一枚だけのレコードは、ミュージシャンがアルバムリリースのタイミングで記念として製作するだけでなく、音楽活動をしていない方にも人気だ。例えば、友人の結婚式のお祝いや誕生日プレゼントなど、メッセージを録音したレコードを収録し、記念のギフトとしてレコードを製作する場合も多いのだという。

CUT&RECは簡単4ステップで可能

取材をしたこの日、音楽活動をしている私は偶然バンドの音源をノートパソコンに入れており、実際にCUT&RECのサービスを体験してみることに。
かつてCDを製作した経験から、データのやりとりなど戸惑った記憶があるが...CUT&RECなら、そんな心配は不要だった。
CUT&RECの特徴は「簡単に」そして「誰でも」オリジナルレコードをつくることができる点にある。ウェブ上で、ジャケットやレーベルのデザインを可能にし、画像をもっていればリサイズやコラージュ、テキストの入力も全て製作が可能だ。
CUT&RECの強みは、このアートワーク、ジャケットをウェブ上で一貫して完結できる点にある。レコードというアナログ技術にテクノロジーとの融合を果たした、現代的なサービスと言えるだろう。それでは4ステップでできるデータの入力方法を紹介しよう。

1.レコードのサイズを選ぶ

まずは7、10、12インチからレコード盤のサイズを選択する。7インチ、12インチは絵柄をプリントできるピクチャー盤にも対応している。一般的に流通しているサイズは12インチ(約30センチ)が多いとのこと。

2.音源をアップロードする

レコードに収録するオーディオファイル(WAV推奨)をアップロードする。もちろんA面とB面に収録が可能だ。

3.レーベルとジャケットをデザインする

ジャケットとレコードのセンターレーベルをデザインする。オリジナルの画像やテキスト、写真をウェブ上で自由にデザインすることができる。

4.完成イメージを確認する

完成したデザインは3Dで確認することが可能だ。ウェブで印刷物などを注文する際、オーダー通りのものができているか少々不安が残ることもあるが、CUT&RECなら完成イメージを360度の3Dプレビューで確認できるので、そんな不安も解消される。
ジャケット、レーベル、収録曲数は、サイト上でカスタマイズ可能。面倒な電話やメールでの見積もり依頼は不要だ。その場で金額がわかるのも、ユーザーにとって気軽にサービスを利用できる理由の一つだ。

レコード製作の過程

今回は神奈川県元住吉にあるCUT&RECのスタジオで、実際にレコードを製作する現場に立ち会うことができた。実はCUT&RECは自社スタジオで盤面の製作からジャケットの印刷まで全て行っている。1枚からのオーダーに対応できる秘密は、全て自社で完結している点にあるのだ。

レコードを製作する機材
スタジオはカッティングマシン、アンプ、インターフェイス、レコードプレイヤーなど、複数の機材が組み合わされている。全て自社で機材を選び、中にはわざわざドイツまで行き選んだ機材もあるというから驚きだ。機材好きの筆者にとっても、たまらないこだわり具合だ。

レコードカッター
レコードのカッターヘッドは人工のダイヤモンドの針がついており、ブランク盤に溝を刻む機能を果たす。この針からいくつもの音楽が生まれてくるのだ。

12インチブランク盤
こちらがブランクのレコード盤。初めて見たが、溝がなく、鏡のように輝いている。

照明はレコードを温めるために使われる。
機材を起動する前に、照明の熱でブランク盤を温める。適温にすることによりプラスチックのブランク盤への針の入りかたがスムーズになる。気候に左右されやすく、冬場だと静電気が発生するので注意が必要だ。これもアナログ機材ならではのオペレーションだ。

試行錯誤を重ねた技術が光る

7インチに溝が刻まれていく様子
針をセットし、12インチ盤でテストカットを終え、いよいよ本番だ。今回は7インチで製作する。スピーカーで音源を確認しながら慎重に針を落とし、レコードを削っていく。自分が作曲した曲がその場でレコードに音として刻まれていく。その様子を目の前で体験できるのは実に感慨深い…。
ミュージシャンにとって、目に見えない音楽をレコードという形に残すことは、音楽活動において一つの「夢」であったりする。自宅のプレイヤーで焼き立てのレコードに針を落としてみると、自分で作曲した曲が、温かみのあるふくよかな音として流れ、より音楽への愛着を深めてくれる。まさしくミュージシャンにとって至福の時と言えるだろう。アナログレコードの魅力を改めて実感する貴重な体験ができた。

世界で1枚だけのレコードをCUT&RECでオーダーしてみよう

「刺激を求める若者にとって、アナログレコードは目新しいメディアであり、新しい価値と捉えられている傾向にある」と橋本氏は語る。デジタル全盛の今だからこそ、CUT&RECのユニークなサービスを利用することで、きっとあなたもアナログレコードの魅力に気づき、再発見できるはずだ。大切な人への贈り物に、世界で一つのレコードをギフトとして贈ってみてはいかがだろうか。

CUT&REC

公式サイト:https://cutnrec.com/