Vol.496

MONO

17 NOV 2023

開放感に包まれる時間を。約40年前から愛される有線ヘッドホン「KOSS PORTAPRO」

音楽鑑賞は、私の日常生活と切っても切れないほど大事なもの。部屋の中で、仕事中に、移動時間に、週末のリラックスタイムに…音楽を聴かない時間は無いと言ってもいいほど。そんな私のような音楽好きな人であれば一度は直面したと思われるのが、イヤフォン・ヘッドホン問題だ。自分にフィットした製品になかなか出会えない人も多いのではないだろうか。そこで今回ご紹介したいのが、有線ヘッドホン「KOSS PORTAPRO」である。

完全ワイヤレスやノイズキャンセリングにはない、“開放感”がある

知る人ぞ知る、オープン型ヘッドホンKOSS PORTAPRO|コス ポータプロ
昨今イヤホン・ヘッドホン市場では、完全ワイヤレスやノイズキャンセリングなどの最新機能が備えられた製品が多数発売されている。どの製品も技術者の飽くなき探究心によって生まれた高性能製品であり、間違いなく素晴らしいものである。

しかし、音楽を長時間聴く際に「疲れやすさ」を感じることはないだろうか。イヤホンであれば装着感が気になったり、ノイズキャンセリング機能の密閉感に頭がクラクラしたり…。ヘッドホンであれば長時間装着した際の「耳への圧迫感」や、頭にのしかかる重量感に疲れてしまったり…。「音楽はこんなにも疲弊しながら聴くものだったかな」と自問自答する。疲れやすい現代社会で音楽は人を癒やすべきなのに、疲れさせていては本末転倒だ。

そんな最新機器が抱える課題を KOSS PORTAPROはクリアしている。製品の特徴を一言で挙げるならば、「開放感に包まれる」という点だ。密閉感や閉塞感は一切なく、長時間装着しても疲れない。大げさかもしれないが「装着している」という感覚がほとんどない。窮屈さがなく、開放感に包まれながら音楽を楽しむことができるのだ。

1958年に世界初のステレオヘッドホンを開発したKOSS社

発売から約40年。いまだに根強い人気を誇っている
有線ヘッドホン KOSS PORTAPRO は、アメリカのヘッドホンメーカーであるKOSS社によって、1984年(日本では1988年)に発売された製品だ。このKOSS社は1958年に世界初のステレオヘッドホン「SP/3」を開発した会社でもある。当時ヘッドホンは主に海軍や電話交換手、ラジオ用にのみ使われていたが、「個人で音楽を楽しむ」ために開発されたヘッドホンの登場は、音楽業界に大きな衝撃を与えたそうだ。

当時ブームを作ったSONYのWALKMAN。ここ数年で人気が再燃
1970年代から1980年代にかけて、カセットテープがオーディオの主流になり、外出先でも手軽に音楽を楽しめるようにコンパクトポータブルプレイヤーが普及する(ちなみに日本でSONYが初代ウォークマンを発表したのは1979年だ)。そんな時代に KOSS PORTAPRO は発売された。軽量かつコンパクトに折りたたむことができる携帯性と、重低音が特徴的な音質がポータブルプレイヤーと相性が良く、世界的なヒットを記録している。

KOSS PORTAPRO は1984年の発売以来、現在でも製造・販売が行われている。多少の仕様変更はあるが基本構造はずっと変わっていない。それもまた凄い点である。

長時間着用が苦にならない、快適な装着感

独特なデザインと心地よい装着感が特徴
KOSS PORTAPRO の特徴は「開放感に包まれる」という点。装着している感覚をほとんど感じない。とにかく心地よい。その大きな理由になっているのは間違いなく製品の重量だ。

手のひらに収まるサイズ感も嬉しい
KOSS PORTAPRO の重量は60g。卵1個分の重さしかない。製品の種類によってはボリュームコントローラーが付属されるため66g〜68gになるが、それでも軽いことは変わらない。メジャー製品であるAirPods Maxは384.8g、SONYの人気ヘッドフォンは254gであるため、圧倒的な軽さである。

着け心地を調整できる優しさも
また、軽さだけでなく装着感も快適だ。ヘッドバンドの左右に耳への圧力を3段階に調整できるcomfort Zone機構が搭載されている。耳が当たる部分を狭めるか広げるか調整することで側圧を調整できるのだ。耳との接着部分であるイヤークッションも着け心地が優しく、こだわりを感じる。イヤークッションが消耗したら簡単に交換できる点も素晴らしい。

コンパクトに畳んで耐久性のある専用ポーチで持ち運び可能
携帯性も抜群で、コンパクトに折りたたむことが可能。手のひらに収まるサイズになる。付属の専用キャリングポーチに収納することで持ち運びもしやすい。

※公式サイトでは2023年10月30日現在で生産完了になっているが、iPhoneの操作および音声通話を可能にするKOSS Touch Controlを装備された「KOSS PORTAPRO KTC(KOSS Touch Control)」や、マイク付コントローラーが搭載された「KOSS PORTAPRO PREMIUM RHYTHM BEIGE」もシリーズとして発売されている。

スマホに繋いで、ボリュームを大にして、お気に入りの曲を流す

たとえば公園で、大音量で音楽を聴く心地よさ
音楽好きなら気になる音質は、程よく気持ちいい高音と重低音が特徴だ。耳の外側に装着するオンイヤー型なので音の広がり感はどうしても少ないが、音の迫力を強く感じられるので退屈感は無いと言える。一般的に有線タイプの方がBluetoot接続よりも音質が良いと言われているため、有線タイプを最近使用していない人にとって KOSS PORTAPRO で聴く音楽はまた違った体験になるだろう。
※音の感じ方は個々人によって印象が変わるので、一度試聴することを推奨します。
ただ、このヘッドホンの魅力はそこではないと私は考える。まるでヘッドホンを着けていないような装着感で、好きな場所でいつまでも疲れずに音楽を聴ける点にある。晴れた日の公園で KOSS PORTAPRO を装着して周りを気にせずに大音量で音楽を聴く“気持ちよさ”。開放感に包まれる時間を体験できるのが、この製品の魅力だと考える。

開放型のヘッドホンだから音楽を聞いている時も周囲の声や音が聞こえるし、ボリューム大で使用する際は周囲への音漏れをするため、その点は注意が必要。しかし、都会の喧騒にまみれて自分のお気に入りの音楽が耳に飛び込んでくるのは、「いつでも気軽に音楽を楽しみたい」と考える人にとって、最高の瞬間に違いない。

いつの時代も愛されるヘッドホンが、疲れたあなたを癒やす

お手頃価格で販売されており、手にしやすい点も大きな魅力
KOSS PORTAPROは、クラッシックカーやビンテージ家具、レコードに似ているのかもしれない。最新機能を備えた製品にはない、懐かしさや親しみやすさがあるからだ。今、高価なイヤホンやヘッドホンは沢山あるが、リーズナブルな製品でこれほどまでに音楽を楽しく聞かせてくれる製品は他にあるだろうか。

長年愛されてきた製品には、それなりの理由がある。これからもずっと変わらずに愛されていくに違いないヘッドホンを、ぜひ試してみてほしい。KOSS PORTAPROが与える「開放感に包まれる時間」は、きっと現代社会に疲れたあなたを癒やす必需品になるはずだ。

KOSS PORTAPRO|コス ポータプロ